とことん「本質追求」コラム第565話 輝く未来を創造する3つの問い

​​「生き残り戦略を実践するのは、組織ならではの”やり易さ”と”難しさ”が共存することでしょう…という意味を具体的に教えてください」

先週のコラム「第564話 失敗しない差別的優位性の見つけ方とは」を読んでくれた読者さんから、質問のメールを頂きました。

結論からお伝えすると、生き残り戦略を実践する上での組織ならではのやり易さは「広い視野による正しい現状把握」にあり、難しさとは「対策案の実行」になります。

脳科学的にアプローチしてみると、現状把握は、感覚器官から収集した情報をどのように認知したか…というプロセスを踏んでいます。

草食動物は、顔面の横に目がついているので、外敵の接近をくまなくサーチできるような感覚器官を装備しています。
ウマは、おおよそ350°くらいの視野を持ち、ウサギはなんと360°の視界を持っているそうです。
背後から襲ってくる外敵もいち早く発見できるので、逃げ切る可能性を高めることができるという身体特性を備えているのです。

さらに、草食動物の多くは、群れを作って行動しています。
個体でも視野が広いのに、集団行動をしていれば、餌を食べる個体、監視する個体、遊び戯れる個体と、それぞれが自由な行動をしつつも、外敵をいち早く察知することができます。

もちろん、集団で行動をすれば、外敵である肉食動物から発見される確率も高くなってしまう
というデメリットもあります。
それでも、100頭の群れで行動をしていれば、個体が餌食になるリスクは、1/100。
自然界で草食動物たちが肉食動物によって絶滅させられないのは、集団行動をしていた方が生き残る確率が高いからです。

外敵が来たかも…状況変化の早期発見は、組織的な活動の方が優れているのです。

会社に置き換えても「競合」を発見する知覚情報、そして、それが自社の事業に与える影響を推定する「認知」活動は、人数が多ければ多いほど、機能的には優れています。

機能的には…とあえて言ったのは、リーダーが他の意見を聞き入れ、真摯に受け止める度量があることが「正しい現状把握」につながるという前提を抑えておきたいため。

つまり、自社の事業に影響を与える存在をイチ社員(群れの一部)が発見できても、リーダーの「正しい認知」をしなければ、その知覚情報は全て無意味になってしまうわけです。

「正しい認知」を行えないリーダーは、集団を窮地に追い込むので、注意が必要です。
そもそも、なぜ「正しい認知」ができないのか?

心理学的には認知バイヤスと呼ばれるもので、成功体験などによる「先入観や偏見」、コンプレックスや恐怖感による「自己肯定の偏り」、過剰自信などによって、現実を歪曲したり、ディスカントして理解してしまうために起こってしまいます。

リーダーは、状況把握の際に、意識して感情的にならず、論理的思考を働かせることが大事。
怒りっぽい人が、瞬間湯沸かし器のように感情的にならず「アンカーマネジメント」をするように、情報を収集したら一晩ゆっくりと論理的に考えることが大事

論理的な思考回路を助ける「第三者の意見」や「書籍などの英知」に触れることで、さらに「正しい現状把握」へと導かれていくはずです。

しかしながら、正しい現状把握が出来ても、解決策を見誤ってしまっては元も子もありませ
ん。

それが、組織での生き残り戦略を実践する上での”難しさ”になります。

現状把握→課題設定→対応策の策定というプロセスで「実践」は行われるのですが、上述の認知バイアスが露呈しやすいのが、この課題設定と対応策の策定というフェーズになります。

・窮地に立たされたのは、社員が自主的に行動しないからだ!と問題をすり替えたり…
・利益を拡大させようと、近視眼的なコストダウンを行い、競争環境をディスカウントしたり…
・目先の売上を追って、強みを生かした事業に集中できなかったり…
・危機からの脱却に焦るばかり、自社にとっての本当の顧客を見失ったり…

と、本来のあるべき対応策と、真逆の方向に走り出してしまうことがあります。

そうなると、社員のモチベーションはダダ下がり。
意見を言ってくれれば、良いのですが、それでもリーダーが一蹴してしまえば社員は沈黙せざるを得ません。

まぁ給料がもらえるまで付き合うか…と、社員は、傍観者となり、リーダーが考えた作戦すらまともに実行しようとはしなくなります。

自分が誤った対応策をとっていないかどうかは、社員の顔つきを見れば、一発で見抜けます。

それを、リーダー自らが自覚するためには、ある「おまじない」をすると、認知バイアスが解け、正しい対応策に導かれるようになります。

そのおまじないとは…
「それは誰にとって、何のためになるのか?」
「その対応策は、競合よりも優れた価値を顧客に提供できるのか」
「私の判断は、保守的・内向きになっていないだろうか」

この3つの問いを24時間かけて悶々と考え抜くことです。

人間誰にでもバイオリズムがあり、好調期、不調期はあるものです。
不調期ほど、保守的・内向きになり、顧客が見えなくなります。
イヤラシイ認知バイアスも働きやすく、負のスパイラルへと陥りがりです。

そんな時こそ、自己を滅して3つの問いに真摯に向き合ってみることが大切です。

リーダーに限定したような書き方に見えますが、これは個人の「生き残り戦略」についても一緒。

自らの精神と肉体をコントロールするのは、リーダーとなる「自らの意志」だからです。

あなたは、意識して3つの問いを自らに投げかけていますか?