とことん「本質追求」コラム第233話 売れるセールスメッセージの見つけ方

 

 

「このビールグラスを藤冨さんなら、どう売りますか?」

 

先週、経営者の集いの場で、乾杯直後に唐突に質問されました。

 

飲み会が始まる前に、「営業実践報告会のアドバイザー」として発表された社長さんにコメントをしていたので、それを聞いていた他の方が不思議に思われたのでしょう。

 

「なぜ業界も商品も知らないのに、売れる・売れないの助言が出来るのか?」と。

 

ご質問をされた方は、純粋に興味本位で聞かれていましたが、時々、講演会終了後の懇親会で、挑戦的な質問をされる方もいるので、こういった突然のフリには慣れっこです。

 

皆さんなら、どうでしょう。

なんの変哲もない「ビールグラス」をどう売るか?

 

このとき、すぐに売り方を考えても、売れるアプローチには繋がりません。

 

ネットがいいですよ!とか。

居酒屋にFAXDMを打ちましょうとか…。

 

などなど、手段を考えるよりも、先に抑えないといけないことがあります。

 

それは、「この商品は、誰にとって、どんな貢献をするのか?」というセールスメッセージを作る根幹を見極めることです。

 

例えば、ビールグラスなら、「なぜ、取っ手が付いているのか?」「なぜ、この厚みが必要なのか?」「なぜ、底に“くぼみ”があるのか?」 構造や機能を一つずつ丁寧に拾い上げ「なぜ?」を繰り返していきます。

 

 

これは、構造や機能の「制作意図」を掘り下げるためです。

 

その「制作意図」には、こうした方がより良くなる!…という企画・開発者の想いが詰め込まれています。

 

その想いとは、貢献意識。

つまり「顧客メリット」の想定です。

 

取っ手が付いているのは「ビール」を温めない配慮だと想定できます。

厚みがあるのは、洗っている最中に割れて怪我をさせない配慮かも知れません。

底に“くぼみ”があるのも、熱伝導率を抑え温めない配慮でしょう。

 

ここで気づくのは、登場人物は2名いるということ。

 

つまり、ビールジョッキを使う人と提供する人です。

 

お金を払うのは、提供する人です。

冷えたビールを美味しく飲んでもらいたい飲食店経営者です。

 

冷えたビールを美味しく飲んでくれれば、リピーターになってくれるかも知れません。

 

そう考えると、ビールジョッキを購入するメリットは、極論すれば、「飲食店オーナー側に立った際の顧客満足の獲得」だということが見えてきます。

 

ならば、「ビールジョッキそのものを売る」のではなく、「冷え冷えのビールを美味しく飲める…しかも割れにくいジョッキ」を売ることに着眼したセールスアプローチをすることが、メッセージを作り込む「根幹」になくてはなりません。

 

思考を煮詰めて、煮詰めて、煮詰めまくって、最後に残ったものが、パンチ力の強いセールスメッセージになります。

 

こういった思考回路は、営業だけでなく、商品をつくるときにも必要不可欠です。

 

先日の「営業実践報告会」でも、もっと売れる商品に仕上げるためのリニューアル案を聞かせてもらいましたが、「顧客メリット」に直結しない要素を付加されていました。

 

でも、このアプローチだと足し算にしかなりません。

 

足したものが魅力的であれば、それを気に入った人は購買するかも知れません。

 

しかし、お客様がお金を払う瞬間から逆算していけば、もっと本来の顧客メリットを追求した要素を付加していった方が、かけ算でお客様の心を揺らすことができます。

 

分かりやすい例として、インスタントのカフェオレを題材にしてみましょう。

 

最近は、ダイエット志向の人口が増えてきているので、砂糖ではなく「太らない新しい甘味料」を使っているのが、その商品の特徴です。

 

でも売れ行きは芳しくありません。

なので、パッケージにキャラクターを印刷して販売することにしました。

 

どうでしょう?

キャラクターが気に入った人は購入するかも知れませんが、そうでない人はより購入しなくなる可能性もあります。

 

それに元々のコンセプトは、太りにくいカフェオレです。

 

であれば、牛乳ではなく「豆乳を粉末にして入れました」と謳った方が、顧客のメリットの延長線上にあるため、購買意欲が増幅していくはずです。

 

太らない甘味料+キャラクター=答えはなに? ってなります。

 

でも、

 

太らない甘味料+豆乳=よりダイエット効果の高い飲料 になります。

 

太らないという顧客メリットがかけ算で効いてきます。

 

こういう「切り口」を作り、磨き上げていくことが、売上増に直結する一番のポイントとなります。

 

私が様々な業界や商品と向き合うときには、必ずこの「顧客メリット」を徹底して煮詰めていく質問を繰り返します。

 

業界の中にどっぷりと浸かっていると、習慣となっているアタリマエのことは、深く考えず、煮詰める作業をしなくなります。

 

私が「なぜ、それはそうなっているのですか?」と質問すると、パッと答えが出てくるケースは少なく、「アタリマエのことだから深く考えたこともない」ということが本当に多いのです。

 

灯台下暗し。

 

売れるヒントは、必ず「足もと」に転がっているもの。

 

御社では、自社商品の「顧客メリットの追求」を徹底して煮詰めていますでしょうか?