とことん「本質追求」コラム第606話 粗利を稼ぐ営業に変える3つのポイント

『藤冨さんのYouTubeを見て、痛感しました。AIを導入し、人を減らして生産性を上げるって、大事ですね』

先日「生成AI(人工知能)は、どこまで、営業の戦力になるのか?」(https://youtu.be/kDj3QEAgfIc)を観た読者の方から感想メールを頂きました。

大きな誤解を与えていてしまったようです。
私は、今いる人員を削減して、労働生産性を向上させよう!ということを推奨しているわけではありません。もちろん、AIがある職種の労働力を置換していく可能性は否めません。

しかし、藤冨が推奨しているのは、AIにできる仕事はAIに補完させ、人間はやるべき仕事に集中して生産性を上げることが大事である…
そう伝えたいが故にAIの活用研究に取り組んでいます。

労働生産性は、ご存知の通り「労働力÷付加価値」で計算されます。

上述の感想メールを頂いた方のように、生産性向上というと、人を減らすアプローチをイメージしがちですが…そのアプローチでは、成長エンジンに火を灯すことはできません。

理由は、単純です。

人を減らすことが「仕事」ではないからです。

本来の仕事とは、顧客が喜んでお金を払ってくれる商品を作り、販売し、それによって利益を得る活動です。

同じ会社で働く人たちが、どうやったらお客様が喜ぶだろうか、それによって利益はいくら獲得できるだろうか…を考える時間が多くなればなるほど、会社は成長していきます。

利益思考の時間×社員数=企業成長力

という見方もできるわけです。

藤冨が、生成AIを労働力として活用する研究をしているのは、この利益思考の時間を増やすことに他なりません。

自社で働く人たちを、利益思考にできるか、それともコスト思考にしてしまうか…
それは、社長を始めとした経営陣の責任です。

特に前線で会社の収益性を左右させる営業部門が、利益思考に集中することは、とても大切です。
付加価値(≒粗利益)に直結するからです。

そのためには、

・営業マン一人一人が、粗利益という概念を真に理解すること
・営業部門が、高付加価値型商品のネタを組織にフィードバックすること
・安易な値引きを厳禁とすること



この3つのポイントを抑えることが大切です。

具体的に見ていきましょう。

1.営業マン一人一人が、粗利益という概念を真に理解すること

粗利益が、売上-原価の引き算の結果であることは、誰でも知っています。
しかし、粗利益を増やすために、日々の仕事として、何をすれば良いのか?

具体的な行動に落とし込める営業マンは、極めて少数派です。
藤冨も20代の前半までは「利益なんて、社長の飲み代になるだけだろ…」と本気で思っていました。
このような状態では、利益をあげよう!なんて、モチベーションは、芽生えません。
 
ところが、粗利益は、給与を始めとした事業活動費の源泉であることを知ってから意識が変わりました。

・給与を上げたい!(自分だけでなく、仲間も!)
・接待交際費を会社に請求したい!(20代の頃は全部自腹でした、笑)
・展示会のブースを競合より大きくカッコよくしたい!

当時勤めていた会社の社長から、利益の源泉が豊かになれば、営業活動はもっと楽しくなることを教えてもらってから粗利重視の営業活動に変わりました。

キーエンスのように、四半期ごとに確定された粗利が、ボーナスの源泉となれば、張り合いが出るのは、至極当然のことです。

もちろん、給与だけをモチベーションの源泉として位置付けるのは、間違っています。
給与は、不満を生じさせる要因(衛生要因)になるだけで、一定以上給与を払っても、効果は限定的であることが、経済学などの研究で明らかになっています。

自分の給与を増やす…という視野狭窄的な捉え方ではなく、もっと全体的な捉え方をすることが大事です。

粗利益が、今の競争力の源泉であることを理解し、かつ営業利益が、未来の競争力や成長力の源泉であることを腹落ちすることができれば、自然とやる気は芽生えてきます。

粗利益は、今の活動を支え、営業利益は、未来の活動を作り出す。

この企業経営の根幹となるロジックを、脊髄まで浸透させることが、高収益企業を維持するための出発点となると、藤冨は確信しています。

2.営業部門が、高付加価値型商品のネタを組織にフィードバックすること

そもそも、高付加価値型の商品をどのように生み出すのか…
この理解が組織内で共通認識となっていないと、持続的に高付加価値の商品を生み出すことはできません。

いうまでもなく、高付加価値型商品とは、高い粗利益を生み出す商品です。
と、同時に、顧客にも価値を与えるWin-Winの商品です。

つまり、どのように顧客にとっての価値を提供するのか。

この価値を生み出すプロセスを、営業マンだけでなく、企画部門も生産部門も全員が、腹落ちしている必要があります。

市場における価値は、相対的なものです。
平たくいうと、競争環境の中にあって、選ばれる価値ということです。

競争相手が気づいていない「お客様にとっての価値」をいかに見つけ出すか…。
この視点が高付加価値型商品の出発点となります。

そのためには、顕在化されたニーズではなく、潜在的ニーズを組織的に見つけ出す必要があります。
セミナーで必ずお伝えしている内容です。

営業部門の存在がカギを握ります。
顧客との接点だからです。
営業部門の観察が、高付加価値のネタとなる潜在ニーズを見つけ出すのです。

最後に…

3.安易な値引きを厳禁にすること

値引きは、言わずもがな「粗利益」を減少させる行為に他なりません。
ただ、値引きは、営業マンの責任だけではありません。

大事なことなので、前置きをしておきます。

値引きをしなくても、堂々と価値提案できるロジックが「売価設定」に織り込まれている必要があるのです。

日本における経営の神様である「故稲盛和夫氏」が、値決めは経営である!と喝破した通り、値決めは利益を生み出す最重要視点です。

その上で…

営業マンが、どうしても値引きをしなければ受注を獲得できない場合の対処法を事前に決定しておくことが大事です。

この事前決定以外は、値引き禁止令を出すことで、営業マンは、「価値を提供すること」「価値を伝えること」に意識が集中するようになります。

では、値引きの事前決定を具体的にどう決めるか…。
有効は方法は、「広告塔」になってもらうことを交渉材料とすることです。

広告塔が存在することで、商談効率は向上します。
普及の原則のおける「可視性(他の人に利用されている度合いを見える化すると、安心して購入しやすくなる心理作用)」を営業部門に補給できるからです。

値引きの代償として、営業の効率性を高めることができれば、値引きは合理性を伴います。

以上、3つのポイントを抑えることで、持続的な生産性向上(=付加価値を高める)が望めるようになります。

そのための、AI活用は、組織の持続的成長にとって、有効に働いてくれます。

御社の生産性向上の定義は、コスト抑制思考ですか?それとも付加価値向上思考ですか?