とことん「本質追求」コラム第668話 「なぜ日本人は逆算できないのか」日本神話に刻まれた民族のDNA


「今日のプレゼンをぜひフィードバックしてください」

先日、新規事業を軌道に乗せようと奮闘しているクライアント企業のプレゼンに同行してきました。販売代理店候補の企業に訪問し、ざっと30名程度の営業マンの前でプレゼン。

緊張感が張りつめた会場で、Aさんは落ち着いた様子で理路整然と製品説明をはじめ、販売協力を堂々と語りかけていました。

終了後は、リーダー格の営業マンが歩み寄ってきて協力的な姿勢を示してくれ、翌日にはさっそく商談同行の依頼がくるなど、上々の滑り出しとなりました。

しかしながら、藤冨がプロジェクト情報の共有ツールである「Slack」に返したフィードバックは、プレゼン構成は「全面的な見直しが必要」という厳しい評価でした。

なぜ見直しが必要だと判断したのか…。

それは、大多数の営業マンが途中から別作業を始めたり、下を向いて無関心さを示すなど、明らかに興味を惹きつけていなかったからです。

原因は明白でした。
・なぜこのプレゼンを聞くのか理解できていないこと(窓口担当者以外は基本的に無関心)
・その商品は本当に売れるのか?
・売れる!とメーカーが判断した根拠は何か?
・誰に売れるのか、なぜお客は買うのかが理解できないまま説明が細部に入りすぎていること
・細かいことは「今後勉強してください」と、相手に主体的行動を促していること

こうした「相手の疑問」に答えていないプレゼンだったため、次回以降は全面見直しが必要だと判断したのです。

これまで20年近く数多くの営業現場に立ち会ってきましたが、大多数の営業マンは「どうやって説明しようか!」と一生懸命になっています。プレゼンのマインドが「自分(または自社)の商品を正しく理解してもらいたい」という自己満足的な説明に終始しているのです。

一意専心のつもりかもしれませんが、それは独り善がりな熱意にすぎず、聞き手には響きません。

聞いてもらえる相手の感情がどう動くのか…。
もっと言えば、相手の感情をどう動かしたいのか?
結果から逆算して、何を話すのか、どのように組み立てるのかを考える必要があるのです。

ところが残念ながら、私たち日本人はこの逆算思考が苦手な民族だと言われています。
山本七平氏の名著『日本人の人生観』でも、「日本人は目の前の課題や与えられた役割に徹底して取り組む反面、“なぜこの行動が必要なのか”“最終的にどのような成果を得たいのか”といったゴールから逆算する思考が弱い」と指摘されています。

その背景には、神話が関係しているのでは…と私は感じています。

日本神話では、太陽の女神・天照大神(あまてらすおおみかみ)が、田畑を荒らし、神殿に糞を投げつけるなど乱暴の限りを尽くす弟・須佐之男命(スサノオノミコト)を恐れ悲しみ、洞窟(天岩戸)に身を隠したことで、世界は闇に包まれました。

太陽のない闇の世界のままでは、すべての生物が死に滅んでしまいます。

困った八百万の神々は、天岩戸の前で盛大な祭りを企画し、天照大神が楽しそうな音と笑い声に誘われて顔をのぞかせた瞬間、岩の蓋を閉めて引きずり出したのです。

日本人のDNAには、この自然と神々が一体となった「宗教」のような世界観が深く根付いていると考えられます。
山本七平氏も、日本人は自然と一体となることで安心感を覚え、自然に適応して生きることこそ「正しい世界観」だと考えるようになったのでは…と指摘しています。

この「自然に適応して生きる」姿勢は、戦後復興において驚異的な力を発揮しました。
戦後10年で戦前と同レベルまで経済を立て直し、その十数年後には世界第2位の経済大国に台頭するという「奇跡」を成し遂げたのです。
日本人は外圧に強く、強靭な環境適応力を持つという特性を歴史から学べます。

しかし、外圧という環境変化(いわば自然環境の一種)があるからこそ力を発揮できる民族であり、主体的に変化を起こす民族ではないことも同時に指摘できます。

これは安定的な環境下では強みになりますが、変化の激しい時代には逆に弱みとなります。

変化適応力が高いがゆえに未来予測を軽視しがちで、大きな時代の断絶が起きたときに立ち遅れてしまうリスクを常に抱えているのです。

未来を予測しないので、ゴールから逆算することも苦手です。

相手の感情がどう動くのかを予測し、そのゴールから逆算してプレゼンの構成を考えるのが苦手…。
この現実は、日本人のDNAに刻み込まれた性質だと認識する必要がありそうです。

これは同時に、経営計画や営業計画から逆算して戦略や戦術をどう組み立てるべきかという思考が苦手であることも示しています。

こうした日本人の民族性は「明治維新」や「大東亜戦争」といった断絶の時代において、多くの犠牲者を生み出してきました。

そして今、AIの台頭やグローバル市場の再編という過去数百年と比較しても、それに勝るとも劣らない「時代の断絶」の渦中にあります。

断絶した地形の「地続き部分」を見つけ、成長の路線を見いだすためには、ゴールからの逆算思考が必要不可欠です。

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