とことん「本質追求」コラム第547話 民主主義の会社組織は「崩壊」する?

『主観的なトップダウンを否定している理由を教えて下さい。そもそも方針決定において、客観性が入り込む余地など無いはずです』

先週のコラムを読んだ方から、鋭く本質的な批判を頂きました。
舌足らずだったので、本コラムにて、改めて詳しく藤冨の主義主張を展開させて頂きます。

メールにてご指摘を頂いた方の主義は、哲学的に見れば正しく、真意もなんとなく理解はできます。
そもそも「主観」とは、情報や状況・物理的な存在などに対して、主体の視点からのみ『真』である…とする哲学的アプローチを藤冨は支持しているからです。

例えば、自社の主力商品の競合が出現し、機能・性能も明らかにレベルが上で、かつ低価格のため、新規商談で負け込んでいたとしましょう。
営業マンとしては深刻です。
強敵の現に何かしらの対策を打たなければなりません。
その時、その営業マンは『価格を下げるべきだ…』と、一社員(主体としての視点)として値下げ政策を社内に進言しようとするでしょう。

一方、経営者においては『競争はしない。製品を改良し、新市場に打って出よう!』と『トップマネジメント(主体としての視点)として、新たなビジョン』を打ち出すかも知れません。

このように、同じ状況に立たされても、主体によって判断は異なるもの。

つまり、情報を受け取って、それをどう感じ、どう判断するか、という状況において客観性が入り込む余地はない、と言う指摘は、その通りだと思います。

しかし、藤冨が言わんとしている「客観的・理性的なビジョン設定のあり方」は、もう少し踏み込んで考えています。

上述の通り、情報・状況・物理的な存在は、視点・視座・視野・感情・信念・欲望など、その人の心の影響を受けて、捉え方がまるで変わってしまいます。

これが「真」だとすると「現状を捉える」という作業が、極めて不安定になってしまいます。

なぜなら、人間は見たくない景色は見えなくなる動物ですから、主観的な捉え方から抜け出せないと、全ての現状を正しく捉えられない…ということに繋がるからです。

客観的かつ理性的な判断(ビジョン)が必要…と、書いた理由はここにあります。

 一つの仮説を提示して考えてみたいと思います。

「価格競争を仕掛けられて、失注しまくっている。ウチも値引きで対抗しなくては!」と捉える人の背景を観察してみます。
すると、「現状でも一杯、一杯。これ以上仕事の負荷をかけたく無い」と…感情的なバックボーンが横たわっていた。
結果、彼は、色々な施策を考え、実行する(今の)時間が無い。だから値引きで対応しようと考えたわけです。
しかし、価格競争に突入すれば、必要な粗利を稼ぐために、これまで以上の受注件数が必要です。
今の時間を節約したために、未来の時間が犠牲になった。
主観的・感情的な判断によくある落とし穴です。

一方で、「値引き以外の付加価値で勝負できないだろうか」「他分野に踊り出ることはできないだろうか」など、あらゆる角度から現状を捉えると、また違った景色が見えてくるもの。
ゼロから思考し行動すると、今の時間は犠牲になりますが…
将来的に仕事の負荷を減らし、さらに必要な粗利を十分に確保できる「妙案」が浮かぶかも知れません。
この妙案を導き出す素地に必要なのは、他者の視点や意見を取り込む…という作業です。

置かれた状況を他の人たちはどう捉えているのか。
様々な見方・捉え方を掌握しようとする理性的な試みが、客観性を醸成させるからです。

前回のコラムでは、藤冨は民主主義を否定している! 暴君のワンマン経営を推奨しているのか!! と激高された方もいたようですが、上述の通り、それも藤冨の主義主張とはズレています。

社員が現状をどう捉えたのか。
どう解釈しているのか。
どのような判断をしようとしているのか…

主的に、目を凝らし、耳を傾ける必要はあると藤冨も考えています。
そうでなければ、情報や現状を理性的に捉え、客観性を醸成することができないからです。

しかし誤解して欲しく無いのは、民主的と民主主義は、全く違う世界観だということです。

民主的とは、リーダーが自己中心的にならず、利他的な思考回路を持って、判断をしていくこと。

ビジネスの現場目線から説明すると、顧客第一主義の立場でビジョンを描き、現場の意見を尊重し、最適な顧客満足を勝ち取るための施策を打ち続けることが、民主的な経営スタイルだと定義づけすることができるのでは無いでしょうか。

一方、民主主義とは、民意の視点、視座、感情などが経営方針や日常の事業活動に影響を与える世界を指します。

日常業務の改善や現場での細かな問題解決は、現場主義でやれば宜しい。
しかし、会社の方針を示すビジョン策定に民主主義を持ち込んだらどうなるか?

上述の例を挙げれば、競合他社が参入してきたから、ウチも安く売ろう!
などと、極めて低い視座で経営方針が決定され、視野の狭い事業活動によって、結果的に、経営をジリ貧に追い込んでしまう…。
ダメな民主主義が蔓延ると、こうなるのは火を見るより明らかです。

民主主義は、役員会など極めて少人数であれば正しく機能する可能性がありますが、全社的な活動に適用するのは基本的には御法度。

繰り返しますが、現場の状況をしっかり観察し、社員の意見を聞き入れ、民主的な姿勢をもって情報を取り込む姿勢はとても大切です。

客観性を取り入れた情報(現状)を理性的に判断し、その結果を「ビジョン」に昇華させるのが、トップマネジメントの仕事です。

もちろん、現場の状況や意見を掌握した上での判断ですから、なぜその結論に至ったのか…を、トップマネジメントは、社員に説明する必要はあるでしょう。

みんな視点・視座、視野、感情、信念が違うのですから、現場から汲み上げた情報によってなぜその判断をしたのか…
この解釈や意思決定のプロセスが分かると、みな腑に落ちた行動ができるようになるからです。
一丸となって、事業活動を進めたいなら、この面倒くさいプロセスを踏むことが大切なのでは無いでしょうか。

単なる仲良しクラブ的な組織活動は「危ないなー」と見えてしまいますが、顧客第一主義を貫くための同志として仲間意識の醸成は、尊敬の眼差しで眺めています。

御社の組織は、顧客第一主義を貫くための同志としての仲間意識が、醸成されていますか?