「新しい事業を起こしたいので、またプロジェクトに入ってもらえませんか?」
以前、プロジェクトをご一緒した企業さんから、新事業の創出サポートの依頼を頂きました。先月、雑談ベースでお話した際、チャットGPTが同社に与える影響を示唆し、新しい時代が到来することに共感を持ってもらったようです。
嬉しいお話ですが、だからと言って安直に請け負うことは、お互いの不幸を招きます。
AI時代の本格到来という『外圧』によって、極めて強い激震が起きる業界なだけに、同じ温度感で危機意識を持つことが大事だと思うからです。
とは言っても、その業界は、政府が主導する要素も強く”しがらみ”でガチガチ。
変化に対して抵抗力も強いため、そう容易く受け入れないでしょう。
一方で、最終消費者たちは、変化の必要性に気づき、感度の高い富裕層から、変化を求め、自分たちに必要な商品やサービスを求めてくることは間違いありません。
実際、その潜在需要がざわめき出しているのをヒシヒシと感じています。
まだ顕在化していない潜在ニーズをどう刺激し、欲求を引き出していくのか…
どこから、どのように変革を起こしていくのか…
チャレンジングで、エキサイティングなテーマだけに、藤冨もワクワクが止まりません。
しかし、道なき道を突き進むには「絶望的な未来」と「魅力的なフロンティア」の存在をチームで共有することが絶対条件。
その未来感を共有できなければ、悲しくも『茹でガエルの釜』に戻っていってしまうのが、人間の性というものです。
そうならないためにも、強い危機感と将来の希望を同じ温度感で捉えて、プロジェクトの空中分解を避けたいのです。
従って、プロジェクトをスタートする前に「ある課題書」をチーム全員で読み込み、お互い共感を持つことができれば、本格始動をさせてもらいたいと考えたのです。
それほどまでに、同社の業界は本質的な改革を求められている…と、藤冨は思っています。
他の業界にも広く影響する事態なので、本コラムでは、藤冨がそう感じる背景を共有したいと思います。
昨年10月より突如として出現したチャットGPTを見て、藤冨は強い興奮を覚えました。
私が25〜26歳のとき…1995年前後にインターネットに出会って以来の衝撃です。
当時勤めていたコンサルティング会社では、講師を招き、ミニセミナーを開催。
これまで国会図書館や日比谷図書館まで行っていた調査が、ネットで瞬時に入手できるかも…と教えられた際「これは、地理的、時間的な壁が崩壊する、汗」と、脳内にアドレナリンが分泌し始めたのを昨日のように覚えています。
興奮して、仲間に話しても、当時は誰も聞く耳を持ちませんでした。
『藤冨は新しいもん好きだなー』とケラケラ笑われたものです。
しかし、現代を見れば、誰もが笑うどころか「ネットがあるのが常識」となっています。
本屋に行かずとも本が買え、映画館に行かずとも映画が自宅のテレビで観れ、旅行に出掛けずとも、海外旅行まで疑似体験できるようになりました。
イノベーティブな変化の導入期は、大多数の人々は「変化」に対して、否定的な立場を取るものなのです。
カメラをはじめて見た日本人が、撮影されると魂が抜かれる…と騒いだり、インターネットが出現した際には、ネット通販でクレジット決済したら、莫大な請求がくるぞ!と騒いでいた人たちで、溢れかえっていました。
チャットGPTも「人々の考える能力がなくなる」「AIが人間を支配する」と、騒がれ、AIとは距離を置くべきだ!という否定論まで聞こえるようになってきました。
まさに、カメラやインターネットの出現と同じような社会受容の態度です。
1880年、産業革命が起きたときも、自動車なんて乗ったら足腰が弱まって、人間が弱体化する。走っている最中に故障したら大けがをする!などの否定的な意見があったばす。
それでも、イノベーションは、進化し続け、我々の生活に溶け込み、豊かさを与えてくれています。
チャットGPTをはじめとした『AI』や『ロボテクス』などのイノベーションも、今後確実に進化し、産業革命と同様に我々の生活に溶け込み、豊かさを与えてくれます。
京都大学名誉教授の中西先生の「本質を見抜く考え方」にある「慣性の法則」に照らし合わせれば、AIが進化するのは必然だと気づかされるはずです。
それを前提に、全ての思考や常識をリセットし、ゼロから自分の置かれた業界の「あるべき姿」を創造する必要があると、藤冨は強く確信しています。
前提が変われば、あるべき姿が変わります。
あるべき姿が変われば、目標が変わります。
目標が変われば、手段が変わります。
手段とは、事業者が提供する「商品やサービス」です。(政府の政策も手段です)
AIが社会に浸透していけば、確実に「消費生活者の”前提”」が変わります。
恐らく…ではなく、確実に、です。
たったの2ヶ月で1億人のアカウント登録を成功させたチャットGPT。
TikTokが1億人に到達するのに9カ月、LINEが1年7ヶ月、Instagramが2年半かかったのに比べると、圧倒的な速さで普及したとのこと。
AIの社会実装を研究する東大の松尾教授も、「AIが人間の仕事を奪うことはない」と発言していましたが、GPTの出現でそれを撤回。
言葉を使うものがほぼ全ての業務の大半は、AIが担えるようになる…と提言しています。
異例のスピードで、消費生活者の「生きる前提条件」が変わった際、あるべき姿に対して、我々の商品・サービスはどのように貢献できるのか?
AI本格到来時代より、私たちは「考える力」が問われています。
すでに新しい時代の幕は明けました。
ボーッとしていると、時代から「絶滅種」に分類されかねません。
自然言語であらゆる問いに的確な回答を出せる仕組みが到来した現代。
御社そのもの、また業界を取り巻く環境は、どのように変化するでしょうか?
その変化対応策を、今から企画していますか?