とことん「本質追求」コラム第505話 営業マンの社員教育では、売上が上がらない3つの理由

 

 

「営業研修では、業績は向上しない… なんとなくは理解できますが、何かスッキリしません。どうして研修では売上につながらないのでしょうか?」

 

先日のコラム「第504話 社員が変わる「社員教育」の進め方とは」https://www.j-ioc.com/wp2024/column/12212/では、研修そのものでは社員は変わらない。社長もその研修に参加して、自ら変わって、それを社員と共有すること。

 

そんな内容を前回のコラムではお伝えしました。

そのコラムを読んだ読者からの素朴な疑問。

 

そもそも論として、なぜ営業研修は成果(売上)につながらないのか? という疑問に今回のコラムでお答えしていきたいと思います。

 

藤冨がこれまで様々な業種・規模の企業に携わってきた経験値から「営業マン研修が成果を生まない3つの理由」が存在すると確信を持っています。

 

一つ目は、「営業ノウハウが発揮できるか否かはメンタル力がカギを握っている」という揺るぎない現実です。

 

弊社、日本アイ・オー・シーが創業期に手掛けたガイドマップ作成事業は、現在高校時代の親友に譲渡し、彼は見事に18年に渡って事業を継続的に成長させて

います。

ただ、彼は教育が苦手。なので、譲渡した当時は、中途で営業マンを採用するたびに「飛び込み営業」のお手本を藤冨が見せながら教育をしていました。

 

「飛び込み営業は、決済者にリーチすること。すぐさま社長の連絡先をゲットするか、アポを取ること」

「だから、入った瞬間にガイドマップ事業の大義を伝え、”社長に直接話をしたい。今連絡取れますか?”と聞くこと。」

 

OK? 何件か私がやってみるから、その後やってみてね!

と伝えても、「社長に連絡取れますか?」 この一言が怖くて言えない人がめちゃくちゃ多いのです。

 

この社長に連絡を取れますか? という一言の言葉の裏には、「あなたじゃ話にならないから…」という”声にならない語気”を感じさせて柔らかくも強いプレッシャーを与えないと、成功しません。

 

でも、このニコニコしながら、柔らかくも強いプレッシャーを与える「社長に連絡取れますか?」というこの一言は、メンタルが強くないと言えないのです。

 

もちろん、最初は言われた通りにやります。

しかし、飛び込みを3件、5件と繰り返す中で、「用件なら私が聞きます!」と担当者や店長から強いブロックにあい続けると、だんだんと心が折れはじめて、気がつくと「あのー店長さんはいますか?」と、「社長に連絡とってください」という大事な一言が言えなくなってしまうのです。

 

ほかにも、情報システムの販売など「高額商品」を販売する際は、値段は価値を伝え切る前に言ってはいけない…という営業の鉄則があります。

 

藤冨も20代後半の頃に、最低でも200万円のパッケージソフトを販売し、後輩の育成にも当たっていましたが…

 

商品を説明している最中に商談相手から「ところで、これいくらなの?」と聞かれた際、プレッシャーに負けて、価格を伝えてしまう営業マンが大半。

その場で、商談不成立…というケースを、これまでゴマンとみてきました。

 

鉄則は鉄則。

守らないと、商談成立の可能性が激減するのです。

 

しかし、この鉄則を守ることは、個人のメンタルに依存するもの。

このメンタル強化は、外部からの刺激では持続的に維持することは極めて困難なのです。

もし、読者さんの中で「いやいや営業マン教育で成果を出し続けているケースがあるよ!」という方がいましたら、ぜひ藤冨までご一報ください。「事実」「前提条件」に再現性があるようでしたら、本コラムに掲載し、考えを改めますので。

 

2つ目は「 営業の武器」がないと、再現性は生まれない…ということ。

藤冨は、以前様々な営業研修会社がどの様な成果を上げているか、調査したことがあります。

 

しかし、研修の成果物を持って、営業活動を実施し、業績を上げ続けている企業は皆無でした。

 

もちろん、成果という意味では、提案書の作り方研修などを受けた企業では、一見すると「営業の武器」が出来上がっているように思える研修もありました。

 

しかし、その企業の「競争優位性」「顧客に与えるベネフィット」「信用力増強コンテンツ」など、営業トークに組み込むとこで受注確度が上がるためのコンテンツまで煮詰めているものは皆無。

 

言葉は悪いですが、「プラスチックの刀」のような「見せかけだけのもの」であり、何の武器にもなっていないケースばかりでした。

 

これでは「勝てる!」と言う自信が持てないまま、戦場に出かける様なもの。

営業マンは尻込みしながら活動するため、成果につながらないのはある意味当然と言わざるを得ません。

 

織田信長公が、鉄砲という「勝てる!と思える武器」を兵士に渡し、その使い方まで訓練することで、兵士は現場で尻込みせずに結果を出し続けることができる様になるのです。

 

最後、3つ目が「愛社精神」の希薄化したままの教育は無価値である、と指摘しなければなりません。

 

思えば、20代の藤冨は、中途半端な自分に自己嫌悪を抱き、なんとしても這い上がりたいと闘志に燃えていました。

その時に勤めた創業まもないITベンチャーが、株式公開を目指して頑張っている。

 

努力するハンパもんの自分。

まだまだ成長途中のシステムで、株式公開を目指す勤め先。

会社を成長させることが、自分成長に繋がると確信を持ったらからこそ、愛社精神が芽生えていたのです。

 

「完全なる経営」を書き下ろした心理学者のマズロー は、同著で「重要かつ、やり甲斐のある仕事を通じて人は自己実現ができる」と説いています。そして、「仕事は自己救済につながる。矮小な人間を偉大にするのが仕事である」とも。

 

何が言いたいかと言うと、重要かつやり甲斐のある仕事であると社員が信じた時に、初めて社員は積極的に努力をして、会社を成長させようとするわけです。

 

「第504話 社員が変わる「社員教育」の進め方とは」で、社長もその研修に参加して、自ら変わって、それを社員と共有すること…とお伝えした真意はここにあります。

 

以上、営業研修が成果(売上)に繋がらない3つの理由は、裏を返せば、業績を上げるための3つのヒントがあるとも言えます。

 

教育は、自ら学びたい…と欲求が芽生えた時に、初めて有効になります。

 

社員も社長も他責思考では、結果を出し続けることはできません。

それぞれが自責思考…になれた時に、成長のトリガーが引かれます。

 

 

人間は、弱い存在である

弱い存在を偉大にする役割として「仕事」は重要な役割を担う

従って、重要かつやり甲斐のある仕事を遂行したいと努力する下地が必要である

仕事で成果を出すための「道具(営業の武器)」は、勝てる!と言う士気を上げてくれる

勝ち戦を続ければ、自然ともっと強くなりたい!と願う様になり、教育を受け入れる器が出来上がる

 

教育を通じて、営業に成果を上げてもらいたいと願うならば、この揺るぎない現実を見つめる必要があります。

 

御社は、営業マン教育の下地を整えることに意識を向けていますでしょうか?