とことん「本質追求」コラム第523話 商社を介すデメリットを克服する経営政策

 

「最近、ネットからの注文が増えてきて、利益率が改善しました。製品に型番を入れだけで、ネットから注文が増えるなんて…本当に面白いですね」

3年ほど前からお手伝いしている企業の社長とオンライン会議をした際、冒頭から前向きになるような話を聞かさせてもらいました。

当時の課題は、直販比率を高め、利益率をあげることでした。

 

だからといって、商社とのパイプを断ち切る方針は、立てませんでした。
本来であれば、直販体制を築くことが定石。
でも、全ての会社が理想的な体制を目指すべきか? というと、そんなことはありません。

 

場合によっては、商社との取引は保っておいた方が良いケースだってあります。

やはり新規をとってくる力。社内リソースを使わずに商談を勝手にまとめ上げてきてくれる力は、頼りになりますし…

ただ、彼らも当社の商品だけを売ってくれるわけじゃない。
今いる商社の営業担当が、辞めたときのことを考えると…
やはり、自社の自助努力で売上を上げていく仕組みを作る必要がある。

 と、自社の課題を冷静に分析した結果、「波及営業法」を自社に定着させたい…とのことでスタートしたプロジェクトでした。

どのような判断にも、メリットとデメリットは存在します。

商社を介す商売の主たるメリットは、「営業マンを外部化」できること。 

反対にデメリットは、「利益率が下がること…」だと思いますか?
確かに、中間マージンを取られますから、目に見えるデメリットとしては「利益の毀損」かも知れません。

しかし、本質的なデメリットは、別のところにあります。

 

コンビニの棚を見ると、その構造がハッキリわかります。

湖池屋の「ポテトチップス」やカルビーの「サッポロポテト つぶつぶベジタブル」などなど、メーカーの商品が棚から消えてなくなり、代わりに露骨なコピー商品(コンビニのPB)が安売りされています。

あまりにも露骨なコピー商品は、恐らくコンビニ側もメーカーにパテント料的なものを支払っている可能性はありますが…

利益云々の問題ではなく、「メーカー名」が排除されているところに、本質的な問題があるのではないでしょうか?

世代が変われば、メーカーの存在は忘れ去れてしまうからです。

 

「販売を代理」させることの本質的な問題は「消費者との接点」がなくなること。

 

販売サイクルに変化は生じていないか?
既存競合との商品力の差はいかほどか?
新たな競合の登場した際の、販売推移への影響はどの程度か?

こういった「顧客支持の変化」を理解できなければ、メーカーの命綱である「ものづくり」の起点となる「企画力」が奪われていってしまうのです。

 

目先の販売マージンなんて、どうだって良いこと。

メーカーは、自ら商品に値段をつける特権を持っているのですから、販売マージンを加味した価格設定を行えば良いだけですから。

 

と、考えると、やはり最終顧客との「接点」は、何としてでも繋いでおいておきたいもの。

 

そう考え、同社とのプロジェクトでは、対策案の一つとして、製品に型番をつけること…を起案したのです。

 

同社の製品は、消耗品とまでは言わないまでも、一定の買い替えサイクルが存在していました。

その買い替え需要も、全て商社経由。

 

なるほど、これは勿体ない。

下手をすると、その商社でさえ、目が行き届かずに、チャンスロスが生じている可能性すらある…

 

これが、本質的な課題であり、対処すべき問題だったのです。

 

なぜなら、その製品の利用者が「あれ? これってそろそろ寿命? どこに発注するんだ? えーっと検索エンジンで調べてみるか!』といった〈場面〉が容易に想像できるわけです。

 

毎日出入りしている商社営業マンが、その〈場面〉に接するチャンスを逃さなければ問題ありません。

毎日出入りしなくても、何かあったら、あそこの商社! と決まっているのなら、それも大丈夫。

しかし、発注サイクルの頻度が低く、どこに発注すれば良いのかわからない場合…

 

商社、メーカーともに「チャンスロス」が生じてしまうわけです。

 

顧客の行動パターンを妄想すれば、その時には「型番」が記載されていれば、検索エンジンで探すはずです

 

そこで、発注が最も簡単にできれば…

チャンスロスは防げます。

 

しかも、受注した際の販売マージンを商社に自動的に振り込む仕組みを構築すれば、商社だって喜びます。

 

「おっ、あのメーカーは商社をすっ飛ばさないな。律儀だな。新規はあそこにするか!」という心情だって生まれます。

 

最終ユーザーも、発注先がすぐにわかり、ストレスフリー。

商社も、初回商談だけまとめれば、あとは自動的にお金が振り込まれていく流れ。

メーカーは、発注サイクルが解るだけでなく、大手を振って最終顧客と「会話できるチャンス」が生まれるので、企画力の源泉が確保できる。

 

 全て「win」-「win」-「win」の関係ができるわけです。

 

時代が大きく変わる中、エンドユーザーの情報を握ることは、極めて重要な経営課題です。 

御社は、顧客情報の獲得を意識した経営を行っていますか?