とことん「本質追求」コラム第171話 業績をあげる視点

 

「商談のチャンスだけ貰えれば、受注する自信はあるのですが…キッカケがないんですよ、キッカケが」

 

 

営業マンからの愚痴を聞く機会も多い中、何を寝ぼけたことを言っているのか…と呆れかえるときがあります。

 

誤解を恐れずにいえば、商談の場ができた…というのは、半分以上は成約したも同然です。

 

飛び込み営業でもテレアポでも、「商談の場」を作れる確率は、極めて低いもの。

テレアポなら、ガチャ切り。

飛び込みなら、門前払いが、大半を占めます。

 

商談のチャンスがあったら、苦労はありません。

商談のチャンスをつくり出すのが、営業マンの役目なのではないでしょうか?

 

と言っても、昔ながらの営業マンが、このチャンスをつくり出す状況が一変してしまったのも事実。

 

インターネットが定着したなか、世の中の潜在顧客はわざわざ営業マンとの商談に時間を割かなくても、情報はいくらでも入手できます。

 

また、携帯電話の普及によって、人間関係がクローズド化されてきているため、よそ者が入り込むことに不快を示す人も増えてきた感もあります。

 

人間関係は狭くしておいた方が、本能的にリスクが少ないと無意識に感じているのでしょう。

 

 

この環境変化によって、テレアポや飛び込みは著しく効率が悪くなりました。

なので、愚痴がでるのもある意味仕方のないことなのかも知れません。

 

それでも、無策のまま時を過ごせば、指を加えて待っている人件費が、垂れ流しになるのが組織というものです。

 

「いえいえ、営業部はやることが沢山あって多忙を極めています。人件費の垂れ流しなんてことはありません。やることが沢山あって商談を発掘している場合ではないのです」

 

と言われそうですが、これにも疑問が残ります。

 

「仕事の量は、完成のために与えられた時間をすべて満たすまで膨張する」という法則を導き出したイギリスの歴史学者パーキンソン氏は、こうして指摘しました。

 

「官僚制内部の総職員数は、なすべき仕事の量の増減に関係なく、毎年5-7%増加した」と。

 

民間企業は、それほど多くはないにせよ、大抵の組織でもムダな仕事があります。

というより、これからの時代は、作業だけの仕事…つまり考えない仕事は、わざわざ高い人件費をかけずとも、いくらで仕事が回せる時代になっているのです。

 

クライアント企業さんの優秀な営業マンが「今、営業マンを雇うよりも、SFAなどに投資をして仕事を効率化したい」と話していましたが、全くその通りです。

 

一人一人の生産性をあげ、余白を作り、その余白に営業活動の最大需要要素である「商談の場づくり」に時間と金を投下する決断がいま多くの会社で求められています。

 

営業マン一人一人が、月間で発掘する新規商談を目標設定しても良いでしょう。

テレアポや飛び込みの顧客開拓効率が著しく悪くなった…

と言っても、工夫次第でまだまだ能率をあげることは出来ます。

 

テレアポの前にDMを送付する。

飛び込みのゴールをWEBサイトの誘導に注力する。

 

など、反応をあげる工夫の余地はまだあるはずです。

 

また、生産性をあげることで営業部員から人材を取り出し、「集客専門担当者」をつくり出す事も有効です。

 

集客担当者は、営業マンに商談を送り出す役目に特化させます。

 

・  ホームページからの集客
・  展示会集客
・  ダイレクトメール
・  広告
・  セミナー開催

など、様々な集客方法がありますが、どれ一つとっても、営業部の片手間仕事で出来るものはなく、相当のノウハウと改善活動が必要となります。

 

ホームページであれば

「集客するためのキーワード選定」

「対象キーワードの露出方法」

「ホームページのコンバージョンチェクと改善」

※コンバージョンとは、総閲覧者÷購入者(資料請求者)など、ホームページの質をチェックする一指標

「投資効率のチェックと改善」

 

など、日常業務だけでもかなりの業務量になります。

 

 

ダイレクトメールひとつとっても、

「チラシの質的改善」

「送付先リストの鮮度維持向上」

「反応率チェックと改善」

「ゴール(資料請求、ホームページ誘導など)設定の工夫と改善」

 

など、真剣に反応を出そうと思うとやることは“てんこ盛り”です。

このような「考える仕事」が、組織の中心軸になければなりません。

 

これらの仕事は、営業活動の片手間でやると、考えずに作業として処理されてしまうので、結果に結びつきにくいのです。

 

また、先日とあるセミナーで「クラウドソーシング」という仕組みを使って新規顧客発掘、営業リストの作成を行っている企業があると聞きました。

 

クラウドソーシングとは、不特定多数の人の寄与を募り、必要とするサービス、アイデア、またはコンテンツを作ってもらうサービスです。

 

例えば、チラシを作るのに下書き原稿だけを書いて、「だれかデザインして!」クラウドソーシングに情報を投稿すると、複数のクリエイターからデザインアイディアを得る事ができたり、「だれか新商品のネーミングを考えて!」とコピーライターを募ったりできるサービスです。

 

藤冨もこのサービスをかなり活用させてもらっていて、仕事の能率上げながら、アウトプットの質を高めています。

 

この仕組みを使って、看板社さんが営業活動に使っているというのですから驚きました。

 

その看板屋さんが「壊れた看板を教えて! 教えてくれた人には1件●円差し上げます!」という募集を出したそうです。

 

勘の良い方は、もうお気づきの通りです。

 

有望なアプローチ先が、激安かつ短期間でリスト化できたということになります。

 

ドラッカーが「将来の幹部候補となるような職種以外は、すべて外部化される」と何かの本で書いていた記憶がありますが、まさにそれが現実化しそうな時代になりました。

 

社内の人間は、いかに自社の業績をあげるか?

を考える人材でなければ、クラウドソーシングに集っている有能なクリエイターや作業者に、取って変わられてしまいます。

 

自社の商品・サービス品質を如何にあげるか?

と考える人材でなければ、クラウドソーシングに集っている有能は技術者に取って代わられてしまいます。

 

経営者から見れば、固定費化する人材の質的要件と、変動費化できる人材を棚卸しして、会社を筋肉質に強化することができる環境が整ったと言う見方もできます。

 

政府では、成長戦略の一環として「労働雇用改革」をすすめ、労働時間と賃金を切りはなし「成果」のみに規制される賃金制度を導入しようとしています。

 

しかし、そんな雇用改革を待たずして、すでにそれを実現できる環境は出来上がっています。

 

このような視点から眺めると、営業マンの役割ももう一度見つめ直すときがきています。

 

業績をあげるために、営業マンは何をすべきか。

御社の営業マンは、その根源的な質問への回答をスパッと答えられるでしょうか?