「成功体験に溺れると自滅する理由…本当にその通りですね。しかし私は、もう年だし、ここまで頑張ってきたし、やることはやってきたし、もう良いかな…って、思うんですよ」
死をも覚悟しているような悲壮感漂う言葉…。
この1ヶ月くらいの間で、3件も同じような悩みを聞かされました。
いつも不思議に思うことがあります。
全く脈絡のないところから、同じ様な悩みや相談事を聞かされることが、なぜか多い。
いわゆるシンクロニシティがよく起こるのです。
シンクロニシティは、「意味のある偶然」という概念で、心理学者のユングが最初に唱えました。
意味のある…まさにその通りだと感じていて「気づきを発信せよ!」と言われているような気がしてなりません。
というのも、三人の同じような悩みというか、思いを抱えた経営者は、それぞれ置かれた立場も、業界も、年商も、全く違うのですが、共通している背景が一緒なのです。
背景が一緒であれば、対策も同じように考えることで、現状を打破できます。
では、その背景とは何か?
本コラムでは、何度も手を変え、品を変えてお伝えしてきたことですが…
「時代の変化」が、旧来のビジネスモデルを毀損させ、頑張ってきた経営者の未来に影を落とし始めているのです。
馬車の代わりに、自動車が生まれた時代は、馬の売人、馬車の製造業者の未来は、お先真っ暗に見えたでしょう。
私も20代の頃に自己投資した「ワープロ」も、今や跡形もありませんし、スマホの前身である「PDA(携帯情報端末)」を持っている人もいません。
電車の中で、新聞を広げて読んでいるサラリーマンも全滅状態。
時代の変化とともに、恐竜が絶滅したのと一緒で、事業も時代の変化とともに、市場が消滅してしまうのは、ある意味「自然現象」と言えるでしょう。
「商品のあり方」だけでなく、「商品の売り方」も同じです。
時代の変化とともに、過去の成功パターンが、通用しなくなっていくことは、自然現象。
自然現象ならば、あらがうことなく全てを受け入れた上で、何をなすべきか?をゼロから考える他ありません。
しかし、私たち日本人は、答えのある問題に対処する方法は、学んできたのですが、答えのない問題を考え抜く方法は、習ってきていません。
そもそも、今の学校教育では「評価」をすることが前提です。
評価をするには、正解・不正解を判断する必要があります。
従って、「答えが明確に存在している問題」しか、学校教育では教えることができません。
(軽井沢の風越学園は、この問題意識に対応した学校で、非常に興味深い活動をしています)
時代が、ある一定方向に向かって、安定的に成長しているときは、過去のパターンに乗じることで成果を出すことができます。なので、「答えが明確に存在している問題」を解く訓練は有効です。
しかし、時代が断絶した時は、過去のパターンが通用しない。
否が応でも、ゼロから考え抜かなければならないのです。
ゼロから考える方法も知らないし、訓練されていないのに、それをどうやってやるのか?
お先真っ暗に見えて、無気力になるのもわかりますが…
ここで無気力になったら、本当に「死」が現実的になってしまいます。
そんな時に活路を見出すには、自社の事業を理解してくる「ディスカション・パートナー」を仲間に引き入れることが有効です。
これまで成り立ってきた事業活動ならば、蓄積してきた「財産」(=強みの源泉)は、何かしから確実に存在しています。
自分の顔・姿かたちは、「鏡」という媒体がないと、全容が見えないように、自社の蓄積してきた財産も、第三者という媒体を通じて、姿形が見えるようになります。
強みの源泉である「財産」が、次なる時代の事業に、どう活かせるのか?
その方向性を定めたら、猪突猛進。「不安」や「不安定さ」を振り切って、やるべきことに没頭することで、不安は自然と脳内から消え去っていくもの。
テーマが広範囲になるので、本コラムでは抽象論になってしまいますが…
「次なる時代に生きるための”自社のあり方、次の時代の具体的な事業”を、第三者という鏡を通じて、映し出すこと」
これが、お先真っ暗に見える事業環境に唯一光を見出す方法です。
しかし、ここで絶対にやってはいけないことがあります。
次なる時代を見据えた方向性を定めるのですから、肉親と保守的な性格の人間には相談してはいけません。
双方とも「変化を嫌う人種」である可能性が濃厚だからです。
足を引っ張ることは得意でも、未来を切り開くことは不得手。
第三者の人選は、以下の3つの条件に当てはまる人材でなければなりません。
・先進的、革新的な思考回路で、生きている人
・マーケティングの世界に精通していること
・AI、IoT、AR、VRなどの時代の変化を促す技術に先見の明があること
この3つの要素がある人材でないと、御社の事業を正しく捉え、かつ未来を切り開くような的確な方向づけをしてくれることは、まずありません。
センスのある人なら、セルフ診断も出来ますが、それでも、自分の捉えた自社像と、他人から見える自社像は客観視しておくことが大事。
方向性が定まるまでは、「悩み」が必要ですが、走り出したら「没頭」しなければなりません。
走り出す方向に「命」をかけることができるか。
そこまでは、広い視野で見る余裕が大事です。
御社は、次なる時代の「自社像」を明確に描いていますか?