とことん「本質追求」コラム第484話 営業部が新規営業をしない原因を根本解決するアプローチ

 

『営業マンの業務別労働時間管理を3ヶ月間集計してみてびっくりしました。新規開拓にかかる時間が17%しかなかったのです。現場にそれを指摘したら…』

 

3年ほど前にお手伝いしたクライアントから、ご相談を受け、業務別労働時間の集計をとってみてはどうですか?

と助言し、その結果報告を元に先週、営業部のメンバーとディスカッションをしてきました。

 

集計結果がでた時は、想定より悪い結果に社長は愕然とし、現場に喝を入れたそうです。

「営業活動を全くしていないじゃないか! もっと営業マンらしい活動をしろよ!」と。

 

ところが、現場は大反発。

「社長!この際だからハッキリ言いますが、新規営業をやらないのではなく、できないんですよ。それでもやれ!って言われると残業せざるを得ません。部下にそんなことを指示したら労働基準法に抵触しますよ!」と、もっともらしい正論を返され、ぐうの音も出なくなってしまったそうです。

 

考えあぐねた末に藤冨に相談しようと思われ、「もっと新規の活動をしろ!って言ってもらえないでしょうか」と、懇願されたのですが、社長と現場のやりとりを電話で聞く限り、どうもお互いの会話がずれているような気がして仕方ありません。

 

問題解決は、「原因と結果」の相関関係のピントがあった際に初めて、スムーズに改善されていきます。

 

「ネジ」と「ネジ穴」の位置がずれているのに、ネジを入れようとしても入るはずがありません。

無理やり力任せにネジを入れようとしたら、ネジ穴がバカになってしまいます。

 

ものづくりの現場の方は、すぐに首を縦に振ってもらえると思いますが、正確な「位置決め」がなされていない設計図は、現場で混乱を招きます。

後工程に膨大な時間を要し、たくさんの人たちの労働時間を奪ってしまいます。

 

設計者は一人。

でも、その設計図を完成させる現場には、たくさんの人たちが関与しています。

 

設計者のミスは、たくさんのムダを生み出してしまう…。

 

営業現場を俯瞰し直すと、驚くほどの類似事例が散見されます。

 

今回のご相談を例にとっても「売上が上がらない」と言う【結果】に対して「新規営業の活動時間が足りない」ことが【原因】と、表面的なことだけに焦点が当たってしまうと、莫大な損害をもたらす対策をとってしまいます。

 

売上があがらない →  新規営業の活動時間が少ない →  人員を増やす 

 

と判断をしてしまうと、「人員採用の準備」「採用活動にかける時間」「面接」「採用後の諸事務手続き」「教育訓練」など、人事、総務、営業部などの様々な部署の人たちの作業時間やコストが発生してしまいます。

 

「ネジ(売上)」と「ねじ穴(売上を上げる活動)」の位置がズレていたら、残念ながら結果は生み出しません。

締まらないものを一生懸命ねじ込もうと努力しても、無駄骨に終わるだけです。

 

こうしたケースは意外にも多くあります。

 

「3年間、十数名の営業マンを活動させたが全然売れない」

「10年間鳴かず飛ばずだった」

「営業マンの士気がなく、死んだような営業部隊だった」

 

様々な問題解決のために、様々な業種のコンサルティング活動に携わってきましたが、結果が出ないのは、ほぼ100%「原因と対策」がずれているために生じている問題ばかりです。

 

ネジとネジ穴の位置ギメが決まれば、これまでの苦労は何だったの? と思うほど、スムーズに問題が消化されていったケースをたくさん経験してきました。

 

今回のご相談も現場とディスカッションをして「原因」がクリアに浮き彫りになりました。

 

「新規営業の活動時間が足りない」という原因の、その奥にある「原因」が一番の問題だったのです。

 

現場の作業報告書を眺めていると「受注後のフォロー」に営業マンの活動が52%も割かれていたのです。

 

詳しく聞くと、「商品の設計思想」と「マニュアル制作の企画力」に根本的な問題を抱えていました。

 

購入後の問い合わせが多く手間がかかるだけでなく、それが原因で営業マンの新規開拓意欲が低下していることもわかりました。

 

現場としては、社長に「もっとわかりやすくしてほしい」と進言していたそうですが、社長としては「愚痴」にしか聞こえなかったみたいです。

 

現場も実際に同じような顧客フォローを繰り返し繰り返し対応しているわけですから、「自分たちでマニュアルを作るか。少なくても骨子くらいは作って、具体的な提案をすべき」でした。

社長も社長で、繰り返し起きている問題に気づき、対策を講じるべきでした。

 

噛み合わないコミュニケーションが、全ての元凶だったのでしょう。

 

 

「新規の営業時間が足りない」と言う【問題】に対して、どうすれば新規の営業時間が取れるか? とお互いが積極的な姿勢で向き合えば、必ず的確な【原因】が浮き彫りになり、適切な対応策も生まれます。

 

今回のケースも「毎回・毎回同じような顧客フォローに翻弄されている」と言う真の問題があったわけです。

 

本来であれば…

 

仕組みやデザインの改善によって「そもそも問い合わせがこない設計」を企画すること

それでも問い合わせが来るケースは、顧客が疑問に思った時に、もっともレスポンス良く回答できる「仕組み」の構築

 

など、根本治療が必要です。

 

そこに知恵と時間とコストをかけるべきなのです。

 

トヨタでは、「会社には、仕事をしに行くのではなく、知恵を出しに行くのだ」「決められた仕事をするのは仕事でなく、カイゼンすることが仕事である」と言う社内文化が浸透しています。

 

海外企業からも「カイゼン」と言う概念で称賛され、Appleの故スティーブ・ジョブズ氏やAmazonのジェフ・ベゾス氏など世界企業のトップもトヨタ式によって大きな成功を収めています。

 

「生産現場で使われている経営手法」であっても、営業現場にも十分に応用・定着できます。

 

ポイントは、社長の意識改革と現場が仕事に向いあう姿勢です。

 

御社では、新規営業にかける時間を潤沢に取れていますか?

取れていない場合、真の問題解決に向き合えていますか?