「今週のコラム、とても勉強になりました。当社でも新規事業を立ち上げるために、いろんな対策をしていますが、正直伸び悩んでいます。SEO業者にホームページの運用も任せたのですが、問い合わせは1ヶ月に数件程度。しかも成約に至るケースは殆どありません。原因を想定してもらえると嬉しいです」
先週のコラム「第625話 新規事業の成否を決定する3つの要素」を読んだ読者さんからのご相談メールが届きました。
無料相談は受け付けていませんので、ご相談者の了承の元、コラムをもって回答させて頂きます。
スバリ、結論から申し上げます。
顧客ニーズとSEOキーワードが一致していないことが原因です。
高級住宅地に「激安立ち飲み屋」を開業しても繁盛しないのと、同じくらいのミスマッチが生じているので、この見立てに間違いはありません。
ミスマッチしたキーワードに、SEO対策を実施してもお金をドブに捨てるようなものです。
SEO業者は、商売のプロではありません。
検索エンジン対策のプロかも知れませんが、どのように商品を認知させ、購買欲求を引き出すか?を考える訓練はしていません。
だから、SEO対策をしても結果がでない企業が多いのです。
ストレートに対策をお伝えしましょう。
SEO業者との契約は、一旦お休みして、リスティング広告(PPC広告)に出稿してみてください。
PPC広告とは、ユーザーが入力したキーワードに対して、上位表示させる広告のことです。
広告表示させるキーワードは、何種類でも構いません。
閲覧者からクリックされない限り、広告費は発生しないので、気兼ねなく想定しうる限りキーワードを登録してください。
SEOは、最初に選定したキーワードを上位表示させます。
一方で、PPC広告は、決め打ちせずに思いつく限りのキーワードで上位表示させることができます。
(厳密かつ実務的に言うとは競争環境があるので、SEOと同様、絶対的に上位表示させることはできません)
この2つの構造的な違いを深く理解すれば、いきなりSEO対策とはならないはずなのです。
なぜなら、PPC広告で成果につながるキーワードを継続的に観察し、そこに集中した方が、より高い成果を導き出せるからです。
PPC広告の管理画面には、対象キーワードが「何回表示されたか?」「何回クリックされたか?」「いくら広告費がかかったか?」「問い合わせや購入に何回至ったか?」がキーワードごとに表示されています。
潜在客とマッチングしそうなキーワードを、大量に想定し、どれが成果に繋がるか…
この「答え」を見てから、SEO対策を検討する方が、どう考えても無難です。
実際、当社でも広告を出稿していますし、クライアントさんにも業種やビジネスモデルによって強く推奨しています。
✔︎ 想定していないキーワードが、思わぬ成果を出していたり…
✔︎ 金食い虫のキーワードが浮き彫りになったり…
✔︎ クリックされる絶対数は少ないけど、コンスタントに成果につながるニッチなニーズが見えてきたり…
と、真面目にやればやるほど、顧客の顔の解像度がクリアになってきます。
これが市場との対話力というものです。
広告出稿は、代理店に任せる方が楽ちんではありますが、最初は自分でトライすることをオススメします。
なぜなら、自分の頭で考えることが、商売のセンスを磨く最大のカギを握るからです。
SEO事業者にしても「インターネットは良く分からないからプロに任せよう」と、キーワード選定も業者任せにしているケースが散見されます。
しかし、PPC広告にせよ、SEOにせよ、自社の事業を一番よく理解しなければいけないのは、事業者本人です。
経営者の中には「具体的な仕事は担当部署に任せているから…」と関与しない人もいますが、事業に向かう姿勢を改める必要があると藤冨は考えます。
7000億企業の日清食品を率いる安藤徳隆社長は、週1回の宣伝部の会議に毎回参加しています。
その理由は、若者からのブランドロイヤリティを高めることが、日清食品の持続的成長のカギだと認識しているためです。
反響の取れそうな広告を考え、SNSでどのくらい拡散されたか?を効果測定するなど、仮説→検証にトップ自らが関与しています。
日清の売上を支えているのは、カップヌードルなどロングセラーブランドだそうです。
しかし、ロングセラーを支えているボリュームゾーンは、いずれ死にます。
いや生きていても、カップヌードルの購買頻度は若いときより確実に落ちます。
ならば、日清食品の持続的反映のカギを握るのは、次世代の顧客となる若者です。
その若者の顔つきがクリアに見えるくらい掌握することが大事。
だから、大企業であろうとも社長自らが、顧客の広告反応に神経を尖らせているのです。
顧客の立場にたつ重要性。
顧客の目線で事業を眺める重要性。
耳にタコができるほど、聞き慣れた言葉だと思います。
正直、うんざりしている人もいるかも知れません。
メルマガを解除して、コラムを読むことをやめようかな…と思う人もいるかも知れません。
それでも、藤冨は手を変え品をかえて、言い続けます。
知っていることと、出来ることは違うからです。
企業がどのようなメッセージを市場に発信し、その反応や反響がどうだったか?
市場との対話力を強化した企業は、時代がどのように変化しようとも生き延び、成長し続けることができます。
御社では、市場との対話力向上に向けて、具体的なルーティンワークが出来上がっていますでしょうか?