とことん「本質追求」コラム第181話 事業の衰退原因は視野狭窄?

 

自社の強みを「俯瞰(ふかん)」するとありますが、俯瞰してみるのは難しいと思います。何かコツはありますか?

 

 

10月28日に開催した「波及営業戦略の実践法セミナー」で参加頂いた方から頂いた質問です。

 

前回のコラムに書いた「鉄道会社VSタイムズ24」の競争構造でお伝えした事とリンクをしているのですが、そもそもお客様は何を買っているのか?という効用の視点でみないと、自社の強みをはき違え、誤った事業方針を見立てしまいます。

 

この効用という視点で捉えることこそが、自社の強みを俯瞰してみる最大のポイントとなります。

具体的な発想法については、後半に譲りますが、まずは、なぜ「効用」という視点が大切なのかーという話から始めたいと思います。

 

マーケティングの教科書に「アメリカの鉄道会社はなぜ衰退したのか?」という話がよく登場します。

 

近視眼的マーケティングという論文で発表されたもので「自動車や航空機の発展によって衰退へと追いやられた鉄道会社は、自社の事業を〈輸送〉や〈移動〉とは捉えずに、視野狭窄(しやきょうさく)に陥っていたのが原因である…」といったものでした。

 

つまり鉄道会社の経営陣は、お客様の効用という視点が抜け落ちていた という事です。

 

鉄道会社が提供する効用とは、いったんなんでしょうか?

決して1つではなく、複数存在するはずです。

 

「分かる」とは、「分ける」こと。という名言がありますが、まさに自社の強みを知る為には、お客様から見た時の「効用」を分けて考える事が大切です。

 

鉄道会社が提供している機能は、「輸送」や「移動」です。

 

よく捉え違えてしまいがちですが、機能と効用は別物です。

 

例えば 自宅から会社までの「移動」をするために、お客様は「自宅近くのA駅から会社近くのB駅」まで、移動できる「機能」をもった鉄道というサービスに対価を支払います。

 

しかし、お客様の視点からいくと、A駅からB駅に移動したいわけではありません。

自宅から会社に移動したいのです。

 

より速く、正確に、しかも楽に移動したい。

この速く、正確に、楽に…が「効用」になります。

 

例えば、鉄道と自動車では、どちらが「速く」「楽に」という効用を満たせるでしょうか?

 

自宅からA駅までは、徒歩で30分かかり、B駅から会社までは徒歩10分。

いくらA駅からB駅までは速く移動できても、ドアツードアの移動時間が自動車よりも遅ければ、鉄道会社の優位性はありません。

しかも自動車なら歩かなくて済むから「楽チン」です。

 

前回のコラムでも書いたように、Googleとタイムズ24が事業提携をして、カーシェアの仕組みを活かしながらGoogleが提供する自動運転自動車が走る世界が実現されれば、タイムズの駐車場が「駅」と同じ機能を果たすことになります。

 

日本の鉄道会社は、この構図をどう捉え、どう対策を打ってでるのか …とても興味深くみています。

 

新宿駅が改装され、屋上に巨大なバスターミナルを建設していますが、もしかしたら、この構図を先取りした伏線かも知れません。

 

鉄道の駅のなかに、さらに自動運転車の駅を建設する…。

 

効用という視点から見た時には、このような視点と発想が必要となります。

 

 

また、より速く、正確に…という効用を提供するのは「鉄道会社」と「飛行機」、どちらに優位性があるのでしょうか?

 

日本の24倍の国土面積のあるアメリカでは、より航空機の方に優位性があるのは、誰でもカンタンにイメージできるはずです。

 

では、どうやっても「航空機には勝てないのか?」というと、そんなことはありません。

 

「効用」をより細かく分けて、自社が有利に戦えそうな土俵を発見するのです。

 

人が移動している最中をイメージすれば、満たされていない「効用」は、まだまだ発見できます。

 

つまり、お客様の行動を観察して、不満、不安、不都合などの「負」に着目したり、満たされていないであろう「満足」に焦点を当ててみるのです。

 

これこそが、自社の強みを俯瞰してみる発想のコツです。

 

最近ではJALが機内でもWi-Fiを利用できるようにしていますが、つい1年前までは、機内ではほとんど仕事ができませんでした。

 

ところが、新幹線であれば移動時間中もフルに仕事ができます。

 

多忙なビジネスマンにとっては、残業を少しでも減らすには、移動時間も隙間無く仕事をしたい…という欲求があります。

 

そう考えると、単なる移動手段として捉えるのではなく、「動くオフィス環境」という視点を取り入れたら、車内はどうあるべきか…は、まだまだ工夫の余地があることに気づかされるはずです。

 

コピー機やプリンターサービスがあっても良いかも知れませんし、電話がガンガンできる個室化も考えられます。

 

多忙なビジネスマンに「快適な仕事時間を提供する」という効用を「移動空間」にくっつけるのです。

 

移動という機能に紐づく「速く」「正確に」「楽に」…という効用に着目する。

さらに、なぜ「速く」を求めるのか?

なぜ「正確さ」を求めるのか?

なぜ「楽」を求めるのか?

 

そもそも論を問いただす「なぜそれを求めるのか?」と思考を深めていけば、速さは、「他のことに時間を使いたい」という欲求に紐づいていることがわかってきます。

 

では、他の事ってなに?
と、さらに思考を深めていく。 

すると、自然と俯瞰してモノゴトが観察できるようになり、発想も広がっていくのです。

 

これは事業戦略の発想にも使えますし、営業マンが「どう提案するか?」という現場レベルでも使える視点です。

 

社長の事業方針の決定から、現場の提案スキルの向上まで、自社の提供する効用を俯瞰して捉え、よりよくお客様の欲求を満たしていくことは、事業を成長させていくうえでとても大切な視点です。

 

御社では、自社の提供する商品やサービスを「効用」という視点で語れるよう社内で徹底化されていまでしょうか?