とことん「本質追求」コラム第482話  DXなどの経営改革は、外注業者に任せるな!

 

「少ない人員でも売上を伸ばせる様に、DX(デジタルトランスフォーメーション)を導入しようか…と社内で検討しています。3社ほどシステム会社から見積もりを取っているのですが、何を基準に選んで良いのかわからないので、ちょっと相談に乗ってもらえますか?」

 

DXとは、広義の解釈では「デジタル技術による生活やビジネスの変革」を意味しますが、企業経営の視点では「ITを利用することでビジネスモデルや企業組織のあり方を変革させる」という捉え方の方が正しい認識ができます。

 

30年ほど前、日本が長い、長い不況に突入した時代「ビジネスプロセスリエンジニアンリング(BPR)」という取り組みが一世を風靡しました。

あの時は、BPRの本質を突かない「単なる人減らしの口実」で終始していた様な記憶が残っていますが…

今回も似たような「概念」と「空気感」が漂っている様な気配がする…と藤冨は感じています。

 

と言うのも、前回のBPRも今回のDXも、経営者は『よく分からないからお任せします』と言う姿勢が強すぎる気がしてならないからです。

 

今回ご相談頂いた件も、最初に提案してきたシステム屋の提案が良さそうだったから、他の企業にも聞いてみた…

と言うところからスタートしています。

 

そして、提案が出揃ったら、改めてどこにしようか?と、検討していました。

 

詳しく伺っても、『今後、我が社は何をすべきか…どんな課題があって、いかに解決すべきか…』と自社のあるべき姿と詳細に落とし込んだ課題-解決策を浮き彫りにせず、システム屋からの提案を鵜呑みにしようとしていたのです。

 

はっきり申し上げました。

『一旦、全てを白紙にしないとお金をドブに捨てることになりますよ』と。

 

藤冨は20代から30代にかけて7年ほどIT企業で「営業」と「システム設計」に携わってきたので、システム導入の正否を山ほど見てきました。

 

システム投資に限らず…ですが、新しい取り組みに成功する企業は、事前準備を入念に行います。

 

  • あるべき姿の明確化
  • 現状把握と課題の抽出
  • 課題解決方法の列挙
  • 最適な課題解決法の選定
  • システム化シミュレーションやテスト導入
  • 本導入

 

 などDXの導入に限らず「新体制への移行」をする際は、はっきりとした未来の青写真とそれを実現するためのプロセスを明確にするための事前準備が必要です。

無計画にやれば、間違いなく「思っていたのと違う結果」になるはず。

まだ多少なりとも結果が出れば良い方で、全てがムダになってしまった…など泣くに泣けない結果に終わることも沢山あります。

 

藤冨が20代の頃、IT企業で「営業」と「システム設計(要件定義)」に携わってきた経験上、間違いない現実です。

 

冒頭のDX(ITを利用することでビジネスモデルや企業組織のあり方を変革させる)をテーマに仮説の事例を作ってイメージしてみましょう。

 

例えば、不動産業が「人員増を図らずに、成約件数を20%増実現しよう」と言う【あるべき姿】を描いたとしましょう。

 

しかし、現状は人手が足りずにスタッフからは「内見が手薄になっていて、成約率が下がっている」と言う課題を突きつけられている…。

 

営業スタッフは1店舗あたり3名。

営業日数30日で内見者は、100名。

スタッフ1名あたりの内見者は20名で、平均接客時間は2時間。

成約時の事務手続きは平均1時間…。

などなど、ざっくりで良いので、現状の人材と仕組みから得られているアウトプット(成果)を計算しておきます。

月変動があるとか、人によってバラバラだとか、重箱の隅をつつく必要はありません。

 

初期計画の段階では、【あるべき姿】と【現状の課題】をざっくりで良いので、浮き彫りにすることが大事なのです。

 

次に「あるべき姿」と「現状の課題」のギャップを埋めるために、ビジネス上の要件を洗い出します。

 

・接客時間を減らしても成約率を上げることはできないか?

・事務手続きの時間を削減して、接客時間を増やすことはできないか?

 

などのテーマごとに「課題解決法」の列挙を行うわけです。

 

■接客時間を減らしても成約率を上げることはできないか?と言うテーマに対して…

 1案) 物件ごとの「セールス・ポイントの資料」を作り、顧客の検討時間を減らす。

 2案) VRを使って、内見をバーチャル化する。

 

■事務手続きの時間を削減して、接客時間を増やすことはできないか?と言うテーマに対しては…

 1案) 接客用ロボットを導入して、契約手続きを進める

 2案) 契約集中管理センターを作り、オンライン面談で契約手続きの仕組みを作る。

 

 

などなど、解決法を出来るだけ多く洗い出し、法的な制限や投入するリソース、費用、効果など総合的に功罪分析をしながら、最適な解決法を選定・決定していくわけです。

 

冒頭のご相談を振り返ると、システム屋に依頼すると、「2案」を強く勧められて、最終的に企業に利益をもたらす「課題解決策」が検討されないまま、プロジェクトが進んでしまいがちです。

 

だから、丸投げは「アウト」なのです。

 

物件探しはネットがアタリマエの時代。

だから、ネットからバーチャル内見ができるようなシステムを構築。接客はチャットボット化して、よくある質問はシステムで対応し、気に入ったらオンライン上で即契約。

これなら人手はゼロでも運営できますよ!

 

などの未来的な不動産経営のあり方は、気の利いたシステム屋なら提案してくると思います。

しかし、それが我が社のビジョン、強み、経営理念や経営方針、現状の課題などの自社の実情に即しているかは別なテーマです。

 

逆に世の中がデジタルに触れるなら、ヒューマンタッチな接客を取り入れて差別化を図ろう!と、自社独自の【あるべき姿】だって打ち立てられるわけです。

 

結論的に言うと、DXなどの経営改革を伴う取り組みは、自社の経営幹部とそれなりの専門家を揃えて検討し、全ての検討材料をテーブルに上げた上で「経営者が意思決定」をしなければなりません。

 

テーマごと外部業者に丸投げするなんて、経営権を放り出しているのと同じくらい恐ろしいことなのです。

 

御社は、自社の未来を自分の頭で考えていますか?