とことん「本質追求」コラム第533話 顧客のハートを鷲掴みにする提案技術


「ビックユーザーから問い合わせが来たのですが、アポが取れないんですよ。次の一手をどうするか手をこまねいていまして…」
 
先日のコンサルティングでの議題となったテーマ。
クリーンエネルギー分野での主要装置で「世界シェアNO.1」の企業からの問い合わせ。
この受注を獲得すれば、「あの会社(クライアント企業)」の技術力は、世界レベルに匹敵する!」と知らしめる御旗が立てられることは間違いない。
なんとしてでも、受注を獲得したい案件です。
 
有名企業からの「受注実績」は【競争力の源泉】となるからです。
いくら「我が社の技術は、国内最高峰です」と、自画自賛しても、多くの人は信用してくれません。
それどころか、様々な業界の様々な企業から似た様なメッセージが発信されているため、認知すらされない状況に陥ります。
 
しかし、有名企業との取引実績は、自画自賛のメッセージの信用力を担保してくれます。
「信用の移転効果」が働くためです。
 
ものすごく身近な事例で考えると分かります。
 
・このガラスは世界最高峰の強度を持っています。
とPRしても多くの人は「あっそう」と、見向きもしてくれません。
しかし…
 
・このガラスは、大統領の専用車の防弾ガラスに使用されている素材です。携帯式のロケットランチャーを打ち込まれてもビクともしない世界最高峰の強度を持っています。
 
と、PRすると、多くの人は「すげー」と注意・関心を寄せてくれます。
 
購買心理プロセスにおける最初の一歩をクリアするわけです。
 
しかも、認知力も向上します。
 
「強度●hの世界最高峰の強化ガラス」と言われても、●hの強度を多くの見込客に記憶させることは困難です。
しかし「大統領専用車に使われた強化ガラス」とPRすると、多くの人の記憶に残ります。
 
この受注実績のキーワードを意識して「見込客接点」に配置していけば、確実に見込客を顧客化できる。
結果、売上は着実かつ確実に増加していくわけです。
 
冒頭の同社は、すでに国立系シンクタンクのNO.1組織や、国立大学の全国制覇、さらには国内有数の素材メーカー数社との取引実績があるために、技術・提案力は、誰がみても同分野ではNO.1の企業になっています。
しかし、これまでのラボ(研究所)向けのソリューションビジネスでした。
冒頭の問い合わせは、生産技術へのソリューションビジネスです。
この商談がまとり「受注獲得実績」としてPR出来れば、これまでと比較にならないほどの売上成長力を高めてくれます。
 
なぜ、そんなに自信を持って断言できるのか?
それは、実際、同社のホームページは、自社の特異技術を支持している顧客層の分厚さを認知させるように設計していて、そこからの問い合わせが売上の大半を占めているためです。
これまでの「ラボ向けソリューション」から「生産技術向けのソリューション」まで対応可能なのか…と市場が認知すれば、売上原資となる顧客層の裾野が広がるのは、火を見るより明らかです。
これで問い合わせは確実に増えていきます。
 
しかし、せっかくの問い合わせがきても、受注できなければ、元も子もありません。
同社は、技術力のみならず、営業力も強靭で、問い合わせから面談にこぎつけた案件の受注率は、ほぼ100%。
それは、他に類を見ない技術力が担保されているからです。
見込客が置かれた課題を聞き、どうすれば解決できるのか…
そのソリューション力が、半端ではないのです。
 
私も同社社長の営業に同行させてもらったことがあります。
国内有数のガラスメーカーの研究職の人が、「このような事で困っているんです」と同社社長に悩みを打ち明けれると、「それなら圧力をかければ一発ですよ」と即答。
研究職の人は、目を丸くして「なっ、なるほどです。今後の具体的な取り組みをご提案いただけませんか?」とモノの5分で、心を鷲掴みにしてしまいました。
国内で誰も真似できない技術=これまでの受注実績の証拠=営業力となっているのです。
しかし、「そこまでの技術はいらないけど、困っている」「高い技術力=費用も高い…我が社にはそんな予算がない」と二の足を踏む見込客もいます。
 
冒頭のケースが、まさにこれです。
 
「高い技術は必要。でも予算は限られる」
「一体、国内最高峰の技術は、どのくらいの予算感なんだろうか…」
 という予算制限の厳しい企業は、「とりあえずいくら?」と聞いてきます。
これまでのケース(ラボ向け)ではなく、生産技術として組み込む場合は、100万円なのか、1000万円なのか、1億なのか…
検討すらつかないからです。
 
それで、ある程度の許容範囲に入っていれば、「では、商談しましょう」となりますが、許容範囲外であれば「そのままナシのつぶて」となります。
 
営業では、価値が伝わる前に、価格を提示するのは基本的にはNGです。
しかし、上述のようなケースは、ある程度の予算感が必要です。
 
見込客の置かれた課題が明確になれば、的確なる課題解決策を提示する事で、魅了できる可能性が生まれますが…
相手の置かれた課題が不明確な場合、こちらも手の出しようがありません。
 
従って、大事なことは「的を射た質問」をコンパクトかつ的確に伝えること。
これで、見込客が「我々にも想定不足があるかも…。隠れた課題があるかも…」と思わせることが出来れば、商談のチャンスが広がっていきます。
 
優れた営業マンは、質問から入ります。
相手の状況、課題、目標、満足するポイントを知り、我々がそれにどう貢献できるか?を伝える材料を集めるためです。
 
商談相手は、自分の課題が解決されたり、目標が達成できたり、満足できる道筋が見えてくると、心を鷲掴みにされてしまいます。
これは、マーケティングでも一緒。

想定見込客の状況、課題、目標、満足するポイントを知り、我々がそれにどう貢献できるか?を知ることが、マーケティングを成功させる第一歩になります。

 

 まずは、相手を知ること。

これが相手の心を鷲掴みにする貴重な手がかりとなります。

 

御社は、想定見込客が、夜も眠れないほど気になる課題、目標、満足するポイントを知る努力を組織的に展開していますか?