とことん「本質追求」コラム第283話 やってはいけない新規事業のプロジェクトづくり

 

 

 

「下請け稼業から脱却して、我が社も自社ブランド商品を作ろうと思い、新商品企画チームを編成しました! プロジェクトに入っていただけないでしょうか?」

 

 

9月に開催したセミナーにご参加いただいた企業の役員さんから打診された案件。

 

しかし、新商品のアイディアもない状態だったので、残念ながら丁重にお断りをさせていただきました。

 

「えっ? 御社のホームページに新規事業を一から立ち上げたケースもあったじゃないですか?」と言われたので、お断りさせてもらう真意をお伝えしました。

 

真の理由は、最高意思決定者がプロジェクトに参加しない…と言われたからです。

 

弊社ホームページでご紹介している新規事業をお手伝いさせていただいたケースは、最高意思決定者である社長も参加され、強いリーダーシップのもとにプロジェクトチームが編成されました。

 

「今、新規事業を立ち上げないと、将来のリスクに対処できなくなる…」という強い危機認識もあったために、藤冨は「この会社なら新規事業は立ち上がる!」と確信を持ちました。

 

覚悟の決まったプロジェクトほど、必死で考え、必死で行動し、必死で成し遂げようとしますから、当然のごとく成功確率は高まります。

 

私自身も、追い込まれた空気感に投げ込まれた方が、アドネラリンが分泌し、燃えてきますから、必然的に良いプロジェクトになります。

 

もちろん、そんな感覚的、感情的な理由だけではありません。

 

一言で言うと、革新を起こすための「新規事業」でボトムアップはあり得ないからです。

 

優秀な人材が豊富で、資金力もあり、様々な相乗効果が働きやすい大企業ならまだしも、中小企業で、「みんなで考えて、みんなで作ろう!」なんて、仲良しクラブ的なボトムアップでは、極めて高い確率で失敗します。

 

既存商品のリニューアルや、コモディティ商品分野での新商品企画なら、ボトムアップでも構いません。

 

競合がひしめき合い、差別化競争をしている中においては、多くの情報を集め、その中で「今、顧客が感じている不便、不満、不愉快」を机の上に並べ、そこから差別化アイディアで出すためには「たくさんの頭脳」があった方が、儲かる企画が立てやすくなるからです。

 

漏れなく、重複することなく、市場から不便、不満、不愉快の情報を得られれば、自ずと「こんな商品があればいいのに!」というアイディアは出てきます。

 

しかし、新規事業の立ち上げや新しい価値を市場に問う新商品の企画開発は、リニューアルとは異なります。

 

 

無を有にするためには、混沌とした世界からヒントを手繰り寄せ、自らの事業分野に転換させていく「革新的な発想」が必要になります。

 

こんなことを言うと怒られるかも知れませんが、残念ながらお給料をもらって働いた方が安全という「保守的な発想」で日々を活動しているタイプの人には、真逆の発想である「革新的な発想」が出るはずもありません。

 

 

これは、商品のライフサイクルにおいて、最初に革新的な商品を採用する「イノベーター」や「アーリーアダプター」の概念を引用していくと理解できると思います。

 

ビジネスをしているだけで、遊びと同じくらい興奮する人種は、革新的な発想を採用(着想)する器を持っています。

 

しかし、ビジネスを受け身で捉えている人たちは、冒険を怖がります。前例がないと、前に進めません。

当然ながら、革新的な発想が頭に浮かんだとしても、発言することなくスグに発想を消去してしまいます。

 

これは2:8の法則(パレートの法則)を世に広めたイタリアの社会学者のパレート氏の学説からも「2対8で人種が分かれている」ことが明らかになっています。

 

 

そんな保守的なメンバーだけでプロジェクトを組んだら…

「新規事業のアイディア」すら出ないのは、想像に難くありません。

百歩譲って、秀逸な「新規事業アイディア」が出たとしても、事業プランに昇華させるプロセスで腰折れになってしまうでしょう。

 

 

誤解しないでいただきたいのは、保守派は不要と言っているのではありません。

 

逆にプロジェクトメンバーに1人か2人は参加してもらい、ブレーキ役となってもらうのは悪くはありません。

 

リスクヘッジのアイディアの源泉になったり、第3の道を考える元になったりするためです。

 

これまで新規事業のプロジェクトは何度も立ち会ってきましたが、チームメンバーはバランスが大事です。

 

 

斬新な着想。

奇想天外な視点。

そして、消極的な意見。

 

混沌とした情報から、いつも突破口は見えてきます。

その中で、「これだ!」という道は、多くの場合「たったの一つ」しかありません。

 

もちろん、満場一致で『これだ!』と言うアイディアなどはありません。

革新者だけが賛同することがほとんどです。

 

だからこそ、その場に意思決定者がいることが何よりも重要なのです。

 

御社では新規事業プロジェクトを社員任せにしていないでしょうか?