とことん「本質追求」コラム第38話 売り場を変えて、利益を倍増させる「営業戦略」のたて方

「豚に真珠」

含蓄が富んだ、この”ことわざ”。
今の「営業戦略」を考える上で、とても重要な切り口になります。 

ただ、「消費者や買い手」を「豚」に例えているわけではありませんので、どうか誤解をされないようにして下さい。 

この”ことわざ”から、私が学んだのは、自社商品の『価値を活かすも殺すも”営業戦略”次第だ!』と言う事です。 

平たく言うと『利益の出る価格設定、儲かる事業構造は、市場選定にかかっている』と言うことです。

今から160年ほど前。 
アメリカでは、ゴールドラッシュが起きました。 
金脈を探し当てて一攫千金を狙う採掘者が殺到する、あのゴールドラッシュです。 

しかし、実際に一攫千金を手中に収めたのは、採掘者ではありません。

リーバイスの創業者リーバイ・ストラウス氏を始めとした「金の採掘者を商売相手にした企業家」でした。 

金を掘りいくのではなく、金を掘る「道具」を売った人達が、現実の成功を収めたのです。 

リーバイ氏は、はじめテントや荷馬車の幌を作るために厚手の布を販売していました。 

ある時、知り合いが、金属鋲を用いたズボンを作った事を知り、共同で特許を出願。

これをキッカケとして、「厚手の布」と「銅製の鋲」で素材を強化するジーンズが発明されたのです。

ここから学ぶべき事は、ジーパンをどう捉え、どう売っていくか? という事業の本質へのアプローチ方法です。 

「破れないズボン」は、ネガティンブ解消商品という位置づけです。 

この捉え方で終わっていたら、これだけの普及は成し得なかったハズ。

「金の採掘に集中するために、破けないズボンは必須アイテム」という捉え方がされたからこそ、買い手に「価値」が生まれたのです。

午前中の作業でズボンが破け、午後から仕事ができなくなったら、それこそ大金を発掘するチャンスをみすみす逃すことになります。

それこそが、採掘者にとっての、最大のリスクです。 
そのリスクを回避するために投資をするのが、かしこい人の選択。 
ズボンを「経費」で見るか、「投資」でみるか・・・。

捉え方ひとつで、まったく別な商品としてポジショニングされてしまいます。 

リーバイスは、「本来のジーンズの位置づけ」が、意図的か自然派生的か・・・意識的か、無意識的かは、別として、キチンと伝わえられたからこそ、普及していったのは間違いありません。 

まったく同じものでも、商品の切り口の見せ方によっては、まったく「別商品」になっていきます。

まったく同じものでも、市場(売り先)によっては「価値の捉え方」が、まったく別ものになってきます。

自社商品の「どの切り口」を「どの市場」に「どのように表現」すれば、「どのような価値」が生まれるのか? 

この「軸」を真剣に深く探求していくことが、自社商品を成功に導くための最大のポイントなります。 

ココ数年「スピード経営」が主流になっていて、腰を据えて事業戦略を考えぬくプロセスが軽視されてきています。
とにかく行動だ! そこから修正すればいいんだ!と。

しかし、現実的には「本質を見極めた事業戦略」でない限り、事業プランの修正を繰り返し続けると、足元を見失ってしまいます。

事業方針がブレまくり、どこに向かって経営をしているのか、わからなくなってしまうのです。 

いま悩まれている企業の大半が、腰を据えて考えぬくプロセスの時間が作れていません。

このままでは、目先の利益を食いつぶすだけです。 

ジーンズは、金の採掘者に「投資」商品としてポジショニング出来たらこそ、成功しました。 

お医者さんや学校の先生などの知識人のファッションアイテムとしてポジショングされたら、100年先でも成功は難しかったかも知れません。

大切な事なので、繰り返しますが・・・

自社商品の「どの切り口」を「どの市場」に「どのように表現」すれば、「どのような価値」が生まれるのか?

を熟考し、適切な行動を取ることが、事業の成否を決定させます。 

そして、ポジションが定まったら、その価値を持続させていく戦略が次の重要テーマとなります。

その最大のポイントは「売り急がないこと」

長くなるので、「高付加価値商品の持続戦略」は、次回のテーマに譲ります。 
2013年1月22日にコラム掲載予定ですので、ぜひ楽しみにお待ちください。

■編集後記■ 
最近、私がお手伝いしている会社の社長は、みな優良企業の実力者です。
その中で気づいた事ですが、優良企業の社長の共通点は「売り急がず、しっかり事業構想を確立させる体制を整えたあとに、獅子の如く走りだすタイプ」であること。 

スグに競争に巻き込まれてしまう経営者と、独自路線を持続できる経営者の「差」が、ハッキリと見えてきました。

次号は、その中核に触れてみたいと思います。