とことん「本質追求」コラム第207話 新しい取り組みを拒む「社員の多忙病」の克服法

 

 

 

「競合が参入してきたいので、このままだと持って3年。それ以降は確実に収益性が下がります。何とか新しい取り組みを始めたいのですが…みな多忙で任せる人がいないのです」

 

先日、一緒にプロジェクトを始めようとされている社長さんが、ポツリと言った一言。

 

どなたか担当をつけてください…という私からの依頼に、頭を抱えていらっしゃいました。

 

でも、本当に社員全員が、寸分の余裕もなく忙しいのでしょうか?

内情も知らないのに無責任なことは言えませんが、大反論を覚悟で申し上げると、寸分の余裕もないほど多忙な社員はいないのではないでしょうか。

 

忙しいという単語で、やらない言い訳をしているに過ぎないのでは? そう感じることが多々あるからです。

 

こんな事をいうと「私は本当に忙しいだ!」とムキになって激高される方もいますが、様々な企業でのプロジェクト経験から言うと断言できることがあります。

 

寸分の隙間時間もなく忙しい!

のではなく、

段取りが分からない仕事に取り組むための「考える時間」がないほど忙しい。

が正解なハズです。

 

実際、プロジェクト会議で「それは良い案だ!すぐさまやるべきだ!!」と盛り上がっても「だれが、いつまでに、どのようにやりますか? 担当を分けて考えましょう」と私が話を進めようとすると、いきなり下を向いて口を閉ざしてしまうケースが意外にも多い。これが現実です。

 

そして、二言目には「いや、私は本当に忙しくて…」と言いながら、ランチに出掛けると世間話に花が咲いたりしている…。

 

あれ?忙しいって言わなかったっけ? と、無性に腹立たしく感じたことは、一度や二度ではありません。

 

余りにも頭にきた時には、「ランチは仕事があるので、1時間後に会議室に戻ります」と伝え、会食を拒否。

そのままカフェでプロジェクトを具現化して、コンビ二で印刷をしてミーティングに戻ったこともあります。

 

「どうだ!」と見せつけているようで、コチラも嫌な気持ちになりますが、結果を出せないのは、私にとっては不本意極まりないこと。

致し方なく、2〜3度このような経験をしたことがありました。

 

こんなことを経験するうちに、根源はみな一緒…と感じるようになり、新たな対策を考えるようになりました。

 

「新しく何かをやるときには、段取りを可視化するためのディスカッションを織り込むと良いのでは?」と。

 

実際、何か新しいことを始めるときには「何から、どうやって手を付けていくか」を瞬時に判断できる人は、ほとんどいません。
 
しかし、それが分かっていないと、無能扱いされる空気が、日本の会社にあるのも事実です。

 

会議室という閉ざされた空間には、その空気を充満させるチカラがあります。

 

 

であれば、分かっていないのがアタリマエ!という空気をつくり出し、遊び感覚で具体的なステップをその場で考えてしまえば良いのでは?!

 

と、逆転の発想で取り組んでみたところ、停滞していたプロジェクトがいきなり動き始めた現実を目の当たりにしたときに、私自身の考え方も改まりました。

 

「誰が、いつまでに、どうやるか?」という問いからスタートするのではなく、「どうやってやったら、構想が最も上手く立ち上がるのか?」を議論した上で、具体的な段取りと作業を見積もり、その上で、だれが出来るのか?を議論する。
 
これが成功の秘訣だと。

 

これは構造的に考えてみれば、アタリマエのことでした。

 

私自身も振り返ってみると、取り組みが遅れる仕事というのは、段取りがスパッとわからない仕事ばかりです。

また、膨大に時間が取られるかも知れない…という仕事は、どうしても遅れ遅れになっています。

 

ところが、手掛けてみて意外にも簡単だったり、予想外にもアッという間に終わってしまい拍子抜けしたことは山ほどあります。

 

人は、新しい取り組みには多くを見積もり、これなれた仕事は少なく見積もる傾向がある。

 

これは、自分自身を振り返っても、他者を観察していても、間違いなく断言できる現実です。

 

段取り8分に、仕事2分と言われるように、大抵のボトルネックは「段取り」にあります。

 

ここのボトルネックを外してしまえば、ほとんどのケースで、ゴロッと新しい取り組みが動き出します。

 

それに、いまの時代、段取りと具体的な作業の洗い出しさえ出来れば、仕事は終わったもの同然です。

 

と言うのも、明確なった作業であれば、必要な時に、必要な作業だけを発注できる「クラウドソーシング」などの便利な仕組みもあります。

 

実際、私がご一緒するプロジェクトでも、ほとんどのケースで「クラウドワークス」を利用してプロジェクトを動かす体験をしてもらっています。

 

この体感をした社長がまず口にするのは

「これから社員に求める資質が変わるね…」ということ。

 

構想は良いけど、いつも具体化しない…。

こういった現実が日常化しているときには、具体的な段取りを全てイメージでいる司会者を立て、“どうやったら、構想が最も上手くいくか?”を考える場を強制的につくることが、構想を具現化する最良の手立てとなります。

 

 

御社では、思い立った「良案」が、多忙を言い訳にゴミ箱に捨てられていませんか?