とことん「本質追求」コラム第116話 営業部隊の新しい課題 — 文書能力の必要性

「手紙ですか? 面倒ですよ。それに電話の方が間違いないです」

営業マンの方に狙った営業先にアポイントを取るようお願いをするとき、必ず手紙を書くようにお願いしています。

ところが、十中八九「えぇー」とやりたくない…という感情がむき出しになります。
とくにトップ営業クラスにお願いすると、ほぼ冒頭のような「反対意見」で押し返されそうになります。

確かに、面識のある見込客などには、手紙よりも電話の方がてっとり早いですし、顧客心理から見ても電話の方が効果的なケースもあります。
私の経験上、営業マンに限らず仕事がデキる人ほど、電話を多用しますから、彼らの意見を真っ向から否定するつもりは毛頭ありません。

しかし、私がご指導させて頂くにあたっては、面倒であっても、手紙でのコンタクトをお願いしています。
新規顧客なら、なおさらです。
手紙など「文書」によるコンタクトが有効に働くだけでなく、結果に対する「要因」が客観的に分析できるためです。

商品よっては、飛込みや電話でないとダメなケースもありますが…、ここは多く業界に通用するケースに焦点を絞って、お伝えしていきます。

電話や面談などは、同じ言葉を話していても、その場の空気感やお互いの表情や緊張感などの影響によって、結果が変わります。
つまり「営業トーク」という要素には、「場の空気」や「お互いが醸し出す雰囲気」などの変数が、結果におおきく変化をもたらしてしまうのです。
これでは、組織に蓄積していくノウハウとしては使えません。
本質的な観点から見つめると、営業トークというのは「個」の中でノウハウの蓄積にしかならないのです。

もちろん、表面上の営業トークを軽視しているわけではありません。表面上であっても、組織内で効果的な営業トークを共有することは組織としての成果に影響します。

それでも、私がここで強調したいのは、結果に対する変数が多すぎるため、原因究明に対しての分析が困難である……という事です。
分析ができなければ、組織として「売上につながるロジック」を見つけ出すことは出来ません。

新人が行っても、中堅が行っても、ベテランが行ってもブレない要素は何か…
商品コンセプトや売れる切り口の見せ方が顧客にとって魅力的か否かをチェックする上で、この分析は欠かすことが出来ません。

これは、アポイントの手紙だけではなく、提案書、顧客に見せる顧客議事録など、すべての営業プロセスにおけるコミュニケーションで同じことが言えます。

組織的に売れるノウハウ、ロジックを確立するには…
文章で売る!
文脈で売る!
という姿勢が、とても重要になってくるのです。

今年2月に発売した拙著「営業を設計する技術」(かんき出版)でも明記しましたが、特に法人営業は、この姿勢は欠かせません。

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法人営業というのは、意思決定者が複数人いるケースが大半です。
とくに高額商品になれば、その傾向は強くなります。

意思決定に関わる人達を全員集めてプレゼンすることもありますが、それでもその場で契約になることは稀です。

通常は、会議室の中で購入の意思決定がなされているのです。

つまり営業マンが直接「営業トーク」などで巻き返しが出来ないところで商談の行方が決まっています。

だからこそ、自分がいなくても受注に向かって誘導していく「無言のセールスマン」が必要になるのです。

その無言のセールスマンとなるが、提案書…
つまり「文書」であり「文脈」なのです。

ところが、営業マンの中には、売れる人ほど「文書」が苦手な人が多いのが実情です。

しかも、売れる道筋を立てながら文書を綴っていく「文脈」づくりは、分かっていても、整理するのが苦手な人が多いのが否めません。

意外に思われるかも知れませんが、商談の場では、文脈は通っていなくても、注文はいくらでも取れます。

なぜ、そんなハチャメチャな会話で商談が成立するの?
という現場を何度も見て来ていますが、「何となく好感が持てる」「なんとなく言っている事が本当に聞こえる」ことで商談は成立するものなのです。

その場、その場の会話を最適化することが身に付き、それで良し!と思っている事が、起因しているのでしょうか?

「文書づくり」「文脈づくり」が、営業組織の文化に根付いていない企業が大半です。
競争がすくない時代。
インターネットで情報収集が困難な時代であれば、それで良かったかも知れません。

しかし、今のように欲しい情報が何時でもリーチできる時代では、「人を惹き付ける文書」「商品やサービスに必要性を感じられる文書」の必要性がますます増していくのです。

この傾向は、一過性のものではありません。
社会構造的に見ても、このまま一定の法則でさらに進化していくことは間違いありません。

先日、主要営業部員の皆さんに「営業を設計する技術」を配って頂いた一部上場企業の役員の方も社内報に文書の重要性を社内報で書かれていらっしゃいました。


チノーさん社内報-002※本記事はご許可を頂き、掲載しています。

複雑化した営業環境下で、いかに成果を出すか。
この解決法の一つに、営業部員の文書能力の向上…つまり売れるロジックを文脈に落とし込む能力の向上を組織的に取り組むことに着目することが必要なのです。

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