とことん「本質追求」コラム第555話 消費者目線で、自社商品を見つめ直す方法論とは

「他の代替案と比較して、差別的優位性を消費者目線ですることは、とても重要なことだと思いますが、具体的なやり方はありますか?あれば、教えてください」

前回のコラムを読んだ読者さんからの質問です。
1週間お待ち頂きましたが、本コラムを持って、ご回答します。

おおよそ売れない商品は、主観的な思い込みが強すぎるのが、売れない原因となっている場合が多いもの。
客観性を獲得するのは、時間とコストがかかりますが、売れない商品の製造コストやマーケティング投資と比較すれば、圧倒的に効率的。
何よりも、成功確率の高い仕事をすることで、社員からの信頼感が醸成されるので、一石二鳥です。

都内の居酒屋で、愚痴を吐きまくっているサラリーマンの会話に耳と傾けると、「俺たち現場の意見やアイデアを聞き入れないから失敗するんだよ」「気分で決めるから、判断基準が意味不明なんだよなー」とか「自主的に行動しろ!っていう割には、プロセスやルールが不透明だから、動けねーよなー」などなど、主観的かつ独善的な姿勢や論理的思考回路の欠如からの不満であることがほとんど。
結果、売れないばかりでなく、社員からもそっぽを向かれてしまっては、長期的な成長なんて、夢のまた夢となってしまいます。

主観的なアイデアは、客観性を取り入れるプロセス…つまり消費者目線を介すことで、新商品の成功確度を高めていきます。

具体的なアプローチは、2段階でおこないます。

・想定する差別的優位性を言語化&視覚化すること
・その差別的優位性を想定見込客が評価するか、実際に聞いてみること

新商品のアイデアは、この2つのプロセスを踏むことで、他の代替案と比較して、差別的優位性を消費者目線からみることができるようになります。

まずは、想定する差別的優位性を言語化&視覚化することの具体的なアプローチをご紹介しましょう。
藤冨が好んで使うのは「ポジショニング・マップ」です。

ある化粧品のコンサルティングをした際に明示した「ポジショニング・マップ」をご覧ください。


※意図的に画像を粗く表示しています。ご了承ください。

ポジショニグマップの最大のポイントは、顧客の購買選択基準を明らかにすることです。

競合商品や代替品が、何によって評価されているのか?
この購買理由を探り当て、X軸とY軸を設定し、代替案や競合商品を割り当てていきます。
評価軸は、顧客価値から設定することが大事。

価格は、価値の結果ですから、価格以外の評価軸を設定するようにしてください。

この顧客の選択基準によって、競合他社との「差別的優位性」を視覚化できれば、「ポジショニング・マップ」の完成です。

ちなみに、この評価軸…つまり購買選択理由は、できるだけ無意識領域で顧客が選択しているポイントを探り当てることができれば最高です。
無意識的にダメな選択的購買行動をしている消費者が多数存在していると「こっちの方がよくないですか?」と促すことで、簡単に自社商品にスイッチしてくれる可能性が高いからです。
いわゆる潜在ニーズを刺激する商品になり得え「ありそうでなかった商品」として市場から歓迎される確率が高まります。

ただ、ポジショニング・マップを描いた時点では、まだまだ自己満足の領域から脱しきれていません。
この選択基準が正しいか否か…想定客に聞いてみることが大事です

ここでようやく客観性を獲得できることになります。

客観性の獲得は、2つの方向性で検討してください。
「定量データ」と「定性​​データ」の2つを獲得することがベストです。

定量データの獲得は、いわゆるマーケティングリサーチ会社に依頼する方法が伝統的ですが、数百万から数千万円と莫大なコストが掛かります。
今の時代は、クラウドワークス や無料のグーグルアンケート(googleフォーム)を駆使すれば、0円から数万円からある程度の定量データが獲得できるので、できる限り多くのサンプルをとるようにしてください。

また、定性データの獲得は、グループインタビューのようなマーケティングリサーチが伝統的手法ですが…これも数百万円のコストが掛かります。
藤冨もサラリーマン時代に何度かグループインタビューに立ち会ってきましたが、正直言ってデータとしての信憑性は懐疑的です。
「アンケート対象者がこなれていること」「欲しいと買いたいの意識は雲泥の差があること」が、その理由です。

日本アイ・オー・シーのコンサルティングでは「先行予約テスト販売」を推奨しています。
まだ製品化していない段階でも、購買意欲調査と題して、実際に売り込みます。
「製品化に成功したら買ってくださいね。はい、これが先行予約注文用紙です。お支払いは納品後で良いので、今すぐご捺印ください」と言われれば、本当に欲しいのか、本当に使うのか? の確信を得ることができます。

・差別的優位性を見える化するポジショニングマップを作成すること
・それをベースに「先行予約テスト販売」をすること

もし、このプロセスを実行する中で、競合に勝てないかも、お客様に価値を感じてもらえないかも…と判断できれば、製品化を中止することができます。
屍(しかばね)を生産しても、コスト・時間ともに、ドブに捨てるようなものです。

成功確率の高い、新商品を世に送り出したいのなら、避けては通れない道が「ポジショニングマップの作成」と「先行予約テスト販売」になります。

御社は、新商品開発において、成功確率に確信が持てるプロセスをルーチン化していますか?