とことん「本質追求」コラム第327話 相手の認識が、すべて真実

 

 

 

『営業の醍醐味が分かってきました。ここ最近受注ラッシュが続いているのです』

 

クライアント企業さんの社長さんから「A係長(中堅営業マン)の様子が変わった」とメールで報告を受けていましたが、久しぶりに会って、それを実感しました。

 

丸くなったというか、全体的に余裕のあるオーラを身にまとっていました。

 

5分、10分の立ち話でしたが、近況報告を受けていて「なぜ、彼の成績が伸びているのか?!」瞬間的に理解ができました。

 

一言で言うと、独善的な商談から脱却できていたのです。

 

個人的には、以前の雰囲気も好きなタイプでした。

中堅になっても良い意味でガムシャラ感があり、物怖じせずに突進する営業姿勢に好感を持っていました。

 

前向きだし、素直だし、行動力もあるので、上長や社長からも評価は高かったのですが…

営業の成績にはバラツキがあり、お客さんを選ぶ営業マンというレッテルも貼られていました。

 

確かに、そう言われてみると、思い当たる節もありました。

営業報告を聞くと、なぜか相手の心理的な遷移(せんい)が見えてこないのです。

「自分はこう言った」「相手は頷いて聞いていた」と、現象レベルは報告通りだと思うのですが、失注した商談をヒアリングすると、「相手がどう感じたのか?」が全く掴めていない様子。

意思決定者への情報ルートも握っておらず、「自分が何を話すか?!」が中心軸となっていたようです。

 

結果、商談相手が自分よりも情報弱者で、その営業マンの第一印象に好感を持ってくれていれば、キマる確率は高いが、真逆の商談相手だと失注する。

 

この構造を紐解くと、営業のみならず、一つの事業を推進する上でも、同じ問題を孕んでいることに気づかされます。

 

独善的な営業・事業が、成功するときと、失敗に終わるとき。

この境目を明確に認識せずに営業をしたり、事業を推進したりすると、思わぬ遠回りを強いられてしまう問題です。

 

では、独善的な営業スタイルが受け入れられたり、独善的な事業が伸びていったりする土壌は何か?

 

一言で言えば、商談相手が情報弱者であったり、市場そのものが未成熟である場合です。

 

売り手が正しい事業環境の認識を持ち、良心を持って営業活動をおこなえば、それは啓蒙活動になります。

しかし、知識不足や悪意を持っていれば、結果的に相手を言いくるめてしまっているに過ぎません。

 

特異な営業活動であり、組織としての活動としては、長続きはしないでしょう。

 

改めて整理すると、市場が未成熟な状態であるときは、独善的な営業スタイルや事業推進活動が成果をあげ、過当競争市場においては、独善的な姿勢は受け入れられないと判断できます。

なぜなら、過当競争市場においては、顧客も豊富な情報を持っているために、一方的な主張を鵜呑みにしないからです。

 

では、過当競争市場では、どのような態度で市場に接すれば良いのか。

 

冒頭の中堅営業マンの方がとても分かりやすく成長されていました。

彼は、以前、自分が何を話すか?に意識を向けていました。

 

しかし、私たちとプロジェクトを進める中で「顧客が認識したことがすべての真実」と悟るようになり「相手が何をどう認識しているのか?」に意識を向けるようになったとのこと。

結果、お客様を選ばずコンスタントに受注を勝ち取っており、見事に努力を成果に変えています。

 

お客様の関心ごとは、自分自身にしかありません。

個人、法人問わずです。

だからこそ、過当競争市場では、独善的に自社のセールスアピールをするのではなく、相手の認識を常に意識することが大事です。

 

これは、営業活動に限らず、商品企画・開発、プロモーション、広報、マーケティング全ての事業活動についても同じことが言えます。

 

 

私が関与するクライアントさんの大多数は、過当競争の中で戦っています。

もちろん、その中でも特異な技術やノウハウを持って差別化された商品を取り扱ってはいるのですが、それでも顧客が受け取る価値からその商品やサービスを眺めると大差がなかったりします。

 

営業やマーケティング活動では、『相手の認識がすべて真実』なのです。

 

営業トークスクリプトからチラシのキャッチ、ホームページのトップイメージまで全て『相手がどう認識するか 』というフィルターを通してみてください。

 

 

きっと新しい気づきがあるはずです。

 

御社では、営業・事業活動を相手目線からチェックし直していますか?