とことん「本質追求」コラム第70話 向こう傷を恐れない企業文化を育む ―持続的成長に向けて-

Be Daring (勇気を持て) 
Be First  (誰よりも先に) 
Be different(人と違った事をする)

この言葉は、「マクドナルド-わが豊穣の人材」(ダイヤモンド社)に書かれていたフレーズをユニクロ創業者の柳井正社長が「これこそ商売の真髄だ」と思って、手帳に書き留めた言葉と言われています。

私もこのフレーズに出会った時は、武者震いがしました。 
なぜなら、この言葉こそが「企業として持続的な成長をする上で、必要不可欠な基本思想」になると確信したからです。

人は、他社(他者)のモノマネをして生きる方が楽ちんです。 
深く考える必要がないですし、先駆者のワダチのあとを走っていれば、スリップするリスクも少なくなります。

しかし、先駆者がもし道を誤っていたら… 
または、先駆者が急に加速したり方向展開をして、ついていけなくなったら… 
いやそもそも、ついていった方向性が、自らの強みが発揮できる新境地でなかったら… 
そこから先の「進むべき道」を間違いなく見失ってしまいます。

 

これは私自身が経験した過ちですので、腹の底から確信を持ってお伝えできます。 
深く物事を洞察せずに、テクニックだけの販売手法に傾倒したり…。
儲かるからと言って、安易に事業を始めてしまったり…。 
先駆者の行く道のワダチを走ろうとしたり…。 
結果、自らの存在価値やビジョンを見失っていった時期を過ごした経験がありました。

でもこのレイ・クロック氏の言葉と出会い、我を取り戻す事ができました。今でもその”そくぞく”した瞬間を鮮明に覚えています。

自らの知恵と力で、事業を創造することが出来なければ、お手本がいなくなった瞬間に「死」に直面します。

これで、独立企業と言えるでしょうか? 

どのような環境変化が起きたとしても、たくましく市場を創造する力こそが「企業力」の真髄だと私は考えています。 

 

ところが、分かっていても、これが中々上手く機能しません。 

人間は「欲の充足」か「恐怖の回避」が、行動の源泉となっています。 
成功するのも、この2つのウチのどれかが過剰に働き、失敗するときも、このウチのどれかが過剰な働きをしますが… 

恐ろしいのは「恐怖の回避」の方。 

この行動原理が組織に根付いてしまうこと、成長がじんわりと鈍化し始めます。 
真綿で首を絞めるがごとく、ゆっくりと…しかし着実に生命力が奪われていきます。

そもそも好景気、不景気を問わず、企業はあらゆる環境変化に晒されています。

突如として他業界から「競合相手」が参入してきたり…。 
流行が突然おわり、在庫が微動だにしなくなったり…。

『現在の努力』とは無関係に業績停滞の波に襲われることがあります。
どのような商品でも斜陽化はまぬがれないのです。 

そのため現在の業績を維持発展させる事以外に『未来への努力』をする必要があります。

ところがこれが難しい理由として『未来への努力』は見通しが全く見えないもの…だと言うことです。 

人間は先行きがわからない不安定な状態を極度に嫌い、現状の見える仕事に時間の多くを使ってしまいがちです。

その方が、精神が安定するからです。

ただ、このような「恐怖の回避」が日々の行動原理になってしまうと、組織の内側からイノベーションが起きることは、まずありません。 

すると、必然的に組織の外部からのイノベーションに翻弄されてしまうことになるのです。

だからこそ…
「勇気を持って…」という言葉に表現されているように、見えない未来に向かって失敗のリスクを恐れずに果敢に努力をし続ける意思を持ち、組織文化に定着させることが大切なのです。

社長をはじめとする経営幹部はもとより、社員一人ひとりがチャレンジングな行動を起こす環境を作るためには、組織における行動原理が「欲の充足」で動いているのか、「恐怖の回避」で動いているのか、よくよく観察をする必要性があります。

「欲の充足」が行動原理になっていれば、大きな問題にはなりません。 

個人的には、営業の成果報酬制度などは廃止すべき…という持論をもっていますが、それでも「欲」の充足をするための行動原理の方が、「恐怖を回避」する行動原理よりも100倍マシです。

大きな行動指針だけを明確に定め、その範囲の中であれば社員が自由闊達に暴れられるような環境を作っていくことは、組織内に良い刺激をもたらします。

そのためにも、やるべき事を全力投球で行い失敗する「向かう傷」を追った場合はお咎めせず。 
自らの評価を気にして成すべき課題に立ち向かわずに失敗した「背中の逃げ傷」は、絶対にゆるさない企業文化を育むことが重要なのです。

つまり「保守性」を徹底排除し、「革新性」と「チャレンジ」を奨励する企業文化を育むことが大切なのです。

事業環境の変化が著しい業界こそ、果敢に自らの現状を打ち破るべく『未来への努力』に時間を割き、前進・前進する推進力を組織に定着させることが、持続的に成長する企業の土台となるのです。