とことん「本質追求」コラム第428話 成功確度を引き上げる!【身の丈にあった事業戦略の進め方】

  

「ホームページを営業型にする…とても参考になりました。ちょうど新規事業を立ち上げていたので、勇気づけられました」

 

 

先週のコラムは、とても反響が大きく、たくさんの方からメッセージを頂きました。

現在お手伝いしているクライアントさんだけでなく、私がビジネスコンサルタントをやる以前の知人からもメールももらったほど。

比較的低コストで、しかも効果の高い「WEB戦略」は、これからの事業推進には欠かせないものだと改めて私も感じました。

 

しかし、低コストとは言っても、WEB戦略にかかるコストはピンキリです。

極めて低コストでテスト運用することもできれば、資金を大量投下して売上を爆発させることも可能です。

逆に、的外れのまま足を突っ込めば、泥沼にハマってしまいます。

 

今回、たくさんのメッセージを頂き、メールのやり取りを繰り返す中、それに気がついたので、皆さんとも共有したいと思います。

 

端的に言うと、「御社が保有している経営資源」と「マーケット規模」が、身分相応かどう…と言う大前提を履き違えないよう注意する必要があります。

 

極端な事例を持ち出すとわかるでしょう。

 

例えば、余裕資金が1000万円しかない企業が、コンビニ経由でカップラーメンを販売しようと試みていたら、あなたはどのようにアドバイスをするでしょうか?

 

「イケる、イケる! ぜひトライしなさい」と背中を押すでしょうか?

それとも、「やめておきなさい。無謀な戦いですよ」と、忠告するでしょうか?

 

その1000万円をドブに捨ててしまったら、会社がどうなるのか…によっても、アドバイスは変わります。

それでも強い大手がひしめくカップ麺市場に新規事業で参入するなんて、正気の沙汰ではないと判断するのが大多数の人の捉え方のはずです。

 

では、ここで前提条件を追加します。

同社(以下A社)は、とても美味しいカップ麺の開発に成功しました。

しかも、1000人にブラインドテスト(ブランドを隠した食品官能検査)を実施し、80%以上の人から「美味しい」と評価された自信作です。

原価の構造にもメスを入れ、市場価格は今よりも半額で提供できそうです。

品質は高く、売価は安い。

売れないはずがない!とA社の社長は興奮気味です。

 

しかし、コンビニに流通させるノウハウもなければ、人脈もありません。

なけなしの1000万円は、それがなくなったら倒産です。

 

 

ここで、もう一度質問します。

あなたは、背中を押すでしょうか?

それとも、やめておいた方が良い、と忠告するでしょうか?

 

ビジネスの構造的に見れば、答えは「やめる」です。

 

そもそもコンビニのバイヤーは、売れる商品しか取り扱いません。

美味しい商品=売れる商品ではないことをバイヤーは何度も経験しているはずです。

 

美味しいよりも、どれだけのテレビCMを流すのか?

カップ麺のヘビーユーザー層のインフルエンサーをどれだけ抱え込めるのか?

イベントの開催企画は、イケているのか、無駄打ちで終わりそうか?

 

そういった「マーケティングコストへの投下資金力」を重要視しているのです。

 

1000万円程度では、コンビニのバイヤーを説得できるマーケティング企画を打ち出すことは不可能です。

 

しかし、しかし…です。

 

さらに前提条件を追加していくと、判断が変わります。

 

あるエリアだけに特化した商品・市場戦略による企画立案です。

 

例えば、長崎県のコンビニに行くと東京ではお目にかかることができない「五島うどん」のカップ麺が棚に鎮座しています。

地元企業が開発、製造していて、確固たるマーケットを確保しています。

 

「沖縄のソーキそば」「札幌味噌ラーメン」「博多とんこつラーメン」ほど知名度がなく、観光客も比較的少ないため、全国ブランドになりにくい。

マーケットが小さく、売上の規模も限定的ですから、大手企業にとって魅力的なマーケットではありません。

 

こうした「局地戦」に持っていけるのであれば、1000万円程度の資金力しかなくても、勝算はあります。

 

また、コンビニではない「流通チャネル」の開拓も企画の幅を広げてくれます。

「道の駅限定」とか炭水化物を抑えタンパク質を強化したラーメンを「スポーツジム」で展開するとか、「資金の懐事情に合わせた局地戦」を推進することで成功確度を高めていくことが大切です。

 

話が、WEB戦略から逸れてしまいましたが、「発想の根っこ」は全く一緒です。

 

「検索エンジン広告」

「追跡型広告」

「天気連動型広告」

「ディスプレイ広告」

「SNS広告」(Facebook広告やLINE広告)

 

などなど、様々な広告があります。

 

Facebook広告など、ターゲット属性に焦点を合わせるけど、ニーズは無視する広告

検索エンジン広告のように、ニーズにだけ焦点を合わせる広告

追跡型広告のように、行動履歴に焦点を合わせる広告

 

それぞれ、どのような市場に、どのような商品・サービスを提案するか? によって、企画が変わっていきます。

 

仲間内の企業が、Facebook広告で売上を伸ばしたから我が社もやろう!

という安直な発想は厳禁です。

 

前提条件が変われば、事業推進の方法、戦略や戦術の策定(広告の出し方を含む)も全て変わっていきます。

 

その前提条件を復習すると…

 

投下できるマーケティング予算の規模

商品・サービスの性質(誰に対して、どんな価値を提供するのか)

自社が保有する設備、ノウハウ、経験

投下できる人材の質と人数

 

を極めて細かく吟味し、「勝てる戦か否か?」を自問自答することが大切です。

 

商品・サービスの切り口が「カップ麺」という大雑把な捉え方では「勝てないかも…」と感じたら、勝てる局地戦を考える。

長崎県民にとってのソウルフードを手間なく簡単に食べられるように…と
「誰にとって、どんな価値を提供するのか」を考え抜いた商品戦略を企てる。

 

投下できるマーケティング予算が限定的なら、どこまで小さく市場を捉え、少額投資で反響を得ることができる広告戦略を展開するかを考え抜く。

 

自社が保有するノウハウから生み出した商品・サービスは、お客様にとって本当に魅力的なものなのか?を考え抜く。

 

考え抜いた結果を、小さなテストを繰り返して、市場、お客様の反応を見ながら、よりよくブラッシュアップしていく…。

 

起業でも、新規事業でも同じですが「小さく始めて、大きく育てる」ことが大事。

 

御社では、身の丈にあった事業戦略を無駄なく、スピーディーに展開できていますか?