とことん「本質追求」コラム第480話 営業部隊に活力が漲る5つの前提条件

 

「若者を中心に愛社精神のカケラもない人材ばかりで困っています。特に営業部隊は深刻でして…、20年前のような活力が感じられなくなって…。業績はそこそこ安定していますが、社員を見ていると行く末が不安です」

 

 

先週スポット相談より「以前のような強い営業部隊を取り戻したい」とご相談を受けました。

オンライン会談で伺うと、20年前にインターネットの威力を感じ、早々にホームページに力を入れてきた甲斐もあって、今のところ業績は安定しているとのこと。

しかし、振り返ると同時並行的に営業部隊の活力が下がってきたのも否めず、どうしたものか…と頭を抱えているとのことでした。

 

以前のような活力ある営業マンが社内を闊歩し、覇気のある会社を取り戻したい!

こんなご時世だからこそ、その改革に着手したいとおっしゃっていました。

 

とても本質をついた社長さんで、こんなご時世、こんな時期だからこそ、中核的な問題に取り組みたい!とのお話でした。

 

ただし、テーマとしては厄介な問題です。

 

・構造的な個人主義の定着

・働き方改革など、活力ある働き方へのアンチテーゼ

 

などなど、働き手を取り巻く環境は、成果にフォーカスをした営業活動にマイナスを与える空気感に包まれています。

当然ながら、個人もその影響を強く受けているわけです。

 

下手に、軍隊式の営業方針を取り入れようものなら、社内からブーイングの嵐。

もし、ブーイングが起きないのなら、尚更深刻。

時間経過と共に、有能な社員は離反していき、事なかれ主義の社員が居残るだけになり、結果さらなる「活力のない営業部隊」に成り下がってしまいます。

 

それを防ぐには、5つの前提条件を整える事が必要となります。

逆に言うと、この「営業部隊に活力が漲る5つの前提条件」を整える覚悟がないのであれば、営業マンに多くを求めていけません。

結果的に会社に対して「斜に構える社員を増産」するだけに終わりますので。

 

考えてもみれば当然です。

人に対して「変われ!」と要求する割には、自分だけは何も変わらない。

いくら上司だとはいえ、そんな人の言うことを聞くでしょうか?

残念ながら火を見るより明らかです。

 

まずは、活力ある営業部隊を作りたいなら、活力の出る環境を整える必要があります。

求めるなら、まずは(環境を)与えること。

聖書にも書いてある通り「与えよ、さらば与えられん」を肝に命じて取り組む必要があります。

 

では、どのような環境を作れば良いか。

営業部隊に活力が漲る5つの前提条件を念頭においてお伝えしましょう。

 

一つ目は、取扱商材に適した適材の確保の必要性

二つ目は、価値ある商品の確保

三つ目は、高い報酬が得られる社内制度

四つ目は、最前線にいる営業部隊への援護射撃や武器などの調達

五つ目は、洞察力に富んだロジカルで公正かつ胆力のある上司の存在

 

以上5つの条件が整うことで、活力のある営業部隊を作り上げることができます。

 

少し掘り下げて考察してみましょう。

 

1.取扱商材に適した適材の確保の必要性

そもそも、活力は「努力をすれば成果につながる自信」がなければ、維持されません。

当たり前のことですが、野球に興味もなく才能もない人を採用するよりも、興味や才能のある人の方が努力をし続けます。

興味は、取扱商材そのものだけでなく、その営業活動を通じて広がる世界観も含まれます。

プロのスポーツ選手になりたかった人が、怪我で断念。

その悔しさから、怪我のしにくいトレーニングマシーンを販売して、私のような人を一人でも救いたい!

そんな動機を持った営業マンと、何の興味もない営業マンとでは成果に雲泥の差が出るのは、やる前からわかること。

自社の取扱商材を売りたい! と本気で思えるような人材の採用が活力の源となります。

古参社員が活力なくても、それ同等数のやる気のある社員を集めて古参社員に毒されない環境を与えれば、空気は変わります。

まずは、「取扱商材に適した人材の採用ノウハウ」を自社なりに固める必要があります。

 

 

2.価値ある商品の確保

藤冨のコラムでは口酸っぱく言っていることなので、触りだけしか書きませんが…

営業マンたちが「お客様に貢献できる!と胸を張れる商品」であれば、自然と売上は上がります。

貢献できる!と信じれば信じるほど、言葉にも力が漲り、お客様のハートに響いていきます。

会社としてやるべきことは、価値ある商品を追求すること。

そして、我が社の商品が何を持ってお客様に貢献できるのか…をしっかりと伝えることができるように営業マンを教育することが大事になります。

 

3.高い報酬制度

マズローが提示した「自己実現欲求」の定義には、「利己的と利他的の二分法を解消すること」とありますが、価値ある商品を伝える努力をし続ける利他的な精神を支えるためには利己的な要素を組み込み、バランスをとることが大事になります。

金銭的な報酬以外にも、「柔軟な勤務形態」「経営幹部との食事会」「商品知識のレベルを上げる視察旅行」「営業活動における権限の付与」など、ここまで頑張れば、この報酬が獲得できる!と期待値を持たせることが大事です。

 

4.最前線にいる営業部隊への援護射撃や武器などの調達

以前、まるで知識がゼロの営業マンにいきなりテレアポや飛び込み営業をさせている会社がありましたが、これは言語道断。

言うなれば、ステゴロ(武器も持たずに素手で戦うこと)で、暴力団組織に殴り込みをかけてこい!と指示をしているのと一緒です。

戦国時代に農民や百姓を戦闘力として、各国が勢力争いをしていた時代に、織田信長は「兵農分離」政策を掲げ、兵士の訓練に注力しました。

結果は、天下統一。

このように「勝つために何をすれば良いか?」はトップが考えるべきことです。

そして、必要な武器を考え、どのように武器を使うのか…

これを訓練することで、勝ち戦を経験させ、屈強な兵士を育っていく意識を持つことが大事になります。

 

 

5.洞察力に富んだロジカルで公正かつ胆力のある上司の存在

キーエンスの営業管理職の人たちは、部下が帰るまで帰らないそうです。

そして、帰社した営業マンの営業報告を聞き、商談相手の心境や状況を感じ取り、次の打ち手を部下とすり合わせるそうです。

彼らの年収は3000万円クラスと言います。

高い報酬があってこその過酷な勤務環境と言えますが、会社の営業利益は50%と驚異的です。

4番の営業部隊への援護射撃とかぶりますが、人的なフォロー体制としてもキーエンスが細かいところまで配慮が行き届いています。

 

以上、活力が漲る営業部隊を考察すると、活力が漲る前提条件があるからこその成果であることがわかります。

 

御社は、営業マン個人の努力に期待する前に、会社として「努力を促す環境整備(活力が漲る前提条件)」を整える努力をしていますでしょうか?