とことん「本質追求」コラム第183話 閉塞感を打開する2つの手続きとは

 

 

お恥ずかしい話ですが、いま全社員が閉塞感の中にいます。

どうやって打開すれば良いのか……悩みに悩んでいます。

 

 

そうお話をされていた、とある企業の会長さんは、2時間後には霧が晴れたような清々しいお顔で、お見送して頂きました。

 

閉塞感を打開するのは、決してカンタンではなりませんが、手続き自体は極めてシンプルです。

 

そもそも閉塞感とは、閉じて塞がれた状態であり、言い換えれば「先行きが見えない不安な状態でありながら、どのような手を打てば良いのか分からない状況」から生まれてきます。

 

面倒臭いことに、こうした状況は社員のメンタルを蝕み、能力のある社員は、他で活路を見いだし、能力のない社員は他にいくところがなく、思考停止状態のまま給料だけ吸い取っていきます。

 

これでは、閉塞感に包まれたまま企業の活力は、日に日に削ぎ落とされていってしまいます。

 

従って、「先行きが見えない不安な状態」を無理矢理でも「見える状態」にすることが大切です。

 

未来を確証する対策など、ありえませんから、多少乱暴な仮説でもかまいません。

とにかく、歩きだすことが大事です。

 

ただ、組織を引っ張る「長」であるがゆえに、確証のない方向性に進む不安が芽生えることはムリもありません。

 

そんなときは「2つの手続き」を進めることが有効です。

 

 

まず1つ目は、「棚卸し」をしてみるのです。

自社の持っている技術、商品特性、サービス項目などをすべてテーブルに上に並べてみます。

そこから「機能や性能」を抽出して、その各項毎に顧客からの評価、競合他社との比較、顧客視点からのベネフィットを明文化していくのです。

 

サラッと言ってしまうと、その重要性を感じ取れないと思うので、もう一度整理します。

 

ある「機能」が、お客様からどう「評価」され、顧客にどのような「利便性」や「満足」(ベネフィット)を与えているか…。

それは、競合他社よりも、より良く満たしているのか…。

 

を明文化してみるのです。

 

これが「強み」と言われるものです。

 

強みを浮き彫りにするために「棚卸し」を実施し、自社商品の良さを再認識することで、自信が取り戻せます。

 

これは精神論だけではありません。

 

既存の市場において閉塞感が見られる場合でも、強みが明確になっていれば「●●市場にも横展開できるかも…」という仮説が自然と浮き彫りになったりします。

 

この手続きを踏む事で、海外商品の流入で薄利多売となっていた商品をまったく別市場に売り込んで、利益体質を強化した事例は、一つや二つではありません。

 

強みが明らかになると、他の市場にも貢献できそうだ…という発見が自然と出来るようになるのです。

 

 

二つ目は、視点を変えることです。

目線を高くして俯瞰(ふかん)したり、横からの視点で捉え直してみることが有効です。

 

先日、農機具の販売をしている社長さんが、高齢化した農家に新規の農機具を販売するのはキツくなった…とお話されていました。

 

高齢化のみならず、外国産の農作物が安価に市場に出回る可能性が高いTPPの影響を考えると「一次産業(農家)」は、構造的に衰退していくことが容易に想像できます。

 

その構造的に衰退していく産業を相手に商売をするということは、誰が見ても茨(いばら)の道です。

 

現実、飛込み営業をイメージしても断り文句が目に見えます。

 

「もう私たちは年だから、新しい農機具なんて必要ないよ」と。

 

 

しかし、視点を変えて、売るではなく、買うと発想の逆転をしてみたらどうでしょう?

 

 

実際、新潟で急成長している農機具の買取企業があります。

買い取った農機具は、旺盛な需要がある東南アジアに輸出しているので、買えば売れる状態のようです。

 

詳しくは、モデル分析をする必要がありますが、そのお話をすると、確かに買い取ったら、輸出用商品として確実に売れる状態であることは、お話した社長もご存知でした。

 

クルマ買取の「ガリバー社」があれだけの企業になっているのですよ…とお伝えしたら、さらに目つきが変わっていきます。

 

ちょっとイメージしてみてください。

 

 

「もう私たちは年だから、新しい農機具なんて必要ないよ」という心理になっている高齢の農家さんに、

「おじいちゃん、良かったら農機具を買い取るよ」と営業に回ったらどうでしょう?

 

と、伝えると「それは歓迎されるかも…」と、笑みがこぼれてきました。

 

誰だって、怪訝な顔をされる営業活動よりも、歓迎される営業活動の方がヤル気はでます。

 

売上だって、それに比例するように伸びるのは火を見るより明らかです。

 

購買力も、購買の必要性も薄い人に、売らざるを得ないビジネスモデルでいる以上、閉塞感に包まれても不思議ではありません。

 

でも、視点を変えれば、見える世界も変わってきます。

 

 

自社の強みが浮き彫りになるような「棚卸し」を実施すること。

自社のビジネスモデルをあらゆる「視点」で見つめ直すこと。

 

この2つの手続きを踏むことで、見えなかった未来が、見えるようになり、的確な打ち手を創造して行く土台となります。

 

藤冨の武器である「波及営業」も、この最初の1歩がないと始まりません。

営業を設計する技術とは、自社の強みをムリ無く市場の欲求に紐づけていく作業なので、売り込むまえの準備が大切なのです。

 

 

冒頭の会長さんにも、このままのお話をすると「ウチには、閉塞感を打開する手続きがなかったのですね。腑に落ちました。」と笑顔を取り戻されていました。

 

 

御社では、閉塞感に包まれた際の有効な「手続き」…事前に用意していますでしょうか?