とことん「本質追求」コラム第108話 困った発想の成長戦略…それでは会社は成長しません。

「多角化は危険だと思い始めていましたが……確かにそんなことはないですね」

 

先週の金曜日は、2ヶ月おきに開催している「波及営業」戦略セミナーを実施しました。

少人数開催ではありますが、全国から優れた企業の経営者の方、営業責任者の方にご参加頂いています。

 

・ 創業100年越えの企業。

・ ある業界では圧倒的なシェアを獲得している企業。

・ 業界の第一人者と呼ばれる技術を持つ企業。

 

お話していて、つくづく思うのは優れた企業だからこそ、さらなる成長を貪欲に目指していらっしゃる。

我が社が、持続的に成長するチャンスはどこにあるのか…。
虎視眈々と成長の機会を狙っているのです。

 

その中の一社さんから今後の成長戦略についてご質問を受けました。

既存の技術を転用して、新しい分野に参入したいと思っていたのですが、多角化は危険だと、今のお願いしているコンサルタントから反対されていまして…。最近私もそんな感じがしてきてしまっているのですが…どう思いますか? と。

 

詳しいお話はこれからなので、まだ分かりませんが社長が悶々としているその成長戦略のアウトラインを聞いて、「それは、イケるのでは?!」と直感が走りました。

 

ただ、どのような優れた経営者であっても「成長戦略」を企画する際に間違いを起こしがちです。

 

名経営者であるユニクロの柳井社長でさえ「野菜ビジネス」に参入したのち、2年で撤退を余儀なくされました。

 

ちまたでは「多角化戦略」は成功しない…。

などと、表層的は評論が展開されていましたが、ここはしっかりと本質をおさえておかないと、同じ過ちを犯すか、本来とるべき成長戦略を採用せず成長のチャンスを逃すことになりかねません。

 

時々、誤解を与えかねないような書物も見かけるので、成長戦略の描き方の本質に迫ってみたいと思います。

 

アンゾフの成長戦略を持ち出して『既存顧客の深掘が最もリスクが少なく成功しやすい。次に既存顧客に新商品を売り込むのが、最も効果的。営業は難しい、新市場開拓などは非効率的です。多角化なんてもってのほか…不確定要素が多過ぎてリスクが大きすぎる』と、まったくもってナンセンスな論の展開している人が増えてきているのが気になります。

 

もちろん、小売や外食のチェーン店では、そのロジックは正しいかも知れません。メーカーにとっても、既存市場を刺激するような新商品開発は、シェア拡大には有効です。

 

しかし、そのような視点では、視野狭窄になりかねません。

視野狭窄になれば、想定外のリスクに押しつぶされるか、もっと魅力的な成長の機会を失いかねません。

だからこそフレームを外して、自由に成長戦略を描くことが大事なのです。

そもそもビジネスチャンスというのは、型の中から見つけるのではなく、人の動きや市場を観察して見つけ出すものです。

 

実際、主だった投資をしなくても、成長戦略における「新市場開拓」が、時としてドル箱事業に育つことがあります。

既存商品を、まったく別の業界に提案したら、「それこそ私が求めていた商品です」と諸手を上げて歓迎される…。

既存市場では、価格競争に飲み込まれていたけど、まったく別の業界に持って行ったら、競争環境がほとんど働いていない…。

自社にとっては「ドル箱事業」。
お客様にとっても「救世主的存在」。

視野を拡げて考えれば、まだまだそのような市場は眠っています。

たとえば…

飲食店に店員さんを呼び出す電子チャイムを製造・販売しているクライアント企業さんでは、Amazon、トヨタ自動車、日産自動車、オムロン、キューピーなどの名だたる大手企業の工場に既存商品を納入し、とても高い評価を得ています。

 

我が社にとってはアタリマエの価値が、新しい市場では、まったく「新しい価値」として、受け止められているのです。

 

また「多角化戦略」をナンセンスだ…と主張するのは、きっと新しい価値を世に説いて、事業を成功させた経験が無い人の主張なのでしょう。

 

だいたい新商品を持って、新しい市場を開拓するのは、企業の創業オーナーであれば誰でも経験しています。

 

結局、成長戦略を描くこと上で大事なことは、アンゾフの成長戦略のようなフレームで考えるのではなく、ビジネスチャンスを嗅ぎ分ける嗅覚が事業の成否を分けることになるのです。

 

リスクが大きいから辞めた方がいい?

新しい事業の内容を精査するまえに、そんなアドバイスをするのは、アドバイザーが自らの責任を負いたくないための逃げ口実のような気がしてなりません。

 

 

・ 既存事業とのシナジーが発揮できるか?

・ 当社がその事業に取り組むべき必然性はあるのか?

・ 商品レベルで期待価値を裏切らない商品を作り込めるのか?

 

その「問」に対して、YES! という答えがでた事業プランは、懸念していたリスクを跳ね退けて充分に成功するポテンシャルは持っているものなのです。

 

フレームワークは、本来ここから使っていくものです。

持ち得るポテンシャルを最大限に引き出すためのマーケティングプラン、営業実行プランを組み立て、売れる匂いをプンプンさせていくことが、成長戦略を描く正しい道筋なのです。

御社の成長戦略は、売れる匂いがプンプン漂う、ワクワクする事業の「絵」として描かれていますでしょうか?