とことん「本質追求」コラム第41話 明確な対抗軸が自社固有のポジションを作り出す

「ウチは新聞の販売店を経営しているのですが、新聞でも差別化できますか?」

先日セミナー終了直後、名刺交換に…と壇上に駆け寄ってくれた方からの質問です。

「先生の話を聞いていて、他社と同じ事をやっていても利益が取れないのは痛感しています。でも、他の参加者の方と違ってウチはメーカーではありません。新聞屋です。どうやったら、独自の市場を創造して、圧勝出来るか…ずっと聞きながら考えていましたが、全くわからなくって…先生、やっぱり新聞屋じゃ無理でしょうか?」

正直言うと、困った質問でした。 
商品を企画・開発できない企業、販売代理店でもプラスアルファのサービスを開発して、付加価値をつけて事業化できる企業でないと、差別化は出来ません。

差別化を出来ないということは、腕力勝負の営業で顧客を勝ち取っていくか、「価格競争」で勝負を仕掛けるか、どちらかに行き着きます。
新聞屋さんをイメージすると「今、お申込頂けると、お米をプレゼントしています。あっ洗剤も1箱つけますよ」と言った、プレゼント攻勢による営業のイメージしかありません。 

個人的に「腕力勝負」「価格勝負」「プレゼント勝負」などの経営手法には全く興味がありません。

しかし、あまりにその方が真剣な眼差しで聞かれるので、私の本気モードスイッチが入ってしまいました。 

「取り扱っている地方新聞は、他の新聞とどう違うのですか?」 
「主要な読者層は誰ですか? なぜその人達は、その地方紙を呼んでいるのですか?」
「何か地方紙を読んでいて、物理的な影響は生じていますか?例えば地元高校の入試問題にでるとか…」

と矢継ぎ早に質問を繰り返していたら、質問者の方の思考チャンネルがカチッと合いました。 
「あっ高校の入試…あるかも…」と。 

「であれば、スグにその事実を調べあげてください。事実であれば、こんな展開が出来ます」と、前置きしながら、一つづつ解説していきました。

「まず何故新聞の購読者が減っているかは把握していますか?」と聞くと 
「えぇ、今はネットがあるとか、携帯で十分とか言われます」 
「なるほどです。では、携帯と紙媒体の大きな違いはないですか?」 
「えっ?………なんでしょ?」
「さっきの入試に出題されているという事実から想像すると、この”違い”が武器になりますよ」 
「うーーん、なんでしょ?」
「私もよくやりますが、スクラップブックをすると、自然と記憶するんですよ。赤ペンを引く、新聞を切り抜く。ノートに貼る。 という動作をするから、記憶の定着がよくなるんです。でも、データだと”面白い”→”保存”と動作が少ない分、記憶性が下がります」
「なるほど…」 
「であれば、ここは”ネット”とかとの大きな違いですよね」 
「確かに…高校受験をする家族層か…でも一体どうやって探すんです?」 
「例えば…ですよ。さっき駅からタクシーで来る途中に”学習塾”をいくつか見つけました。学習塾にいるってことは…」

「そっか!!!それは面白いかも!」 
と、喜んでセミナー会場をあとにされました。

「新聞」の競合は、間接競合である「ネット」にどんどん侵食されつつあります。 

この「ネット」に明確な対抗軸を作ることで顧客は新聞の認識を再考し始めます。
自社独自のポジションを確立するには、相手の認識を書き換えるメッセージが必要です。

私の支援している企業さんでも、「その機能は、間接競合と、どう違うんですか?」と、聞くと、当初はまともに答えられないケースが大半です。

しかし、何としてでもココをクリアにするまで、私は追求します。

なぜなら、この”違い”がわかると、他社と全く違う商品企画、開発や販売戦略が自然と浮き彫りになってくるからです。

どんな商品でも必ず「直接競合」や「間接競合」の存在があります。

その「違い」をどう自社に有利な戦いに持ってこれるか…それが事業戦略の成否を分けることになります。 

ちなみに、今回の商品は競合がゼロです。全く新しい商品を開発しました!!
という社長に先日めぐりあいましたが、そんな商品は正直いって売れません。 
これだけ高度化した社会で、競合がないと言う事は、そもそも論として需要がないのです。 
「で、社長売れ行きは如何ですか?」と聞くと、案の定、売れていないとの事。 

「差別化」が成功するには、いくつかの条件があるのです。
その条件が満たされていない限りは、逆立ちしても成功はおぼつかないのです。