とことん「本質追求」コラム第166話 「売る努力」と「売れる環境づくり」の相違点

 

「今度、大事なプレゼンがあるのですが、トップ企業にブランド力があり過ぎて、正直何を打ち出せば良いかわかりません」

 

同社は、金沢のうどん製麺会社で、トップブランドの『氷見うどん』に太刀打ち出来る術がなかなか見つからないとのこと。

 

しかし、こういったご相談を聞くたびに大きな疑問が湧いてきます。

 

『お客様は、氷見うどんが食べたくて、食べたくて仕方なく購入しているのだろうか…』と。

 

決して氷見うどんの商品力を軽視しているわけではありませんが、私には積極的購買層のユーザーは多くても2〜3割ではないか展開という気がしてなりません。

 

その他大勢の購入者は、お土産屋さんで『何か無いかなーと探すなか、無難な選択をしている可能性は限りなく高いと感じるのです。

 

もちろん、これはあくまでも私的な仮説ですが、自社ブランドの成長戦略を練り上げるときには、このようなチャンスに繋がる仮説を深堀していくこと大切です。

 

例えば、大多数の人が『無難な選択消費』の結果、特定ブランドを選択していたとしたら『積極購買』したくなるようなコンセプトをもって、売り場で比較させる実験を試みるのも有効な一手です。

 

最も効果的なアプローチは、トップブランドとの明確な対抗軸を張ることです。

 

テンピュールという世界トップブランドの低反発マットレスに対して、高反発マットレスと真逆のコンセプトを持って、事業規模をたった4年で30倍にも飛躍させたエアウィーブ社が、明確なる対抗軸のお手本となります。

 

うどんであれば、太麺VS細麺。 コシの強さVS柔らかさ…などなど、対抗軸を洗い出し、そのなかでターゲット層が明確に見え、その人達が“欲しい!”と思えるようなコンセプトを打ち出すのです。

 

そして、そのコンセプトを持ってすれば、「トップに勝てるかも!」と確信を得たら、一切余計なことは考えず、まずは店頭に並べてみるのです。

 

そんな簡単に言わないでください。店頭においてもらうのが一苦労なのですから…と言われそうですが、無駄金を絞ればチャンスはいくらでもつくり出せます。

 

例えば…

エンドユーザーに広告を打つのを止め、流通サイドに『実験』と称して商品を無償提供(売れたら流通サイドが丸儲け)してみるのは有効な方法です。

 

この方が、効果測定の難しい広告よりも、仮説も検証しやすいです。

 

・POPなどで、どのようなコピーが響くのか?

・  どのような、見せ方が売れ行きに左右するのか?

 

など、一つの仮説検証が終われば、次々と課題やチャンスが浮き彫りになるので、次なる打ち手も明確になります。

 

流通サイドから見ても、限られた棚に売れない商品を置くより、確実に売れる商品を置きたいものです。

 

地代家賃に対し、売り場効率が上がれば上がるほど、利益がでるのですから当然です。

 

であれば、我が社のスタンスとしては「うどんを売る」という発想ではなく、「売場効率の上がるうどんを流通サイドに提供する」という発想にした方が、流通ウケはよくなります。

 

 

商品を売ることに焦点をあてるのではなく、流通が儲かることに焦点をあてるのです。

一見同じに見えますが、意識を徹底するのとで、行動レベルでは、全く違った結果になって現れます。

 

POPや陳列法で自社商品の回転率をあげることだけでなく…

“ついで購買”されやすい商品を隣におき、全体的な売上UPにつながる策を提案できるかも知れません。

また、置き場所によっては、商品を購入しないで出て行く客を減らす策を考えたりすることだって出来るかも知れません。

 

流通側が、まず儲けることに焦点をあてれば、自然と視野は広がっていきます。

 

結果「どうすれば全体の売場効率をあげることで自社商品をより多く買ってもらうことが出来るだろうか…」という姿勢になるので、店舗側だって協力的になります。

 

そして、そのテスト店舗において実際に売場効率があがれば、他の流通企業も黙ってみているハズがありません。

 

・ どの程度売場効率が上がったのか。

・ トップブランドとの売上格差はどの程度なのか。

・ 小売が最終的に受け取る利益にどの程度の格差が生じたのか。

 

などなど、データをしっかりと蓄積して、駅・空港、道の駅などお土産屋さんに営業をしていけば、横展開の成功確率があがるのはある意味当然です。

 

 

こういった売場からの営業目線の発想はとても大事です。

アタリマエの事ですが、お客様は、当社商品を知らなければ、購入してくれません。

 

駅や空港、道の駅などのお土産屋さんで、よく見る商品は「有名なのかな…」って錯覚し、ついついお土産として買ってしまうものです。

 

だからこそ、エンドユーザーに売り込むことに焦点を当てずに、流通サイドをいかに巻き込み売れる環境をつくっていくか…に焦点を当てる方が大切なのです。

 

テスト店を見つけ、協力を仰ぎ、試行錯誤の結果「売場効率」をあげていくような地道な活動は、一見遠回りに見えるかも知れません。

 

しかし、この地味な活動こそが、将来の営業活動をスムーズにしていきます。

 

商品を売り込むことだけから発想されたアイディアは、一時的には流通サイドに取り扱われるかも知れません。

しかし、ブームが過ぎたら、また蚊帳の外に放り出されます。

 

反対に、流通から支持されるような活動は、誠実さを失わない限り「信用力」は持続します。競合他社が来ても、そうそう簡単には浮気されません。

 

商品で二匹目のどじょうを狙うのは許されても、姿勢における二匹目のどじょうを狙う人達は、嫌悪感を抱かれるものだからです。

 

 

急がば回れ…。

商品を売り込むのではなく、売れる環境をつくりあげることが大切です。

 

 

業績のよい企業。

成績のよい営業マン。

 

いずれも、適切な仮説をもって、充分に準備を行い、しつこく・しつこく成功確度をあげていく努力を惜しまない人達が、成功の果実を手に入れています。

 

御社では、売り込むことよりも、売れる環境をつくることに焦点を当てていますか?