とことん「本質追求」コラム第486話 我が社の商品が欲しくなるような訴求力を磨く方法


「新規営業の売上が伸びないことを営業マンのせいばかりにしてきました。でも前回のコラムを読んでハッとさせられましたよ。電柱柱が高いのも、ポストが赤いのも社長の責任…って、言われますけど、改めて自己責任論の大切さに気づかされましたよ」

 

毎週コラムを楽しみにしているよ、という旧知の社長から、嬉しい感想をいただきました。

電話では謙遜されていましたが、同社の営業マンは皆優秀ですし、仕事に対する姿勢も前向き。

それでも、業界を取り巻く環境は決して穏やかではなく、こと新商品の売上は伸び悩んでいるとのことでした。

 

月内にでも一度来て欲しい。とのことだったので、スケジュールを調整し、それまでの間にやっておいて欲しいことを社長に伝言しておきました。

 

 

・ うちの商品(新商品)を購入する前に期待したこと
・ うちの商品を購入する前に使っていた商品(メーカー)
・ 使ってみて実感したメリット
・ そのメリット感じた具体的なシチュエーション
・ 以前の商品と当社商品を比較して良かったこと、残念に感じたこと

 

この要点をまとめた上で、販売先の業種・業態、そして利用している部署まで一覧にしておいて欲しいと伝言し、電話を切りました。

 

同社の営業の皆さんは、とてもマジメなだけに「どうすれば売れるのか?」を常に考える様な方々です。

 

その思考回路は、とても素晴らしいことです。

しかし「どう売るか?」に意識が集中しすぎると、今の時代は逆に売れなくケースも出てきています。

 

財布の紐を緩める営業活動…つまり「どう売るか?」を考えることは、営業マンとしては必要なスキルです。

しかし、財布の紐を緩めることができない人(法人)たちが多くなってきた今、「どうやって買いたくさせるか?」に焦点を絞って訴求していくことの方がより大事になってきました。

 

これは営業マンの一人一人の活動の話ではありません。

会社全体として「顧客が買いたくなる一連の購買プロセス」を改めて考え直す必要性があると言うことです。

 

 

財布の紐が緩かった高度成長期は、個人にしろ、法人にしろ「余分なもの」を買うゆとりがありました。

特に未来が明るく感じられる時代は、「余分なもの」を許容する購買行動につながっていたのです。

 

営業マンは、その許容部分をいかに広げるか…

誤解を恐れずに言えば、いかに「余分なものを購入してもらうか?」に手腕が発揮できた時代でもあったのです。

 

 

しかし、バブルが弾け低温経済が続くなか、国民1人当たりの消費支出は30年間で12%も減少しています。

 

所得も30年前から伸び悩み、コロナ前でも、100%を下回っています。

さらに、今回のコロナによって、ますます減少トレンドになることは、避けらない状況になるでしょう。

 

所得が増えない=消費支出も低迷。

 

富裕層を除き、今 限られた財源で必要なものを必要なだけ購入する傾向が、今後も続くことは間違いありません。

 

だからこそ、「売る」と言う視点から「欲しくなる」と言う視点に比重を置き変える必要性がより強くなってきたのです。

 

「そんなのは前々からの傾向ですよ。今更改めて言う必要がありますか?」

 

とマーケティングの世界に身を置く人たちは、思うかも知れません。

しかし、現実として、まだまだ多くの企業は「売る」と言う視点から脱し切れていません。

 

冒頭の事例でも、伸び悩む営業活動のなか、「自社商品が欲しくなるような訴求力」を見つけるために、「我が社の商品は、誰にとって、どんなメリットがあるのか」を鋭く磨き上げるための質問をしています。

 

・ うちの商品(新商品)を購入する前に期待したこと
・ うちの商品を購入する前に使っていた商品(メーカー)
・ 使ってみて実感したメリット
・ そのメリット感じた具体的なシチュエーション
・ 以前の商品と当社商品を比較して良かったこと、残念に感じたこと

 

上記5つの質問によって、顧客が欲しくなるシナリオが明確になるのです。

 

顧客が欲しくなるシナリオは、「結論→理由→根拠」の順にストーリーを組み立てることが大事なので、顧客に質問する際も、売れるシナリオを作ることをイメージしながら、答えを引き出していくのがポイントになります。

 

具体的には…

 

「結論」とは、(私にとっての)購入メリットの打ち出し。

「理由」は、メリットを享受できる商品の特徴や性能(またはサービス特性)

「根拠」は、「権威から推奨」であったり、エビデンスなどの証拠であったり、お客様の声などメリットを享受できる確信となる情報になります。

 

顧客は、それぞれに「購入したメリット」の感じ方が違います。

自社商品を購入する前に使っていた商品やサービスも違います。

購入メリットも利用場面によって感じ方が違うでしょう。

 

この顧客毎の情報を、ターゲティング対象として一括りにすることで、ターゲットに刺さりやすい「購入メリットの打ち出し」ができるようになるのです。

 

冷蔵庫一つとっても、

・一人暮らしの人、若者夫婦、高齢者夫婦、子供のいる家族など、それぞれに「冷蔵庫」に求めるものが違います。

 

・お酒好きな人、野菜中心の食生活の人、肉中心の人、魚中心の人…など、好みによっても「求める価値」が違います。

 

購入メリットを感じている理由は、売り手が想像するよりも、もっと深いところにあります。

 

様々な属性のお客様から自社商品の購入体験をヒアリングすることで、一番力を入れるべきターゲットが明確になり、そのターゲットに訴求する「セールス・ポイント」もクリアになるのです。

 

これが、自社商品が欲しくなるような訴求力を高める最大のポイントとなります。

 

御社は、自社商品の購入メリットを客観的に掌握し、新規営業やマーケティング展開の際に、的確に訴求できていますでしょうか?