「物価高騰で、利益が圧迫されています。しかも市場のシュリンク(収縮)が顕著な業界でして…危機感を持って今日伺いました」
先日、群馬県の商工会議所から呼ばれて、物価高騰時代の販路拡大策というテーマで講演を行いました。
IMF(国際通貨基金)によると、日本における2023年のインフレ率は3.27%と発表されています。
コロナ以前は、1リットル=100円前後だった「軽油」は、現在150円程度になっていますし、日清食品のカップヌードルも、以前は130円前後だった記憶がありますが、今コンビニに行くと230円程度の値札が貼られています。
価格が据え置かれている業界もありますが、マスコミから聞かれるインフレ率と実際に消費する立場から見たインフレ率は、大きく乖離している気がしてなりません。
上述の講演に参加され、物価高で経営が逼迫している…とおっしゃった方は、中でも特に顕著です。
注文住宅を請け負う会社の社長さんでしたが、建材、運搬費、人件費の全てが高騰。
しかも、主要顧客層である20代後半から、30代半ばの若者たちは、同市の人口構成比で9%しかいません。
量的なシュリンク(収縮)だけでなく、彼らは、生まれた時から「失われた30年」の中で育ち、豊さを経験していませんから、注文住宅に対する消費欲求は比較的強くありません。
「人よりちょっと贅沢」を目指す、注文住宅業界のおいては、量的、質的にもシュリンクが激しくなっており、そこにきて物価高。
泣きっ面に蜂とは、まさにこのことです。
予定調和な講演なんて、YouTubeでも学べる時代なので、ご参加者の承諾を得て、公開コンサルティングに切り替えることにしました。
今日のコラムは、その際の話をサクッと簡単にまとめてみました。
まず、物価高に対応するためには、大きく分けて2つのアプローチしかありません。
1つは、原価の圧縮。
より安い材料を探し回るか、より安く運送する手立てを考えて、少しでも原価や一般管理費を「抑える」アプローチです。
チリも積もれば山となるので、この経営努力はするべきではありますが、守りの姿勢だけでは、疲れてしまいます。
したがって、本質的には、経営者がトライしなければならないテーマは、2つ目のアプローチ。
物価高を上回る売上高の増大に焦点を合わせる必要があります。(正確には、粗利益が取れるビジネスモデルへの転嫁です)
冒頭の通り、若者の人口は縮小し、かつ住めれば良いと考える若者が増え、注文住宅ではなく、安く買える建売でも十分だと感じている層が厚くなってきています。
提供商品と消費者ニーズがマッチしていなければ、手の打ちようがありません。
無理に合わせようとすると、買い手目線のマーケティング戦略になるので、結果うまくいかないことが多くなります。
となると、ターゲットを思いっきり変えてみるのは、一つの有効な手段となります。
元々、注文住宅を建てる意識のあるターゲット層。
2軒目の住宅を購入する需要。
など、お金の払い癖のついている人たちを相手に商売ができないか?を考えるのです。
購入意欲の低い人たちを説得するより、購入意欲の高い人たちが納得する「切り口」を見ける方が、確実に売上は伸びます。
講演の最中、そんな話をしながら「注文住宅の購入意欲の高い人たちは、誰なのか?さらに彼らが喜んでお金を払うであろう切り口は何か?」と考えていたら、自分を含め、周囲の人たちで地方移住の意向がある人の顔が浮かんできました。
実際、移住した知人も複数います。
古民家を買い取って、かっこ良いデザインにリフォームするYouTube動画も盛んに流れており、再生回数の多さから、需要の厚さを実感できます。
しかしながら、そもそも都心に住みながら、優良な物件情報を集めることが困難を極めるのが実情です。
地方の市町村には、ただでも貸したい優良物件(掘り出し物件)がゴロゴロと転がっていると聞きますが、ネットにはそのような面白い情報がヒットしません。
また、仮に物件が見つかっても、リフォームするとなると、ノウハウも時間もないので、不安は募るばかり。
こういった「不」の要素を抱えた人たちが一定数いることは、「地方移住に関する実態調査」などの統計資料や、関連YouTubeの視聴者数を見れば、手に取るようにわかります。
にも関わらず、不の要素を解消する「提案企業」がないとすれば…
そこで一人勝ちできる可能性が高まっていきます。
物件情報は、古民家検索サイトなども乱立していますが、「価格が不明瞭」「価格が表示されていても、実際の値段とは乖離していて割高」「実際に買い取った後、どの程度のリフォーム費用がかかりそうか、全く想像もつかない」など、不安が募る情報ばかりです。
そこに、例えば土地・建物の取得費用は、住民税別(所得別)に明示されており、かつ購入した後にかかるリフォーム費用の目安も…
・建て替え直しプラン
・リフォーム業者一括おまかせプラン
・DIY支援プラン
・困ったときだけ相談できる「ヘルプデスク」サービス
など、潜在顧客に寄り添った提案をすることで、移住希望者も「古民家購入」を現実的に考えることがでれば…
結果的に、その提案企業に「問い合わせ」が入り、ビジネスとして成立するようになるわけです。
顧客の立場になって、本気で情報検索してみると、こうした満たされない潜在顧客が確実に存在することに気付かされるはずです。
実際、後日調べてみたところ、古民家関連の検索数は累計すると10万件/月以上もあり、確かな需要が存在していました。
競争優位性を、顧客視点から発見しようと努力すると、思わぬチャンスが眠っているものなのです。
物価高により経営が逼迫してきたら、どうやって売上を伸ばすのか?
目の前に顧客がいなくなったら、どこに潜在顧客が存在するのか?
「活路」を見出す”問い”を常に、自分自身に問い掛けたいものです。
御社は、直面する困難に対し、どのような態度で接してしますか?