とことん「本質追求」コラム第380話 営業効率を引き上げる「顧客の見える化」とは。

 

 

 

「機能や性能をいくら訴えても、相手にその商品を使うメリットが理解できなければ、受注には繋がらない。というのは、ごもっとも。でも正直言ってそのメリット”がからないのです」

 

 

先日、産業系メーカーの社長とお話をした際、先週のコラム「第379話 営業と商品開発の共通点」を深掘りするようなご相談を頂きました。

 

産業系メーカーにはくある事ですが、自社商品が顧客にどのように使われているのか分からないケースがあります。

 

我が社の製品が、どのような利用場面で活用され、どのようなメリットを生み出しているのか。

 

顧客側が、一部上場企業の最先端技術を開発している場合など、相手先の企業秘密に触れる時に生じるケースが最たる例です。

 

商談の際も、利用場面や目的を伏せたままサンプル提供を要求され、ああだこうだと様々な仕様変更などの要望が出てきて、やっとの思いで受注に至る…。

 

売り手側も「ハッキリと利用場面や目的を言ってくれれば、何をやるべきかコッチで考えられるのに…」と嘆いている場面を散見します。

 

しかし、このようなケースはハッキリと申し上げて、商談テクニックの乏しさが起因しています。

 

「生産性の低い商談」は、売り手にとっても、買い手にとっても消耗戦。

 

結果的に受注に至れば、お互いの苦労は報われますが、失注してしまったらお互いの損失です。

 

言わずとも事業経営において最も高い営業コストは、人件費です。

しかも顧客側で商談に向き合う方もトップ・エンジニアであることが多いので、的を得ない商談時間の積み重ねは、社会的損失といっても過言ではありません。

 

ハッキリと要求をってくれない買い手にも責任があるかも知れません。

でも、よくよく考えてみれば当たり前のことです。

 

買い手が、一部上場企業で新商品や新規事業を企てていることが、計画段階から外部に流失したら、株価にも影響するし、競争上の優位性も失いかねません。

 

このような場合、買い手が情報を伏せざるを得ないのは、至極当然のことだと理解しなくてはなりません。

 

やはり、ここは売り手である私たちが、生産性の高い商談を作り上げる責任を負っていると認識した方が健全です。

 

「顧客の見える化」を図り、商談効率を上げていき、生産性の高い営業体制を築く。

 

 

この命題を解決する最も簡単な方法が「既存顧客にヒアリングしにいく」ことです。

 

会社として、プレスリリース前に新規事業の「ネタ」を公開することは出来なくても、過去のことであれば話は別です。

 

3年前に受注をとった顧客に会いに行き「あの時って、どんな場面でどのようなメリットを享受するために我が社の商品をご利用いただいたのでしょうか?」と、聞く分には、何ら問題は生じないはずです。

 

すでに企業秘密ではなくなっている可能性が高いからです。

 

私もくクライアント企業さんのクライアントを訪問して直接ヒアリングをしています。

 

「ホームページをリニューアルするので、インタビューにご協力ください」と言えば、大体の企業は快く受け入れてくれます。

 

 

「なぜ、この素材、技術、商品に目をつけたのか?」

「どのような利用用途を想定したのか?」

「そもそも何をしようとしていたのか?」

 

そこで根掘り葉掘り聞き出すと、売り手にとっての宝の山がザクザク、顧客の口から飛び出てくることが多々あります。

 

この顧客から出てきた 「どのような利用目的」で「どのようなメリット(可能性)を狙って」「どのようにテスト(利用)したのか?」かがかると、その商品の存在意義が初めて明確になります。

 

既存顧客へのヒアリングは、“次なる営業戦略が浮き彫りになる”とても有効な手段になります。

 

 

ただし、営業に使えるようなヒアリングにしないと単なるインタビューに終わります。

また機会があれば、このヒアリング技術についてはお伝えしたいと思います。

 

それよりも、今日のテーマに焦点を合わせると顧客にインタビューが出来ない場合の「顧客の見える化」をお伝えしなくてなりません。

 

新規商談で「顧客の見える化」を行うテクニックです。

 

2つのテクニックがあります。

 

1つ目は、秘密保持契約を商談時に締結する方法です。

 

「御社の新技術が漏れるようなことがあっては、株主利益や御社の競争上の優位性を損ないかねません。ただ我々も詳しい利用場面、目的が分からないとベストな提案ができません。秘密保持契約を締結して、絶対に外部に漏れないように致しますので、もう少し詳細要件を教えて頂けないでしょうか?」と。

 

真っ向勝負で挑む方法です。

 

新規取引では、ハードルの高いアプローチですが、トライする価値はあります。

 

 

2つ目は、「誘い水」というヒアリングテクニックがあります。

 

誘い水というのは、「以前、他社で御社と同じような要求がありまして、我々はこのように解決をしました」

と近しい事例を持って、「あっうちも同じようなテーマかもしれない」と気づきを与えることで、情報を引き出すヒアリングテクニックです。

 

このテクニックを使うと、自然と詳細要件を商談相手が喋り出してしまうことが、ままあります。

 

「誰にとって」「どんな場面で」「どんなメリットが享受できるのか?」

 

この「顧客の見える化」をすることで、営業効率は確実に上がっていきます。

 

御社は、自社の顧客のこと、そして未来の顧客のことをどこまで知っていますか?