とことん「本質追求」コラム第28話 戦略企画力の磨き方

『そのアイディアもらった!』 
と、大興奮しながらミーティングを終え、実際に現場に落とし込んでみたら、全くうまく行かない。

新商品のアイディアしかり、新しい売り方しかり・・・。なぜ上手く行くアイディアと失敗するアイディアがあるのでしょうか? 

ときどき相談を受けていて「この商品はこの市場にこうゆう切り口で攻めた方が成功しますよ」とアドバイスをすると、「そうか!それはイケそうだ!」と飛びつく人がいます。

恐らく、何か同じように感じるところがあって、ジャストミートしたのでしょう。 

でも、具体的な事象(アイディア)同士の会話で盛り上がるケースは「単なる思いつきレベル」です。 

いわゆるジャストアイディアなので、そのままのカタチで成功するケースは皆無に等しいのが現実です。 

直感はそれなりに当たります。
現状の購買行動・本質的な購買心理・競争環境・市場浸透度合い・社会環境などなど、様々なフィルターに通して戦略案を絞りだしても、最初に思いついたアイディアの近いカタチで落ち着いてしまうことも。 

ただ、結果が似通っているからと言って、このフィルターを通すのと通さないのとでは、成功確率は大きく異なってきます。 

そもそもコンサルタントとは、売れるアイディアを持ってくる人ではありません。

確実に売れる・・・なんだか胡散臭いですし、そんなものがあったら、誰でも購入します。 

コンサルタントとは、売れそうなアイディアに対して”顧客の購買行動から逆算してイケるロジックなのか?”とか”競争環境的に真っ向勝負は危険。もっと市場を絞るべきだ”などと、負ける要素を削り落とし、勝てる要素を付加していくフィルターを使って、勝率を極限まで高めていく思考・作業ロジックを持っている人です。

話が飛びましたが、要するに成功する企画とは、考える限りの売れる要素を付加し、かつ失敗要因を排除し、成功の確度を磨き上げていく作業をし続けた結果からでしか生み出せないなのです。

どんな優れたアイディアでも一発で突き抜けることは稀です。 

市場に投入し、微調整を加えながら勝てるカタチに修正を加えていくことで大成功は成し遂げられます。

抽象概念に持っていって企画を精査すれば、微調整の質とスピードが圧倒的に増すから、当然といえば当然です。

例えば、先日記事で取り上げた「ひのきの香りがつくクリーニング店」

これも、ジャストアイディアの段階で事業化してしまうと、上手くいかない現実に直面した場合は・・・
「きっとそんなお客さんはいなんだよ・・・」と諦めてしまう。 

しかし、香りが与える効用、顧客が香りに求める生活シュチーション、現在使っている代替商品の機能・効用・価格、匂い付きクリーニングの新商品が与える本質的なベネフィット・・・など、あらゆる確度から検証していくと・・・ 

『洋服に匂いを付けるのって、抵抗はないかな・・・』 

『そもそも洋服から香りって、何を意識している?他者目線、それとも自己満足?』

『香水が競合になるけど、何が”違い”として打ち出せるろうか。そもそも香水市場って、どんな顧客がいて、どんな市場プレイヤーがいるのだろうか???』

『原点から考えるとウチのボリューム・ユーザーって、誰?身だしなみに気をつけているから営業マン?』 

『だったら、やる気が刺激する香りを付けたらどう?』 

『やる気を出す香りって、何があるだろう? ヒバ?! そうかヒバがあるな・・・』 

『香水と戦うから、香水ほどエゲツナク匂わず、ほんのり香りが一日もって、やる気が持続するって、コンセプトも有りだな・・・』 

などなど、アイディアに至るまで、様々な「事実」を掴みにいくことができます。 

「アイディア」は、当たり外れがありますが、「事実」に当たり外れはありません。

この当たり外れのない要素をフィルターとして使うことで、成功要因が付加され、失敗要因が削がれ「成功する戦略企画」に昇華していきます。 

「顧客心理」「市場の状態」「間接競合」「直接競合」「自社の強み・弱み」など様々な視点から企画と向き合い「事実」をしっかりと握ること。

これが、戦略企画力をベースとなり、かつ出発点となります。