とことん「本質追求」コラム第99話 商品販売戦略が成功する「ケンカ商法」とは

「御社は何を売っているのでしょうか?」

 

このような質問をすると多くの方は「商品レベル」で販売しているものを教えてくれます。

 

「食器を売っています」

「レジスタを売っています」

「省エネ機器を売っています」

 

たしかに販売しているものは「商品」かも知れません。

しかし、この発想だと競争まみれの市場では、体力勝負の営業活動に頼らざるを得ません。

これでは、戦略的な活動からは、ほど遠くなってしまいます。

そもそも戦略とは、「戦わずして勝つ」環境を整えることです。

 

それには、まず今置かれている環境を構造的に掌握することが肝心です。

 

多くの商品は、今「成熟市場」に位置づけられています。

成熟市場の購買行動は「周りの人の行動や常識に引きずられている」ことが特徴です。

周りの人に影響され、何気なく興味を抱いたものを、何気なく購入しているのです。

 

従って、『お客さんは、その商品を通じて本来なにを求めているのか…』

 

ここを深く、深く熟考することが、商品販売戦略を作り込む上での「原点」になるのです。

 

以前、私が営業マンの現役時代に、こんな経験をしました。

扱っていた商品は、外食チェーン向けの「売上分析システム」。

レジスタからデータを収集して「日報」や「ABC分析」などの分析資料を出力するサービスです。

 

ある程度のチェーンになれば、全店舗の売上を翌日までには集計したい…というニーズ(要求)は、存在します。

だから、システム化の必要性が出てくるのですが…

その程度であれば、どの業者と付き合っても同じだと買い手は認識します。

 

そうなると価格勝負になるのは火を見るより明らかです。

 

なので、私は、世の中の常識は“まぼろし”だと断言し、<ケンカ商法>に打ってでました。

 

「売上分析システム」の導入目的はなんでしょうか?

現場(店舗)の状況を数字で掌握して、次なる「策(仮説)」を考え、その策が経営にインパクトをもたらしたかどうかを「検証」するためのものであるハズです。

POSの先駆者であるセブンイレブンは、まさにその「仮説—検証ツール」として経営の重点政策に位置づけています。

しかし、外食ではどうでしょう。

ABC分析を見て、次なる一手を考えるような運用体制になっているのでしょうか? 単なる集計装置ならもっと安価でよいはずです。

分析システムは、現場と戦略を企てるための「道具」であるべきです。

例えば、ランチの単価をあげよう!と方針を立てます。

そこでプライスライン分析に着目して、50円、80円、100円の副菜を用意して、どんなメニューのどのプライスラインであれば、サラリーマンがオーダーしやすのか…

結果、客単価はどのように推移していくのか?

このように「仮説—検証ツール」として効果的に使うべきではないでしょう?

 

と、他社にはないサービスを前面に打ち出しながら、今までの常識に対してケンカを売るようなプレゼンテーションを繰り返していきました。

 

 

すると、商談先の役員さんは「相談するならココしかないだろう…」と評価をしてくれ、担当者は「この会社と付き合えば、自分の能力があがるかも!」と期待し、価格勝負に陥る事無く商談が成立していったのです。

 

「売上分析システム」や「POSシステム」を売っていては、価格勝負にならざるを得ません。

 

しかし、「経営にインパクトをもたらす“作戦屋”」と位置づけて販売すれば、競合他社が一気にいなくなります。

 

どの盲点を突けば「戦わずして勝つ」環境がつくれるか…。

そもそも我が社は、顧客から見たときに何屋さんだと認識されるのか?

さらには、成熟市場を打破するためには、どのような常識にケンカを売るのか…。

 

こういう原点を考える事が「強い販売戦略」を築きあげるのです。