『先週のコラムで「テレビ、YouTube、アマプラなど生活を取り巻く環境からインプットされる情報が多様化しているので、価値観も多様化している」と書かれていましたが、もう少し詳しく教えてもらえませんか?』
読者の方から、ご質問をいただきましたので、この場を借りて回答し、皆さまとも共有したいと思います。
これは、スマホ以前の時代とスマホ後の時代を比較すると、イメージしやすいと思います。
例えば、4人家族で1台のテレビを共有していた時代は、お父さん、お母さん、子供たち、それぞれがチャンネル権を奪い合っていました。そのため、見たくない番組も仕方なく見る人が出てきてしまいます。そのままシラーッと時間が過ぎるのを待つ人もいますし、途中から興味を抱く人も出てきます。
いずれにせよ、自分の興味の有無に関係なく、半ば強制的に情報がインプットされる機会が多かったのがスマホ以前の時代でした。
一方、スマホが社会に浸透した現代は、それぞれが自分の嗜好にあったメディアにアクセスできるようになりました。家族や周りの人たちに同調することなく、個人個人が主体的に情報を選択できる時代です。
お父さんは趣味の情報に浸り、お母さんは旅行の情報をあさり、子供たちはゲームや流行りの動画配信サービスで自分のお気に入りのコンテンツに没頭します。
それぞれの「ゆるやかに閉ざされた世界観」が出来上がり、ある種の「村」が形成されていきます。
例えば、YouTubeで「経済番組を好んで見る人」「政治系の番組を見る人」「アニメを見る人」…または「ゲームに没入する人」や日常的に「SNSにアクセスしている人」は、その嗜好パターンに近い人たち同士で、ネット上で価値観を共有していきます。
その価値観は、さらに嗜好性を強化し、近しい人たちとの「ネット上での村」を確立していくイメージです。
YouTubeチャンネルが増えれば増えるほど…
依存性の高いゲームが生まれ、新たなファンを獲得すればするほど…
「ゆるやかに閉ざされた村」が、情報ネットワークの中で指数関数的に増加し、価値観の多様化をもたらしていく。
これが、インプットされる情報が多様化すると、価値観も多様化する所以です。
先週末(6/30)の日経MJ新聞が、「一人の芸能人よりも一般人100人の時代が来るかも!?」という見出しで、マイクロインフルエンサーがヒット商品を生み出す可能性に言及していました。
マイクロインフルエンサーとは、10万人以下のフォロワーを持つSNS上で影響力を持つ人たちのことを指します。
従来は100万人以上のフォロワーを持つ芸能人などのメガインフルエンサーが消費生活行動に大きな影響を与えていました。
しかし今は、閲覧数は限定的でもフォロワーの熱量が高く、反響率の高いマイクロインフルエンサーによる広告活動の方が成果を上げているようです。
前述したように、「情報の多様化による価値観の多様化」が強く影響していることが見て取れます。
これは、中小企業にとってはチャンス到来!と捉えて間違いありません。
中小企業でも大手企業と互角に競争できる土壌が形成されてきたことを示唆しているからです。
かつては芸能人を起用し、テレビCMを放送するためには数千万円から億単位の宣伝広告費が必要でした。さらに、実際の購買行動に結び付けるためには、全国の小売店に該当商品を取り扱ってもらう必要もありました。消費者に認知されて興味を持ってもらっても、実際に入手できなければ購入することはできないからです。
しかし、フォロワー数が少なくても影響力のあるマイクロインフルエンサーなら、広告投資も限定的で済みます。また、広告とインターネットショップの相性も良く、実需対応も容易な時代です。
全国の小売店に頭を下げて自社商品を置いてもらう必要もありませんし、広告代理店に支払う巨額な広告費も不要です。
小資本で全国展開が可能な時代…
まさに、中小企業にとって多様なチャンスに恵まれた時代と言えるでしょう。
多様化する価値観の捉え方を理解し、それに合わせた戦略を展開することが、これからのビジネスにおいて、さらに重要性を増していきます。
それには「ペルソナマーケティング」を取り入れることが、一つのアプローチとして有効です。
ペルソナマーケティングとは、ユーザー像を具体的に描き、ユーザーの思考や行動傾向を分析し、施策を最適化するマーケティング手法です。
1999年にソフトウェアやテクノロジー製品の開発において、ユーザーのニーズや要求を適切に理解するために生まれた手法ですが、現在では多様な商品に応用されています。
自社商品に関係性の深いキーワードをSNS上でハッシュタグ検索をし、どのような人が、どのような嗜好性や価値観をもち、どのような行動をしているのか…
調査会社に頼らずとも、誰でも簡単に検索できる時代。
誰のための何のための商品なのか?
深く鋭く追求する「思考力」が、今後ますます求められてくるでしょう。
御社は、狭く深く鋭くマーケットを絞って、コミュニケートする努力をしていますか?