とことん「本質追求」コラム第55話 営業マンの成績格差を埋める出発点のつくり方

自分のアタマに浮かんだ妄想は、あるアフリカ人のアタマにも同時に浮かんでいるかも知れない…。

個人の枠を超えた人類共通の無意識が存在しているとした心理学者のユング。 
「集合的無意識」と呼ばれ、シンクロもこの領域のひとつと言われていますが、私は以前からこのシンクロが起きるタイミングは、何か重要な意味がある…と、自分自身を客観視するタイミングだと考えてきました。 

そのシンクロが、この1~2週間の中で、頻発したのです。 

「なぜ営業マンの業績格差は起きるのか…」というテーマが複数のコンサルティング先の社長から、同時多発的に相談事として投げ掛けられたのです。 

2社程度だったら、気にもとめなかったかも知れません。しかし、3社、4社と続けば「何かある…」と思わざるを得ません。

その中の1社で、社長との個別的な相談を終え、後日チームミーティングをした時のことです。 

取締役から「今度社長から”個別具体的な営業マンの相談があったときには、こちらにも一報をください…」と、言われました。 

しかし、ここでキチンと共通認識を作っておかないと社長と社員の間に溝が出来てしまい、組織力が発揮できなくなる…
と踏んで「お言葉ですが…」と話に一本の筋を通すことにしました。 

「そもそも論として、増収増益で満足するほど、社長は現状を楽観視していません。社長のアタマには次なる事業構想が明確に描かれていて、その実現のためには今の利益構造ではダメだと思っています。それはみなさんにも伝わっているはずです。だからこそ今、圧倒的な利益を稼ぎだすための体質づくりを進めているのではないしょうか?」と。 

すると、取締役を筆頭にチームは「ハッ」とした表情になり、不平不満の空気から一転。 
「さぁ、プロジェクトの成功に集中しよう!」という雰囲気にガラッと変わっていったのです。

ところが、肝心要の営業戦略が中々まとまらない。 
各自が持ち寄ったアイディアをテーブルに載せて議論しだすと、また重箱の隅をつつき出す。 
決まった方針さえ「やっぱり上手くいかないのでは…」と蒸し返す始末。

これは困ったと、3ヶ月前に行ったコンサルティングシートをファイルから引っ張り出して、結論に至った経緯をもう一度振り返ってもらうと…。 

最近プロジェクトに入ってきた営業責任者が「なるほど!これなら売れる!!」と意気揚々とした表情に変わり、ネガティブ意見を撤回したのです。

「なんと…最も大切なコンセプトが全く伝えられていなかったのか…」肩を落とした瞬間に、シンクロしていたテーマが、ムクムクと頭をもたげてきました。

売れている営業マンは、その商品が持っている本質をお客さんに正確に伝え、お客さんの求めていることと合致するように誘導していきます。 

その商品が持っている本質とは「コンセプト」 

なぜ、我々があなたに対してこの商品を勧めているのか…という大義名分とも成り得ます。 
これは、セールスの中核となる部分です。

なのに、その中核を忘れてしまい、機能がどうであるとか、デザインがどうであるとか、価格がどうであるとか、枝葉の部分ばかりに目が行ってしまい肝心要の「幹(コンセプト)」となる部分に焦点が当たっていない営業マンが多い。 

もちろん、そうゆう人はキマって売れない営業マンです。

だからこそ、コンセプトは徹底的に全営業マンに注入させていかなければならないのです。 

コンセプトなくして、大義名分は掲げられませんし、お客さんを強力に引っ張るチカラが芽生えるハズもありません。

売れる営業マンは、ここを無意識的に分かっているから、お客さんを強力に引っ張れて、売れない営業マンが、ここが分かっていないから引っ張るチカラがないのです。

売れる・売れないは「能力」×「努力」です。 
努力をしない営業マンは、それ相応の対応をしなければなりませんが、能力不足は企業側の責任でもあります。

「社員教育」云々の話ではありません。 
それ以前の問題です。 
我々は何のためにこの商品をお客さんに勧めているのか? 

この中核となるコンセプトがしっかりとしていないから、営業現場でブレブレになるのです。

コンセプトを全営業マンの脊髄に浸透させること。 
これが「営業マンの成績格差」を縮める最初の一歩となる…
その重要性をこれからしっかりと明確な言葉を持って伝えていかなければ…と思った次第です。

セブン-イレブンの創業者である鈴木敏文さんが「仮説と検証」の重要性を、手を変え、品を変えて、何十年も同じ事を言い続けている…と言っていました。 

私も「コンセプトの営業現場まで一気通貫させる重要性」を、手を変え、品を変えて話し続けようと思います。 

コンセプトなくして、波及効果のある事業運営なんて出来るハズもありませんから。

追伸 
コンセプトが確立されていない組織は、改めてコンセプトの確立に全精力を投入してください。 
ある会社で、新商品の営業戦略づくりをお手伝いしたときの事です。 
その新商品が事業コンセプトとマッチしていない商品だったため、「会社の定義」を改めて策定して全商品共通の事業コンセプトにしたところ、営業マンが「なぜ、この新商品を我々が販売しているか…」という意義を見出してくれ、風向きが変わったように売れ出したケースがあります。 
これは、特異な現象ではありません。必然的な現象なのです。