とことん「本質追求」コラム第562話 ゼロから這い上がるDNAを信じる

「AIが社会に浸透し、消費生活の前提が変わる時代に適応させる新商品って、なかなかの難題ですよね。自信を失ってしまいそうです』

先週のコラムを読んだ読者さんからちょっと凹んだ感想メールが送られてきました。
いたずらに煽るつもりはないのですが…
変化の激しい時代においては『最悪を想定し、最善を尽くす』スタンスを取る方が、重要だと藤冨は考えます。

よく日本人は落ちるところまで落ちたら強い!と言われますが、そうなる前に対策を施しておく方が良いのでは…と思うためです。

「クズばかりになった日本は、落ちるところまで落ちろ!」と過激な表現で注目されている東京都立大学教授の宮台真司教授が唱える【加速主義】の狙いは、いち早く日本人の活力を取り戻すための起点を早期に作るべきだ…と言っているようにしか藤冨には聞こえません。

・AIの出現
・日銀の政策
・世界的なインフレ

などなど、マクロ経済の未来は極めて不透明で、予測不能な状態になっていると言われています。

この先どうなるか分からない…
だから現状維持…
というスタンスも理解できますが、それと「思考停止」は全く別物。

今すぐに行動に移すべきか否かは、さておき「様々な代替案から、自社の勝ち残り戦略」を準備しておくことが必要なのではないでしょうか?
そして、時が来たらアクセルを目一杯踏み込む。

たとえ、AIに仕事が奪われても、ゼロから這い上がる計画を今から企ておくことは、精神的にも、経営的にも安定感が増します。

大丈夫!
日本人には、ゼロから這い上がるDNAが組み込まれていることを信じて行動しましょう。

藤冨は、そのゼロから這い上がるDNAが組み込まれていることを3つの側面から説明できると感じています。

・誇り
・利他の精神
・同調圧力

の3つです。

一つずつ解説してみたいと思います。

まずは、誇りです。
数年前に鹿児島の知覧にある「知覧特攻平和会館 」に行った際、猛烈に突き刺さった特攻隊員の遺書がありました。

これから死にゆく18歳の青年の最後の綴りです。

「私の死は、恐らく犬死になるだろう。しかし私の魂は死なない。これから生まれてくる日本人の中に勇気を与え続ける。どんな状況に追い詰められても、戦う勇気を与え続ける」と、書かれていました。

恐怖を打ち消し、自分を奮い立たせる様子を汲み取った時、涙が止まりませんでした。
と同時に、これがまさに【武士道の教え】である「義・勇・仁・礼・誠・名誉・忠義」のうちの「勇(勇気)」の実践と感じた瞬間、身震いを起こしました。

武士道は、新渡戸稲造氏が、海外から日本人は無宗教と言われたことに対して、日本人には武士道がある!と知らしめた書籍と言われています。

武士道は、日本人の誇り。それが精神的支柱に備わっていると言われています
藤冨もそれを信じています。
誰でも、恐怖を感じるもの。その恐怖に「勇(勇気)」を持って立ち向かう。

その勇気の持ち方が、正しければ必然的に状況は、好転するものです。
では、その正しい「勇(勇気)」の持ち方とは…これも武士道の中に組み込まれています。

「勇」は、「義と仁」から生まれてきます。
これが、2つ目にあげた「利他の精神」とつながっています。

世界経済の停滞・不透明感が漂う中、国家間の争いをみても「利己的精神」が蔓延しています。
世界平和のため、悪者を排除する!という羊の皮をかぶった狼たちの言葉に、私たち日本人は薄々気づいていると思うのです。
本当に平和に向かっているのか?と。
相田みつを氏の詩に「奪いあえば足りぬ。分け合えば余る。奪えば争い。わけ合えばやすらぎ。(以後省略)」とある通り、人間としての正しい道・正義は、利他の精神にあるはずです。

武士道でいう「義」は人としての正しい道を貫くこと。
そして、「仁」とは、人としての思いやりの心です。
貪欲になった世界に対して、「義」の精神に反することに気づけば、「仁」の心を持つべきだ!という「反骨精神」が生まれるはず。

その反骨精神が、ゼロから這い上がる起点となります。

ん?
道徳論?
と感じるかも知れませんが、これは商売にも深く通底しています。

「義と仁」の心を持って、消費者のより良い生活や環境のために商品やサービスを作り出し、「勇」を持って、その素晴らしさを訴え続ければ、必然的に【波及】していくものだからです。

藤冨が本コラムでお伝えしたい意図をご理解いただけたら、最後の解説に行きたいと思います。

3つ目の「同調圧力」です。

同調圧力というと、ネガティブなイメージを抱くことが多いのですが、ここではポジティブな側面で捉えていきたいと思います。

同調圧力という概念を武士道に照らし合わせると「名誉」にあたると藤冨は考えます。

武士の幼少教育は、「恥ずかしいことをするな」「対面を汚すな」「人に笑われるぞ」という羞恥心を覚えることを重んじました。

義・勇を守り抜くことは、この「名誉」にも密接に繋がっています。

つまり、正義を汚すこと。正義を守り抜く勇気を持たないことは、日本人としての「恥」である。
この良い側面における同調圧力が、日本人の持つ行動力の源泉になると考えるからです。

話をビジネスに置き換えながら、まとめていきます。

AIやロボットの本格的な社会浸透によって、読者の皆さんそれぞれの事業環境が激変するでしょう。

もしその時、自社の事業をゼロから再定義しなければならなくなったら…
または、全てを捨てて、新しく事業を開発しなければいけなくなったら…

ぜひ武士道を思い出してみてください

・何が正しい道なのか(義)
・どうやって、正しい道を推し進めていくのか(勇)
・それは、本当に人の役に立つのか(仁)
・そして、同じ思いを抱く人たちと良い意味での「同調圧力」を感じながら、強い行動推進力を得ていく…(名誉)

この思考・行動プロセスが、ゼロから這い上がる力になるはずです。

もう一度言います。
大丈夫です。

日本人には、脈々と培われてきた武士道の精神が息づいていますから。
今は失われてしまったように見えるかも知れません。

そんな時には、ぜひ鹿児島の知覧にいってみてください。
あなたのDNAが活性化され、血が騒いでくるかも知れませんので。