とことん「本質追求」コラム第152話 高収益企業になるための条件

 

「最近、めっきりと取引先からの受注が減ってきて参っているのです」

 

新規開拓の活動をほとんどせずに、既存の取引先とのパイプだけで事業活動をしている請負型企業の場合、既存の取引先から受注減は、自社の経営にダイレクトに響いてきます。

 

藤冨にご相談頂く企業の多くは、パッケージ化された自社商品を独自の販売手法で市場に提案していますが、中には冒頭のお悩みに見られるように提案型の製造業でありながら、同時に請負型を行っている企業も意外に多いものです。
その請負型の売上比率が高い場合…つまり提案せずに客先から発注や定額収入で売上が成り立っている比率が高い場合は、やはり深刻な状況に陥るリスクを常に抱える事になりますが…

これまた意外にも血が噴き出してからでないと、対策を打たないケースも散見されます。

 

自社の特異技術や、内部留保・利益体質によっても、判断する目安は変わってきますが、一般的には主要取引先数社で売上構成比の3〜4割を占めている場合は危険です。

 

スイッチングコストと言われる「取引先を変える場合にかかる費用負担」が大きければ、浮気されるリスクが減りますが、同コストが低い場合は常に見えない恐怖に怯えなくてはなりません。

 

取引先の栄枯盛衰によって自社の経営が左右されることになりますし、見えない敵にいつ取引先を奪われるかも知れません。

 

自社のコントロールできる要素が限られた環境で企業が成り立っている状態は、一刻も早く抜け出したいのが、普通の経営者心理であるはずです。

 

が、慣れとは怖いもので、生殺与奪権を第三者に奪われた状態であることを何となく気づきながらも、ついつい問題を先送りにしてしまいがちです。

 

円安の影響で取引先よ工場を国内に戻してほしい。と20年前に半ば強制的に海外に生産拠点を移されたのに、ここにきて突然無理難題を言われたり…。

 

もう鼻血も出ない状況なのに、さらなる値引きを要求されたり…。

 

安価なパッケージ商品が台頭して、いままでの受託生産の仕事が急速に縮小してきたり…。

 

 

と、問題が表面化してからでないと、真剣に考えません。

 

自社がコントロールできない要素で、収益が決定されたり、投資が決定されたり、さらに言うと企業の存続が決定されていたりする場合、出来るだけ早いうちに手を打っておく必要があります。

つまり請負型ビジネスに比率が高く、他者に生存権が過度に委ねられている場合は、自社の新規開拓力が発揮できる「提案型ビジネスモデル」への転換を考えることが必要なのです。

取引条件が最悪になったり、取引先から最後通達を出されたとしても、スグに売り上げを作れるチカラさえあれば、怖いものはありません。

顧客の欲求と時代の流れを掌握しながら、自社の得意分野で戦える市場に投入できる商品やサービスを開発し、売れるカタチにパッケージ化していくチカラ。

 

そして、それを魅力的に市場に提案していくチカラを社内文化に落とし込む事が必要です。

 

取引先から「あんなもの作ってくれ。こんなものを作ってくれ…」と言われ続けるうちに、新しいものを生み出す能力やセンスは、どんどん削ぎ落とされていきます。

 

能力のあった人や組織でも、受け身の習慣を長く続けていると、恐ろしいほど創造的思考が弱体化していくものです。

 

いま、こんなモノがあったらお客さんはもっと便利になるのに。

いま、こんなモノがあったら社会はもっと良くなるのに。

 

そんなプロダクトアウト思考の提案力が必要なのです。

よく、プロダクトアウトというと、自己満足型の商品を思いあがきがちですが、そうではありません。

私がお話しているプロダクトアウト思考とは、理想の社会や生活(企業活動)を作る思考のことなのです。

 

先週のコラム「利益のあがる価格決定方式」でもお伝えしましたが、ある溶接機メーカーさんでは、50万円の市場相場のところ、工場における生産プロセスの改善という理想の企業活動を実現するための道具として位置づけ、1000万円単位の商品を提案し、前年対比3割以上の伸びを見せています。

 

市場相場価格が1万円前後の掃除機市場では、ダイソンの10万円前後する掃除機が、ダニなどを強力に吸収する、粉塵は拡散さない、紙パックを不要にする、家具を傷つけない操作性…など理想的な清掃環境を実現することで、10倍以上の価格差がありながらも飛ぶように売れています。

 

市場相場価格が数千円〜1万円前後のマットレス市場では、エアウィーブ社の高機能マットレスが、世界シェアNO.1のテンピュール社とは正反対の対抗軸を張って、7〜8万円と高額にも関わらず、飛ぶように売れています。

 

こんな商品があったら良いな…という、売れている高額商品は、すべて自社の固有技術を駆使しながら、人間の欲求を理解したプロダクトアウト思考の提案で市場にアプローチしています。

請負型ビジネスだと「こんな商品あったらいいな…」と付加価値をつけてもそれが「サービス」に化してしまい売価に転嫁させることに限界があります。
しかし、提案型ビジネスの場合、アイディアは価格に転嫁され、高付加価値のパッケージ商品として、販売することが出来ます。
つまり、高収益型ビジネスモデルは、提案型の方ががぜん実現しやすいのです。

 

御社がもし請負型ビジネスの売上比率が高い場合…

自社の未来は、自社のチカラで創造し、高収益企業になるための打ち手をじっくりと考えてみませんか?

 

※  4月24日(金)、文科省認可の「事業構想大学院大学」の研究プロジェクトのコーディネーターとして、請負型ビジネスから高収益メーカーになるためのメソッドをお話します。

ご興味のある方は、ぜひお越し下さい。
▼4月24日(金)15時〜17時 東京・表参道*無料*▼

http://www.mpd.ac.jp/seminar/1504240522.html