とことん「本質追求」コラム第525話 競争相手がいないから儲かる?!

「当社が開発に成功した製品は、類似品がありません。競争がゼロですから期待していたのですが…思うように売れません」

 

先日、オンライン・コンサルティングをした技術者からため息まじりにうけた相談。

・誰のための何のための製品なのか?
・顧客に与えるベネフィットは何か?
・どのような投げかけに見込客は「欲しい・買いたい」と思うのか? 

技術担当者からの説明を聞きながら、ヒアリングをする中、「ん?」と疑問の念が頭をもたげました。

 

「競合がいない? そんなはずはない…」
と、ヒアリングしながら、Googleで検索をしてみると、出てくるは出てくる。

競合というよりは、想定顧客が現在採用している「代替案」が。

 

すぐに「もしかして、想定顧客は、現在これを使っていませんかね?」と聞くと、担当者は「えっ?その製品とウチの技術は全く違いますよ。だって、ウチのは圧倒的に作業性がよく、生産性向上につながりますから」と反論。

 

なるほど…。
これが「売れない原因か?」と、理由がわかったので、質問を変えてみることにしました。

 

「カメラはスマホ派の人に、世界最軽量のコンパクトカメラは売れますかね?」と。


すると「はっ!」と気づかれた様子だったので、逆の切り口でさらに…


「カメラ好きでカメラを持ち歩く人の中で、世界最軽量が”購買意欲”につながると人の割合って、どの程度いますかね?」と。

 

ここまで、突っ込むとさすがに理解されたようです。
「ウチの製品は、独りよがりだったってことでしょうか…」と、うな垂れた様子。

 

置かれた状況を正しく理解できた様子だったので「でも、可能性はあります」と、発想を広げるヒアリングに切り替えました。

「御社の独自性が、顧客から見たときに、どんなベネフィットにつながるのか?」
「そのベネフィットは、誰にとって最も魅力的に映るのか?」

デイスカッションを重ねるうちに、「もしかして、これならイケるかも!」という空気感が生まれてきました。


冒頭の技術担当者も、売れる可能性を感じ、「やってみます!」と元気な声で、Zoomが終了しました。

 

今回の教訓は2つあります。 

1つ目は、売り出す製品・サービスは、顧客視点から眺めること
2つ目は、競争相手との「比較優位性」を明確に設定すること

 この2つです。


売り手である技術者や経営者は、画期的なアイデアがひらめくと、興奮のボルテージが上昇「これは、売れるに違いない!」と浮き足立ってしまいがち。

 

こうなると、見込客を「これ、すごいでしょ!」と説得してしまう気持ちが芽生えてしまいます。

 この「売り手目線」が芽生えたときは、すぐさま摘み出さなければなりません。

 

想定顧客を説得するには、膨大な啓蒙費用と時間が必要だからです。
その余裕があれば、構いません。
でも、そんな余裕がないのなら、一度立ち止まって、そのアイデアは、顧客からどのように見えるのか?を冷静に見極める必要があります。


すると、顧客が、そのアイデアを採用しない場合の代替案でカバーしていることが見えてきます。

 

どのような画期的なアイディアであったとしても、必ず「代替案」は存在する! という顧客視点で追求することが大事。

  

インターネットが登場する前は、人々は「辞書」で調べ物をし、地図で行き先と行き方を確かめていました。

データの保管も、フロッピーデスクや外付けハードディスクで行っていたし、スケジュール帳も手帳を使っていました。

 普及学を紐解くと「比較優位性」は、技術や製品などのアイデアが普及する必要要件とされています。

 

比較優位性ですから、対象物が必要。
つまり競合を明確にして、比較優位性を示すことが、「セールス」にはとても大事なのです。

 

Appleの創業者、故スティーブ・ジョブズは、iPhoneの新商品発表会で、スマホの前身である「携帯情報端末」を槍玉に上げて「アプリによって最適なボタン配置は異なるのに、キーボードが固定されているなんて、スマートじゃない!」と、ぶち上げました。

 そして、操作ボタンをなくし、皆が生まれながらにして持つ世界最高のデバイスである「指」を使って、画面にタッチする革命的なインターフェースを開発した!と訴えました。

 会場にいた聴衆は、全員スタンディングオベーション。

 比較優位性を非常にうまく演出したからこそ、革新的なアイデアが世に広まったのです。

 

素晴らしいアイデアが生まれた時には、「競合なんていませんよ!」と、自惚れないことが、大事。

マーケティング&セールスを成功させたいなら「売り手→製品→顧客」という物理的なフローを脳みそから排除してください。

「顧客→ベネフィット→製品」という、購買心理フローから、「製品のあり方と売り方」を眺めることが大切なのです。

 

私たちが、皆さんの生活をもっと素晴らしいものにしていきます!というメッセージには、「代替案(競合)との比較優位性」が必要なのです。

 

御社は、製品PR、マーケティング、セールスのステージで、明確な比較優位性を打ち出していますか?