「経営計画書を作っても絵に描いた餅で終わることが多くて…経営計画書って、作る意味あるんですかね?」
コラムの読者さんから、質問メールが届きました。
時折、ご丁寧な感想メールを送って頂ける方なので、回答メールに肉付けした形で、上記質問にご回答をさせて頂きたいと思います。
まず、経営計画書を作る意味を問う前に、計画がなぜ達成できないのかを考察する必要があります。
藤冨もサラリーマン時代に、IPO(株式公開)を目指し、高い高い予算を与えられ、頭を抱えていたので、体感を持ってその理由を説明できます。
経営計画が達成できない理由は、主に5つあります。
- 高すぎる目標
- 売上目標だけの提示
- 営業マンのモチベーション低下
- 想定外の壁の出現
- リーダーシップの欠如
です。
それぞれ独立した問題もありますが、多くは全て連動しているケースが大半です。
5つの理由をまとめて、一言で言うなれば「営業戦略の不在」です。
経営計画を支える営業戦略が明確ではないのですから、地図と経路図を持たずに「ある目的地」に行こうとしているようなもの。
遠回りして辿り着ければ、まだマシですが、多くは路頭に迷うことになります。
5つの理由をそれぞれ解説しながら、経営計画の解像度を高めるための営業戦略の重要性を共有したいと思います。
1つ目の高すぎる目標は、社員の思考停止を招きます。
会社として達成したい数字があるのは、理解できます。
しかし、なぜその数字が必要なのか?
また、どうやって努力すれば、目標が達成できるのか?
この2つの道筋を提示しなければ、社員は思考停止に陥りやすくなってしまいます。
「企業は研究開発しないと停滞する。すると皆な給与の原資となる粗利が確保できなくなる。これだけの研究開発費が必要だから、みんなで頑張ろう!」などと、売上目標を達成する「意味」を共有する必要があります。
そして、意味を理解した上で、どうやったら達成できるのか? の戦略を提示することが大事です。
2つ目の売上目標だけの提示に絡んでくる課題です。
営業部門に「今年度は、これだけの数字を達成してほしい」と提示しても、できる人とできない人が存在します。
今年度、120%増を達成するには、+α10億が必要…。
10億を達成するには、客単価はいくらで、何件受注すれば良いのか?
それを実現するには、どれだけの見込客を集めなくてはならいのか?
コストを抑え、どうやって見込客を集めるか…
などなど、戦略・戦術共に、解像度を高めていかないと、現場は具体的な努力目標に落とし込めません。
数字だけ現場に指示して、あとは宜しく!
では、達成できる目標でも、達成できないのです。
その結果、どういった問題が起きるか…
これが、3つ目の営業マンのモチベーションの低下につながるのです。
具体的にイメージできるよう、歴史から学んでみましょう。
最強の武将だった織田信長は、楽市楽座によって、税収を確保し、その原資を元に「兵農分離」を行いました。
武士を専門戦闘員として訓練し、さらに最先端の武器を与え、その活用法まで編み出しました。
教科書で習った、火縄銃の弱点を克服する三段撃ちを編み出したのです。
「この訓練を積んでおけば、私たちは勝てる!」という状態と、普段は農民として働き、戦争が起きたら「おい、刀を持って戦ってこい」と命令されるのとでは、モチベーションの差が歴然と現れるのは、想像に難くありません。
モチベーションを高めるには、勝てる環境を作り上げることが大事なのです。
しかし、全てが訓練通り、想定通りに物事が進むとは限りません。
4つ目の課題「想定外の壁の出現」は、いつ何時、目の前に現れるか分からないのです。
・SNS広告で見込客を集めようと思ったが、CPA(顧客獲得単価)が高すぎて続けられない。
・テレアポでリーチしようとしたが、営業窓口さえも聞けないケースが多い
・売れると思ったのに、なかなか売れず商談効率が悪い
などなど、想定していた営業戦略がうまく機能しないなど、「壁」が立ちはだかることは、当たり前のように発生します。
その都度、迅速に解決策を見出し、新たなプランBを実行すべきですが…
このプランBが企てられずに足踏みしてしまう現場を幾度となく見てきました。
ネガティブなことを報告すると叱れれるから、言わないでおこう…という社風は、最悪。
ファクト(事実)を冷静かつ論理的に受け止める度量を経営陣が持っていないと、現状認識ができず、対策が後手に回ります。
結果、目標が達成できないばかりか、ジリジリと業績が停滞していくのです。
このような状況に陥らないために、5つ目の課題である「適切なリーダーシップの発揮」が必要となります。
上述の通り、リーダーシップの欠如は、現場の思考停止をもたらします。
今、何が起きているのか?
今、何をすべきか?
迅速かつ的確に判断し、対策案を企てる「リーダーシップ」が適切に働くと、強力な目標達成力が備わります。
キーエンスは、専属営業マネージャーが存在し、部下の商談を全て掌握。
こんな状況なら、こう提案すべき。
こんな状況なら、営業窓口を変えるべき。
などなど、商談単位でリーダーシップを働かせる「仕組み」が存在します。
そこまで徹底しないにせよ、刻一刻と変わる状況に対し、適切な状況判断と対応力を発揮できるリーダーシップの存在は、必要不可欠です。
目標達成力とは、一言で言うなれば「現場の具体的な努力目標」をクリアにすることに他なりません。
つまり、経営計画の解像度を高めるためには、営業戦略・戦術を詳細にまで設計することが大事なのです。
御社は、経営計画を達成するための、具体的な営業戦略・戦術を組織内で共有していますか?