「こんな新商品を考えているのですが…どうでしょう?売れそうでしょうか?」
藤冨は、23歳の時に日立製作所、東レ、ワコール、ハウス食品などなど、日本を代表する様々な製造業をクライアントにもつ「新商品開発専門のマーケティングコンサルタント会社」に勤めていました。
その後は、ITベンチャーで泥臭いテレアポ営業を経験してきたので、マーケティング と営業を融合させた独自メソッド「波及営業法」を使って中小企業専門の業績アップのお手伝いをしているのですが…
冒頭のご相談のように、最近は「商品企画」のご相談が増えてきました。
これは藤冨にとっても、クライアントさんにとっても、とても好ましい傾向です。
なぜなら、商品の企画段階で「売り方」が決まるために、商品企画の段階から「売上を上げるための全体設計」をさせてもらった方が、明らかに成功確度は高いためです。
出来上がった商品、決まってしまったネーミングやパッケージ、そして価格戦略を元に、営業・マーケティング戦略をクリエイティブすることも、もちろん可能です。
その時は、私が営業マンだったら、どうメイクすれば”売れやすくなるか?!”と自分事に置き換えて、成功への道筋を描いていくのですが…
この時に、成果を出せる方向性が描けなかったら、潔くコンサルティングはお断りしています。
お互いの時間とお金の浪費につながるためです。
そもそも何でこんな商品を作ってしまったの?
何で、こんなパッケージなの?
何で、こんなネーミングなの?
とため息が出ることは、意外にも多いもの。
売れる営業マンと売れない営業マンの大きな違いは、抽象的に言えば「コミュニケーション能力」なのですが、商品そのものも、パッケージも、ネーミングも、価格も、すべて「コミュニケーション媒介」なのです。
最初の一歩が間違っていたら、商品と顧客の間を取り持つ「翻訳家(営業マン)」が、どれだけ良くても、仲介は成立しません。
残念ながら、冒頭の会社さんも、アイデアレベルで「それはやめておいた方が良い」とご助言しました。
すぐに「その理由」をご納得頂けたので、とても良かったと思っています。
そのまま走っていたら、多額の営業コスト、販促コストをドブに捨てるようなものですから。
ちなみに、なぜアイデアレベルで売れない!と藤冨が判断したのか。
その「理由」を皆さまにもお伝えし、新商品企画によくある「ハナっから失敗」の抑制に貢献できればと思います。
こんな商品とは、今まさにコロナ禍においての必需品であります”除菌剤”です。
今飛ぶように売れている除菌剤に追随して、当社の技術を活かした商品が開発できるとのこと。
市場全体が売れているから、うちが出しても売れるだろう、と。
そんなノリでした。
嫌な予感がよぎります。
そこで、2つの質問をしました。
- 競合商品と差別化された明確な「顧客メリット」はありますか?
そして
- 販売チャネルは持っていますか? 持っていない場合はどこでどうやって売りますか?
と。
すると「顧客メリット…ですか?」と怪訝な顔をされ「除菌です」と呟かれました。
販売チャネルは、他業界からの進出のためドラックストアにもコンビニにも取引経験はありません。
ましてや、作ってから売るものだから、作る前に考えている必要はないのでは?と思われていたようです。
思った通り、嫌な予感が的中しました。
中小企業が最もやってはいけない「今売れているヒット商品の追随商品」で、しかも戦略上ほぼ無策だったからです。
差別化も考えておらず、流通や販売方法も未経験。
もしかしたら、波に乗れて売れるかも知れませんが、スタンスは「バクチ」と変わりません。
長続きするわけもなく、その場しのぎにしては「低利益」。
これでは、事業として取り組むのは、あまりにもムダが多すぎます。
商売は、波に乗ることは大事です。
しかし、流行に乗るのではありません。
あくまでも「時代の流れ」に乗る!という発想が大切です。
これは似て非なるものです。
流行に着眼すると、どうしても「モノレベル」に目がいってしまいます。
・マスクが売れている
・除菌剤が売れている
・テイクアウト弁当が売れている
…モノで捉えてしまいがち。
だから、こぞって「テイクアウト弁当をやれば売れる!」と盲目的に感じてしまうのです。
大企業ならまだしも、中小企業がこの発想だと、とても危険です。
流行にのる!と言うことは、競合がウヨウヨいるレッドオーシャンに飛び込むということ。
資金力、人材力、生産力(調整力)など、パワーゲームに勝てるだけの知力・体力が必要になります。
本当に勝てますか?と 一度、自問自答すればわかるはずです。
中小企業は、体力に限界がありますから、小資本で勝てる戦略を企てる必要があります。
そのためには、今流行している「時代背景」を読み取る必要があります。
時代背景を読み取り、買い手の置かれた状況や心理に思いを馳せて「それならこんな商品があったら買い手は“欲しい”と思うに違いない」と企画することが、王道かつ正しい商品企画の出発点になるのです。
商売で波に乗りたい!と思った時は、流行ではなく、時代に着眼してください。
そして、買い手の状況や心理に思いを馳せてみてください。
きっと、本質的に買い手に貢献できる素晴らしい企画になるでしょう。
御社は、安直に流行にのるような商売をしていませんか?