
「当社の商品は、競合が少なく、競争力が高いため、顧客の要望を深読みしないでいました。しかし、新商品の市場開拓を進める中で、“なぜその要望があるのか?”という文脈を読み解かなければ、的確な提案ができないことに気づきました。振り返ると、競争優位性のある商品であっても、顧客の要求の背景はしっかりと深掘りすべきだと感じています。」
先日、クライアント企業さんとの1年の振り返り会議の中で、会議終了間際に「ちょっと気づいたことを発表しても良いですか?」と手を挙げてくれた中堅スタッフが、静かに語り始めた言葉でした。
彼の言葉は、決して派手でも理論武装されたものでもありませんでした。
むしろ、自分自身の営業活動を振り返りながら、腑に落ちた実感を素直に言語化したものでした。
「売れている」「競合が少ない」「技術的に優れている」──
そうした事実に安心し、顧客の言葉を“そのまま要望として処理していた”自分への小さな違和感。
その違和感こそが、次の成長への入口だったのだと思います。
彼は、新商品を担ぎ、未知なる市場を開拓する中で、短期間に試作件数を大幅に伸ばし、2026年の成果が期待できる状態まで新規開拓を進めてきた努力家です。
営業幹部を前にしても臆することなく、「これまでのやり方」と「あるべき姿」の違い、そしてそこから得られた成果を自分の言葉で語る姿は、営業幹部や管理職の先輩たちに強い印象を残しました。
会議後には、全国の幹部から「ぜひ中堅社員向けに話をしてほしい」と声がかかるほどでした。
彼の活躍は、今後さらに広がっていくはずです。
自身の新規開拓テーマにとどまらず、過去に扱ってきた商材で、現在は他の担当に引き継いだ案件まで含めて、改めてマーケティングの視点で再構築しようとする約束までしています。
「完全なる経営」の著者である心理学の権威、マズローは、リーダーシップに必要な資質として「利己と利他の二文法を解消していること」を条件に挙げています。
平たく言うと、自分の利益と他人の利益を両立させる思考・行動ができる能力のことです。
・顧客の要望を深掘りし、我々の素材や技術、製品が、どのように貢献できるのか?
・自社利益の追求と、長期的に顧客から支持される基盤をどう最適化するか?
・社会の一員として企業が存続するための条件は何か?
営業マンとして、リーダーとして、経営者として、この「利己と利他の二文法を解消していること」のマインドを持つことは、長期的に安定した組織を築く上で非常に大切な視点となります。
顧客視点──言うは易く、行うは難し、です。
「顧客の立場に立つ」という言葉は、ビジネスのあらゆる場面で頻繁に用いられますが、実際には自社の論理や事情に引きずられがちです。
数字の達成、社内調整、製品スペックの制約など、現場にはさまざまな“内的要因”が存在します。
その中で、純粋に「顧客は何を本当に求めているのか?」「なぜその要望が生まれているのか?」といった背景や理由といった“文脈”に目を向けることは、意識しない限り、容易に見過ごされてしまうのです。
また、「顧客の立場に立つ」ためには、単なる姿勢だけでなく、具体的なスキルも不可欠です。
まず重要なのは、顧客の背景や文脈を正確に読み解くための「洞察力」と「ヒアリング技術」です。
表面的な要望にとどまらず、本音や真のニーズを引き出す力が求められます。
さらに、得られた情報をもとに、顧客の立場や課題を整理し、問題の本質を明確にする「解像度の高い思考」と「構造化スキル」も必要です。
つまり、「利己と利他の二文法を解消する」というマインドは、単に「いい人になろう」とする話ではありません。
むしろ、それは戦略的な視座を持つことが求められるのです。
しかし、この本質的な在り方を阻む要因が、組織の中には存在します。
それが、「評価制度」と「マネジメントのあり方」です。
努力と成果の相関関係が言語化できている組織であれば、「管理によるマネジメント」は機能します。
成果を上げた人材を評価すれば、他の構成員(社員)も同じ努力をすることが期待できるためです。
しかしながら、不透明な環境に置かれた組織では、努力と成果の相関関係が見えにくくなります。
市場の変化が激しく、顧客のニーズも複雑化している環境では、「正しい努力」がすぐに「目に見える成果」につながるとは限りません。
このような状況下では、従来型の「成果だけを評価する」マネジメント手法では、現場の士気が低下し、優秀な人材のモチベーションが維持できなくなるリスクがあります。
なぜなら、経験と勘に優れた一部の人物だけが評価される構造が生まれやすくなるからです。これが「属人化」を招く最大の要因となります。
では、どうすればよいのでしょうか。
答えは明快です。
「創造性が発揮できるマネジメント」を取り入れるのです。
創造性のマネジメントとは、「成果」ではなく「プロセス」に光を当てるマネジメント手法です。
具体的には、個人やチームが試行錯誤の中で行った仮説立て、検証フィードバックといった創造的な取り組みの「質」や「意味」を、組織として認識・評価することを指します。
従来のマネジメントが「できた/できなかった」という結果ベースで評価していたのに対し、創造性のマネジメントは、「どのように考え、どのように挑戦したのか」という思考と行動の過程に着目します。
この考え方を導入することで…
・失敗が学習機会として正しく位置づけられる
・社員が心理的安全性のある環境で、挑戦的になれる
・組織に新しい「知」が蓄積されていく
といった好循環が生まれます。
今、私たちが直面しているのは「正解のない課題」が増え続ける時代です。
このような時代に求められるのは、過去の成功モデルの再現ではなく、未知への挑戦を支援するマネジメントです。
創造性のマネジメントは、まさにそのための土台となる考え方であり、これからの組織づくりにおいて、不可欠な視座なのです。
御社は、創造性のマネジメントに取り組む意思がありますか?
