とことん「本質追求」コラム第231話 社員が育つ「環境づくり」は戦略のなかにある。

 

 

「営業戦略を立てる上で、市場を絞る真意が良く分かりました。当社では、商品グレードによって販売先が異なりますが…、社員を育てるには、会社のあり方から考えないといけませんね」

 

以前、セミナーにご参加を頂き、プロジェクトを一緒にやりましょう! とお声がけを頂いた会社から最初に受けた言葉です。

 

どの市場を狙うか…を決めることは、自社の企業体質や文化、さらには定着する社員のタイプまで影響してしまいます。という藤冨の考察に共感して頂き「真剣に考えなければ…」と思って頂いたようです。

 

以前、だれから聞いたか失念しましたが、自分の時間を一番長く共有している友人や仲間5名を選び、その人達の年収を平均した額が、自分の年収になる…という話がありました。

 

なるほど確かにそうだ!

と実感し、事ある毎にこの話をすると、大多数の人が頷いています。

 

「朱に交われば赤くなる」と言う諺があるように、人は、環境に調和していきます。

これは、企業も同じだと思うのです。

 

企業は、法人と言われる通りに、生物学的には「人」ではありませんが、法律的には「人」とされています。

その言葉通り、サラリーマン時代から数えると少なく見積もっても100社以上の会社と関与してきましたが、確かに法人は「人格」をもったように個性が存在しています。

 

その個性が育まれる起因となるものが「企業を取り巻く環境」

つまり、自社の顧客や社員、取引先など、“だれと時間を共有しているか”が企業文化を育み、会社の個性を創り上げているのだと確信をもつようになりました。

 

冒頭の社長さんが、おっしゃった印象的な言葉があります。

 

「ウチの社員は、モノを考えないのですよ。今まで散々“研修”に出して来たけど、まったくの無意味。ヌカに釘を打つ努力ばかりをして、利益をドブに捨ててきたようなものです…」と。

 

そして弊社セミナーでの気づきを得た瞬間…

 

「私が決めた戦略で、客層が決まり、競合も、サプライヤーも、定着する社員までもが決まるのですね。社員の成長を研修に期待して、会社を変えられないか…と願っていました。でも、それは大きな勘違いでした。環境は私が変える!という意思が会社の文化と成長基盤を作るのですよね」と。

 

まさに!です。

 

富裕層を対象にしたレストランを経営しようと思えば、それに相応しい社員が集まってきます。そうでない社員は居づらくなります。取引先(サプライヤー)も当然変わってきますから、入ってくる情報の質も変わっていきます。

競り合う競合も変わりますから、ウォッチする視点も調査も変わるので、経営陣や社員の行動パターンも変わっていきます。

 

そう、対象市場を決定すると、企業の内部環境までもが必然的に変わってしまうのです。

 

経営者の戦略的意思決定が、自社の企業体質を決定している。

 

これが揺るぎない現実だと理解できるのではないでしょうか。

 

社員が変われば、会社が変わる?

処遇を変えれば、会社が変わる?

 

確かに一理はあるかも知れませんが、それは本質論ではありません。

 

会社の戦略を実行するために、成功する条件を整えたり、努力した人を正当に評価する制度は必要です。

 

タスクをこなすスキルを身につける訓練であったり、人事考課制度を入れることは、大切なことです。

 

しかし、それは目的を遂行するための手段であるはずです。

 

手段が目的化した取り組みは、結果的に「ヌカに釘を打つ努力」に終わりかねません。

 

経営の目的を達成するためには、どのような商品を、誰に売って、どのような市場ポジションを確立するのか…の上位意思決定が“ありき”なのです。

 

これが、すべての企業環境に影響を及ぼしてしまう「極めて重要な戦略的意思決定」になるからです。

 

ウチの会社にはモノを考える社員が少ない…とおっしゃっていた社長は、受託生産型の下請け的な会社経営をしていました。

 

言われたことをそのまま実行することが求められる会社では、モノを考える文化が育まれにくいのは、ある種自然なことです。

 

会社の戦略的決定が、社員の質を決めていたのです。

 

同社は、自社商品を作り、独自の販売努力で、売上を立てる努力を奮闘し、成果が出つつあります。そうしたなか、社員が少しずつ考えて行動するようになってきた…と、社長は感慨深く話をしてくれました。

 

これは、とても自然なことです。

 

「主君と奴隷」の関係から、「売り手と買い手」の関係になったためです。

 

売り手は、買い手がいないと、飯が喰えません。

 

飯を食う為には、買い手が満足する要素を考え出し、実行していく必要があります。

 

考えさせるのではなく、考えざるを得ない環境が、社員を育てたのです。

 

繰り返しますが、会社として「どのような商品を、誰に売って、どのような市場ポジションを確立するのか」という戦略的意思決定が、会社の体質を決定します。

 

社内の空気は、すべて会社の戦略が強く影響しているのです。

 

「ウチの社員は、自主性が足りない」

「ウチの社員は、行動力がない」

 

と思われたら、まずは環境がそうさせていないか…。

じっくりと内省する必要があるのではないでしょうか。

 

御社での戦略的意思決定は、社内文化や会社の体質にどのような影響を及ぼしていますか?