とことん「本質追求」コラム第106話 「モノ」を売っている限り……売上は伸びない?!

「営業の活動量を増やし、管理も徹底しているのに数字が伸びないのです」

 

先週、見込客の定義を明確にすることで、営業マンの危機意識を醸成することが大切です…と、コラムを書いたのち、ある読者の方から「電話で良いので、ちょっと相談したい…」という連絡を頂きました。

数年前から顧客の状態管理のようなことは無意識的に行っていたそうで、コラムの内容に共感をもって頂いたようです。

かなり頭の回転の早い社長さんだったので、トップセールスであれば、どのような商品であっても売れてしまいそうな感じをお見受けしましたが…。

扱っている商材は、まさにコモディティ商品。
コモディティ商品とは、差別化が困難な商品を意味し、普通の営業マンでは、あきらかに悪戦苦闘を強いられるのは、10分程度の会話で読み取る事ができました。

 

コモディティ商品を持って、右肩上がりの成長をするには、屈強の販売力を身につける他ありません。

 

何を選んでも同じような商品であれば、誰から買うが重要な購買動機となるからです。

 

たしかに、昔から「営業マンは自分を売れ!」と言われてきています。
この「理」は間違っていません。
例え、差別化された商品で売り易い商品であっても、やはり営業マンによって売上は左右されるのは、揺るぎない事実ですから。

 

しかし、これは営業マン個人が強く認識すべきテーマであって、企業側が社員に押し付けるテーマではありません

 

と言うよりは、仮に押し付けたとしても「はい、わかりました。やってみます!」と営業マンが素直に受け入れたところで、簡単に結果を出せるものではありません。

 

日本人に多いとされる自己肯定感の低い人は「自分を売り込むこと」が最も苦手なのです。

結果の出にくいところに焦点を当てた所で、お互い不幸な結果を迎えるだけです。

社長を始め、営業マネージャーは、中々結果に結びつかない現実に苛立ち…。
営業マンは、こんな商品売れないよ…と会社の姿勢を幻滅している…。

 

このような悪循環を断ち切るには、焦点の当てどころを変える必要があります。

 

そもそも論で考えれば、価値あるものを、その価値を理解できる市場に向けて、正しいメッセージを打ち出していけば、売れていくものです。

 

ところが、仕事柄さまざまな商品やサービスを取り扱う企業の営業マンと接していると、妙なことに気づかされます。

 

自らが販売している商品やサービスのもっとも本質的な「価値」を理解していない人があまりにも多いのです。

 

まさか…?
と、思われるかも知れません。

 

ウチの社員なら、それくらいは分かっているだろう…
と、感じるかも知れません。

 

でも、今日会社に出社したら、速攻朝礼を開いて営業の皆さんに聞いてみて下さい。

「我が社は、何を販売しているのか?」と。

 

きっと多くの営業マンは……

「はっ?社長、一体どうしたんですか? ウチは昔から車屋ですよ。 車を販売しているに決まっているじゃないですか? 」とか

 

「はい、我が社では、最高級の天然木材をふんだんに使った住宅を販売しています」

 

などなど、商品の機能や特徴を話し出す人が多いはずです。

もちろん、突然聞かれることですから、それはそれで構いません。

しかし…

「ウチが顧客に提供しうる最も特徴的な価値は何か?」
「顧客はその価値を受け取ると、何が実現できるのか?」
「それを実現したとき、顧客の立場や世界は、どう変わるのか?」

という本質的な質問に対して、明確に答えをつづることが出来ない人が多い場合は、問題として認識する必要があります。

 

そのような場合は、今一度、当社が提供している“価値”を明確に浮き彫りにし、全営業マンの共通認識を作り出すことが大切です。

 

顧客の立場にたった時に眺めた「価値」を売り手である営業マンが明確に認識できていなければ、その商品のオススメするチカラが弱まるのは、火を見るより明らかだからです。
顧客自身が「私のためを思って、私が受け取る価値を考えて、オススメしてくれる…」と感じてくれれば、自然と買って頂ける確率は高まるものです。

 

個々の営業マンの営業力向上だけに焦点を当てているのではありません。

 

このように「顧客の立場にたった本質的な価値」の共通認識が出来ていれば、自社が提供する価値を最も必要としている顧客はどこに溜まっているのか…が見えてきて、必然的に組織全体の営業効率も高まるものなのです。

 

我が社が販売(提供)している価値は何か?

この社内の共通認識を持つ所から、組織的営業活動の再構築を進めると、動かなかった岩(組織)が、ゴロッと動き出すことでしょう。