とことん「本質追求」コラム第326話 洞察力がない人は売れない時代?

 

 

 

「えっ? 藤冨さんコラムをやめちゃうのですか? 楽しみにしているのに… 」

 

先日、クライアント企業の社長さんと一杯飲みながら、よもやま話をしていた時「コラムを書くのって結構辛いんですよね。1円の得にもならないし、やめちゃおうかな。」と愚痴を吐いたら、真顔になって止められました。

 

同社では、1ヶ月に1回の役員会に参加しているのですが、役員の方全員がお読みになっていて、しばしばコラムの題材がミーティングの主題になることもあります。

 

6月19日に書いた「第317話 安売り思考が、身を滅ぼすたった1つの理由」も、その1つです。

 

同コラムの主旨は、顧客が受け取る価値を突き詰めて考え、その価値に見合った価格を設定する事が大事。従って、その価値を突き詰める前に安易に価格を下げることは、ある意味顧客を冒瀆(ぼうとく)するような行為にさえ繋がってしまう。結果、顧客離れが始まり、事業の停滞や衰退を招いてしまうことになる… といったものでした。

 

これは、顧客が自然と離れてしまうことだけでなく、営業マンの活力が削がれることでも事業の停滞に繋がっています。

 

営業マンの主力となる武器は「営業トーク」です。

顧客が受け取る価値を自信を持って堂々と伝える事が出来なければ、客先へと歩き出す前に、気負けしているはずです。

気負けしていれば、当然のごとく受注には繋がりません。

 

面談しても、面談しても負け越していれば、どんなに強いハートを持っていても萎えてくるのが一般人です。

例外的に、負ければ負けるほど燃えてくるタイプもいますが、そんな人材は100人中、1人か2人。自社の社員に一人でもいればラッキーです。

 

そんなラッキーに頼るよりも、今一度「顧客が受け取る価値」について真剣に突き詰める方が、圧倒的に早く結果に繋がります。

 

そのため、冒頭の同社では、新規事業のアイディア出しをするために、この「安売り思考が、身を滅ぼすたった1つの理由」を下敷きとして3ヶ月間もの間、議論を重ねてきました。

 

当初、「どんな商品を作るか」「どんなサービスを提供するか?」といった表面的なことを議論する前に、「どのような顧客メリットを提供できるのか?」を突き詰める必要があります。

 

顧客が自分のことを思う以上に、顧客のことを想う気持ちが大事です。

 

営業の領域を逸脱しているように見えるかも知れませんが、これからの時代は、営業の世界から「商品開発」や「マーケティング」を考察しなければいけない時代に突入していると私は確信しています。

 

言葉遊びの感じがして少々違和感を覚えていますが、数年前に「ハーバード・ビジネス・レビュー」において「ソリューション営業の時代は終わり、インサイト営業の時代へ」という論文が発表されたとのこと。

 

インサイト営業とは、洞察力を持って顧客の潜在的なニーズを検知し、自らが変革を起こしていく営業アプローチと定義されています。

ソリューション営業は、顕在化された問題点への解決提案と一般的には定義されていて、顕在化した問題点への対応だけでは、売上を伸ばせなくなった… との主張から、インサイト営業という概念が生まれたそうです。

 

ソリューション営業が「顕在ニーズ」だけに焦点を合わせている???

そのロジックの正しさはさて置き、「潜在的なニーズを検知し、仕掛けていく」ことの重要性は両手をあげて賛成します。

 

ただし、これは言うは易く行うは難しです。

 

潜在ニーズの検知は、それこそ訓練を積まないと絶対に出来得るものではありません。

 

例えば、ゴルフのプロ選手が不調に陥ったときに、訓練を積んでいない人が的確なアドバイスを提供できるでしょうか。

そもそも論として、不調の原因すら見抜けないはずです。

 

訓練を積まないと「何が起きているのか?」を正しく洞察できないためです。

 

不調の原因は山ほど存在します。

グリップの握り方なのか。

スタンスの取り方なのか。

ストロークのブレなのか。

頭が動いているのか。

それともメンタルなのか。

 

あらゆる知識や経験を総動員しながら、今何が起きているのか?を洞察するから、原因の特定と対策が打てるわけです。

 

つまり、知識や経験をなくして、洞察などできるはずがないのです。

 

 

これを営業現場に置き換えて考えてみてください。

 

「顧客は何を欲しているのか?」を洞察するには、人間心理、行動経済学、購買心理、社会学、群集心理、動物行動学などの知識から、実戦で培った経験を含め、幅広い知識を総動員しなければなりません。

 

狭い知見で洞察しても、本質からずれた答えを導き出してしまいがちです。

 

私が20代前半で勤めていたマーケティングコンサルタント会社のボスは、とにかく多読家で、私が「経営書」や「商品学」などいわゆる「お勉強の本」を読んでいると、「つまらないなー。もっと面白い本を読みなさい!」と注意されてきました。

 

そのお陰で、分野を飛び越えて本を読み漁り、雑多な知識を詰め込んできました。

今になってその本質がわかるようになってきました。

 

洞察力を磨くため。

 

そのために、幅広い知識を詰め込む必要があったのでしょう。

 

これから洞察力のある人材を育てたいのであれば、とにかく人間心理や人間の行動に伴う雑多な知識を詰め込ませることが大事です。

また、社会の流れを読むためにも、社会学などにまつわる本を読むことが大事です。

 

 

御社では、洞察力のある人材の輩出に力を注いでいらっしゃいますか?

 

 

 

 

 

 

追伸

2018年6月19日に発信した第317話の「安売り思考が、身を滅ぼすたった1つの理由」は、ここ数年のアクセスランキングでも1位に輝いており、述べ327人の方にお読みいただいたコラムです。

一人でも愛読者がいる限り、コラムは続けようと思います。