とことん「本質追求」コラム第145話 人材への投資センスが業績格差を生む

「良い営業マンがいたらご紹介いただけないでしょうか?」

 

先日のコラムにて、若手営業マンの質的変化について触れたところ、以前当社のセミナーにご参加頂いた社長さんから久しぶりにメールを頂戴しました。

 

「先日のコラムは、おっしゃる通り。ウチの若手も全然でして…誰か良い人がいたら紹介してください」といった内容。

 

同社は、とてもユニークな商品を扱っていて、あまり世の中にないサービスを展開しています。

 

懐かしく思って電話をすると「2年目を迎えた今年なぜか売上が頭打ちになっている…」とのことでした。

 

新しい市場を切り開こう!と、まず地元からしっかりと足場固めをしているときは、そこそこ上手くいっていたそうです。

ところが、周辺地域を開拓しようとした瞬間に突破できない壁が立ちはだかったとのこと。

 

売れる営業マンを入れて一発逆転!

と行きたいところですが、そんなに都合よく売れる人は見つかりません。

 

正直、しっかりと中に入って想定顧客の欲求の深度や問題解決時に感じるであろう期待利益を掌握しないと、どのような戦略を企てられるかは分かりませんが…

 

なぜ地元では売れて、周辺地域での営業は苦戦しているのか…まずは、その相違を把握しなければなりません。

 

すると、一発で現況の問題点が浮き彫りになったのです。

 

同社の社長(3代目)は、地元の名士であり、同地区への影響力もあります。

サービスを開発して、地元で打ち出した時には、「あの人が新しいことをやったのなら…」とそれだけで注目をしてくれたそうです。

 

購買心理プロセスの最初のステップである「気づき(注意)」と「関心」のハードルが極めて低い状態での市場参入です。
さらに、購買行動に移すまでのメンタルブロックである「この商品(サービス)から私は本当に効用を受け取れるだろうか…」という信用のステージも既にクリアした状態。

 

これでは、非顧客を顧客化するための必要条件は、まだ蓄積できていない状態と判断せざるを得ない状況だったのです。

 

このような状態から市場開拓をしていくには、アプローチ法から商談フォーマットまで、ある程度の試行錯誤が必要となります。

 

類似業界や類似構造の成功パターンから、当社が成功するには…と微調整をしながら当てはめていき、売れる仮説を考え抜きます。
しかし、どんなに優れた仮説であっても、そのままストンと成功するわけがありません。机上と現場では温度差があるために微調整は必須です。

 

どのくらいの期間、どのくらいの回数をテストすれば成功する道筋が見えるのか…、ぶっちゃけて言うと「売り手の分析能力・企画提案能力」によって雲泥の差が出てしまいます。

 

が、普遍的に言える事は、試行錯誤の時間が必要であるという事実です。

 

この試行錯誤を営業に丸投げする…これはもうある種の逃げでしかありません。

 

ヒーローの出現を期待し、求人広告に数十万円支払って、毎月20万も30万円もの給与を支払っても、1ヶ月もしないうちに退職。

 

最近の若者はやっぱりダメだ…と愚痴りながら、また求人広告にお金をつぎ込む。

 

目的が「売れる道筋」を探す事のはずなのに、「売れる人」を探すことが目的化してしまう。まさに本末転倒の会社は、いまだ多く存在しています。

 

仮に、本当に売れる人が入社してくれたとしても、組織に「試行錯誤の学習経験」が蓄積されないので、次なる壁が出てくる都度、成長をストップさせるしかありません。

 

厳しい見方かも知れませんが、売れる営業マンの登場を切望することは、学習拒否をしているようなものなのです。

 

対処療法では、いつかはまた病魔がぶり返すのと一緒です。

根治せねばなりません。

 

根治に必要なことは、市場に対する分析力と企画・提案能力の醸成です。

 

そのような能力を持っている人…つまりマーケティング能力を身につけている人を参謀につけるか、採用を試みるか、いずれかの対処が有効です。

 

採用? と疑問に思われるかも知れませんが、営業マンとマーケッターの試行錯誤プロセスは、似て非なるものです。

 

営業マンが商談を掘り起こしたり、成約していくプロセスには、風貌や声、話し方など「個」の要素が強く影響してしまいます。

さらに、試行錯誤のプロセスが、記録しにくいために組織に横展開できるノウハウとして蓄積されていきません。

 

ところが、マーケッターの試行錯誤は、企画書に始り、紙媒体やインターネットなど、見込客発掘アプローチなどの「見える化」が図れます。

 

このAという作戦では、コストがどの程度で、売上にいくら繋がったのか?

Bという作戦では…と、学習プロセスが記録化しやすく、組織に横展開できるノウハウとして再利用可能な情報が蓄積されていきます。

 

実際に成功するか否かは、営業マンと同様に「個」の要素(能力)に影響はしますが……

 

「見える化」が図れること。

また「計測化しやすいこと」

さらに「顧客接点に“個”の影響(風貌や声、話し方など)が入らないこと」

 

この3要素は、組織として成功させて行くうえでは、絶対に無視をしてはならない要素となります。

 

しかも、求人広告では、「営業マン募集」だと中々募集者自体が集りませんが、「マーケティング担当者」や「クリエイター」で募集をかけると、営業マンとは比較にならないほど、人が集ってきます。

 

 

どちらが最小のコストで最大の効果が得られるか…

火を見るよりも明らかです。

 

新規事業を成功させたい。

既存商品の再活性化を図りたい。

 

そんな時、御社では、いつ、誰に、どのような人材投資計画を立てていますか?