とことん「本質追求」コラム​​第563話 売れないのは、営業の責任なのか?

 

「売れないのは、営業のせい?会社の責任転嫁する体質にほとほと疲れました。セミナーでおっしゃっていた”組織が一丸となって真摯に市場に向き合う体制”は、どうやったら実現できるのでしょうか?」

先月、日刊工業新聞社主催のセミナーを受講された営業部長から相談メールがきました。
多くの企業に横たわっている根深いテーマなので、共有させて頂くと同時にご回答をしたいと思います。

単刀直入にいうと、経営者または同等の意思決定権のある人にしか、断行できないテーマです。

ご相談者の方も、わかっているとは思いますが、営業責任者が、売れないのは営業の責任ではなく、市場に真摯に向き合わないからだ!といくら吠えたところで、”責任転嫁するな!”と経営層から一蹴されるのがオチ。

無駄な抵抗をせずに受け入れて腐るのか、それとも経営層に物申すのか。
はたまた会社の資質を見限って辞めるのか?

それは企業の体質、社長の性格、本人の抱えた事情、資質などがあるので、どれが良いかは一概には言えませんが…
もし、会社を見限って辞める!という気持ちがあるのなら、「背水の陣」で経営層に物申す事をオススメ します。

藤冨なら、こうする。
という、進め方をお伝えしましょう。

まず、社長に直談判の書面を提出します、

内容は…
・こういった商品を営業主導で開発・販売させてほしい
・理由は、業界が抱える共通の課題を解決する商品がないからです。
・需要は見込めるのに、間接競合もAとBしかなく、マーケットは渇望している
・実際に、営業アタックしてみたら、すぐに購入してくれる取引先も数社あります。
・失敗したら、責任をとって退職しますので、ぜひプロジェクトチームを組ませてもらえないでしょうか?と。

これを口で言うと、感情的に返されてしまうリスクがあるので、論理的に考えてもらう”時間”を作るために、面倒でも書面に落とす必要があるでしょう。

結果、会社が受け入れないなら、それまで。
どうせ辞める覚悟を持って挑んだこと。
潔く去れば良いだけの話です。

「それじゃ、努力が無駄になってしまう…」と、思う人もいるかも知れません。
大丈夫!
決して、無駄にはなりません。
その努力が、必ずあなたの血肉になります。

コロナによって、急成長したZOOM創業者のエリック・ヤン氏も世界最大手のネットワーク通信機器メーカーのシステムシステムズ勤務時代に、スマホで使いやすい新たなビデオ会議システムを提案したのですが、経営陣は却下。

ヤン氏は、そのアイデアを持って退社し、Zoomビデオコミュニケーションズを設立し、億万長者になりました。

そんなアメリカンドリームを目指そう!なんてことを言いたいわけじゃありません。

優れた商品】を【売れるカタチ】に整える「構想力」をまとめる力が大切だと言う事を伝えたいのです。
もちろん「実行力」が伴わないと、本当の血肉にはなりません

しかし、人間は面白いもので、脳みそがカラカラになるまで考えた構想は、実行するチャンスに恵まれるものなのです。

チャットGPTを始めとした「AI時代」に、人間が必要とされる能力は、部門間をまたがる仕事の推進力だと藤冨は強く感じています。

・製造と営業の部門間をまたがるテーマ
・マーケティングと営業の部門間をまたがるテーマ

顧客からすれば、部門間の役割なんて、どうだって良いこと。

✔ 市場が抱える課題を解決できる製品を提供できないのは、製造の責任
✔ 優れた製品なのに、それを必要とする顧客が気づけないのは、マーケティングの責任
✔ 競合商品は、売れているのに、自社商品が売れないのは、営業の責任

そんな部門の責任を問う仕組み自体が、ナンセンスになりつつある時代に突入しています。

市場が抱える課題を解決できる製品を提供できないのは、製造部門の責任でもありますが、顧客の現状を組織にフィードバックできない営業の責任でもあります。
また、同時に市場の声を吸収し、事業化プロセスを企画・実行できないマーケティング部門の責任でもあります。

優れた製品なのに、それを必要とする顧客が気づけないのは、ターゲットをクリアにできない製造の責任でもあります。
また同時に、対象市場を絞りきれない営業部門の責任でもあります。

競合が売れているのに、自社製品が売れないのは、営業部門の責任でもあると同時に、マーケティン部門が差別的優位性を市場に認知させられない責任でもあります。
また同時に、顧客視点から見た差別的優位性を製品に組み込めない製造部門の責任かも知れません。

誰が我々の「顧客」なのか。
どれが本質的な「競合」なのか。
差別的優位性のある「ベネフィット」を市場にどう理解してもらうのか。

これらの課題は、全て部門の垣根を超えたテーマとして捉える必要があります。

評価制度などの課題は残るものの、それすら顧客からすれば関係のないこと。
顧客は、対価を払っただけのベネフィットを享受したいだけなのですから。

昨年11月22日のコラムに書いた「マーケットマネージャー制」の提案は、自分で言うのもなんですが、核心をついた組織のあり方だと感じています。

▼第539話 多様化するニーズに対応にする「マーケットマネージャー制」のあり方とは▼
https://www.j-ioc.com/column/12819/

経営者なら、マーケットマネジャー制の導入を…
部門責任者なら、部門の垣根を超えた「顧客志向の働き方」を…

AI本格到来時代に適応できるよう実行に移してみませんか?