とことん「本質追求」コラム第517話 売り続ける「組織体制」を邪魔するもの

 

「これまで”営業部門”にどう仕事を指示すれば良いのか分からずに、距離を置いていました。しかし、お陰様でこのコラムを読み続けてきて、ちゃんと向き合う意欲が出てきました!」

 

先週末、7年前から本コラムを読み続けてきた…とおっしゃる読者さんから、嬉しいメッセージが送られてきました。

 

「自分は営業を経験したことはないが、今週のコラムに書かれていた〈営業の武器を作る〉という概念は理解できました。少しずつだけど、実践していこうと思います」と、勇気が湧いてきたとのこと。

 

勇気は改革の第一歩。

その勇気の灯火が燃え始めた今、早急に対策を講じれば、きっと会社は変わります。

 

迅速に、的確にそして、大胆に。

この三拍子を揃えることが、組織改革には大事。

 

エールを送る意味でも、そして皆様にも参考になると思いますので、「はじめの一歩」の打ち出し方を藤冨の経験を踏まえてお伝えしたいと思います。

 

まず前提条件を共有しましょう。

冒頭の読者さんである社長は、技術畑を歩んできた2代目社長。

先代が社長をやっていた時からずっと勤めてきた営業部長が、数年前に2代目が打ち出した営業方針と新たな管理方法に反発。

以来、営業部門を腫れ物に触るように扱ってきたとのことでした。

 

「確かに営業はわからんし…」と好き放題させていたようですが、この2年程度で業績はガタ落ち。

 

理由を聞いても「コロナで新規開拓ができないし、既存客とも接触できない。どうやって売上を上げるのですか?」と、あたかも「業績低迷は、我々営業の責任ではない」と言わんばかりの開き直り方に、さすがに堪忍袋の緒が切れたとのこと。

 

「景気のせいにして、まともに仕事に向き合わないのであれば、私(社長)だって、環境のせいにして、給与を払いたくない」

 

とメールには苦悩が綴られていました。

 

なるほど、確かにその気持ちはわかります。

 

企業の責任は、社員の生活を守ることだ! などと社員としての責務をまっとうせずに立場を「盾」にして、厚顔無恥に振る舞うなど言語道断だからです。

 

「義務が権利を作り出すのであって、権利が義務を作り出すのではない」という名言がある通り、権利を主張する前に義務を果たす必要があることを、忘れているようでは社会人として失格です。

 

ここまでは共感します。

 

しかし、だからと言って、簡単に給与を下げるわけにはいきません。

腹立たしい気持ちはわかりますが、できないアイデアに頭を支配されていては前に進めません。

そもそも、冒頭のメールで、社長自らおっしゃっていましたが、業績低迷は社長の責任です。

 

メールを拝読する限り、そこは承知の上だったので、ここからどう善後策を打つか…。

そこに焦点を当てたいと思います。

 

まず、前提条件として…

 

・営業部門の責任者が、”営業”と言う観点では社長のことを素人だと舐め腐っていること

・営業部門の責任者が、営業だけを自分の職務範囲だと思っていること

 

この2つに問題があります。

 

◆ 二代目社長を舐めくさる古参社員への対策

 

組織のリーダーを舐めくさる社員がいて、良いことは一つもありません。

他の社員への悪影響を考えると、すぐさま対処すべき問題です。

 

結論から言うと、営業職を外し、他部署に配置転換するなど措置を講じることが適切です。

 

他の社員への影響も考え、「何故、配置転換をしたのか?」と言う社長方針の説明も欠かせません。

 

「会社の方針を、このようにする。営業への取り組みは、ゼロから見直したい」などと率直に伝えることで、「変わるんだ」「変わらないといけないのか」と言う空気感を醸し出すことが大事。

 

山本七平氏の「空気の研究」にも書いてある通り、「空気とは、絶対的な支配力を持つ判断基準」となります。

 

社長を舐め腐った営業責任者の存在という「ピンチ」を、配置転換によって「チャンス」に変えるには、「会社の方針」という絶対的な基準づくりが欠かせません。

 

その「会社の方針」と「配置転換」をセットにすることで、新しい空気感を醸成することができます。

 

 

◆ 営業だけを自分の職務範囲だと思っているカルチャーの打破

 

藤冨は、大小、業種さまざまの企業に関与する中で、セクショナリズムが組織の成長を阻害している…と、激しく感じることが多々ありました。

 

会社というのは、「法人」という人格が存在しています。

その人格が「誰に対して、どう貢献し、利益をもらって成長し続けていくのか?」という確固たる存在理由があると、真っ直ぐに成長していけます。

 

営業も、製造も、目的は一緒。

「自社の差別的優位性をもって、消費者の欲求を充足し、満足してもらうこと」

そして、

「適正利益を獲得し、その利潤をもって、さらなる消費者満足を追求すること」

その結果

「会社の成長」というロジックが働いているのが、成長企業の共通点です。

 

「生産部門は、顧客の意向を何も分かっていない」とか

「営業は、口先だけで”ものづくり”を理解していない」とか、愚痴の言い合いをする暇など本来ないはず。

 

それを許してしまっているのは、リーダー不在だとしか言いようがありません。

 

中小企業は、成績が優秀だと、なぜか営業部門のリーダーにしがちです。

しかし、ミクロでの成績優秀者と、マクロでの市場開拓力は、使う脳みそが違います。

 

目の前の顧客満足と、市場における消費者満足の追求は、似て非なるものだと理解できていれば、営業責任者の選別視点も異なってきます。

 

目の前の顧客満足は、営業マン個人の仕事を最適化するための個人主義であるケースが大半。

反対に、市場における消費者満足の追求は、ものづくりと一体となって取り組む必要があるため、全体主義の思考をもった人物であることが多いのです。

 

個人主義 VS 全体主義

 

高度成長期のように、市場が拡大していた時代は、営業成績を個人間で競わせるような「個人主義体制」が高い成果を生み出していました。

 

しかし、市場が縮小化していく現代は、「満たされない欲求は何か?」「我が社の強みを使って何かをなせないか?」という俯瞰した視座が求められます。

つまり、営業は営業、製造は製造…というケツの穴の小さいことを言っている個人主義の人は、リーダーから外していかないと、市場の欲求にまで目が行き届かなくなってしまいます。

 

売れりゃ良いって、問題じゃないよ。売り続けるために、何をすれば良いのか、全体最適化することが大事なんだよ

 

私には、営業経験はないけど、市場の欲求を探り出し、対応していくことを、営業の第一義のテーマにするのが、ウチの営業方針だよ

 

と、あるべき姿勢を打ち出すことで、必ずや新たな求心力が得られるはずです。

 

難局の時代を乗り切り、売れ続ける体制を築くには、全体を引っ張るリーダーの思想と組織への浸透が大事。

 

御社の営業部門は、個人主義が浸透していますか。それとも全体主義が浸透していますか?