「次回のセミナーでは、高い賃上げと成長率を両立させる好循環経営についてお話しされるようですが、具体的にはどのような内容になりますか?」
以前セミナーにご参加頂いた社長さんから、今回のセミナー内容について質問を受けました。
タイトルが変わったので、異なる内容と思われたようです。
誤解を与えてしまったようですが、部門横断チームの育成法についての枕言葉になるだけなので、3月、6月に開催したセミナーと内容は同じになります。
ただ、枕言葉を変えた理由は皆様にも知って頂きたいと思い、今回のコラムのテーマと致しました。
部門横断チームを育成する意義は、まさに高い賃上げと成長率を両立させる好循環経営を目指すものだからです。
賃上げと成長率を両立させるには、「付加価値(粗利)の高い商品を作り続ける仕組み」が必須となります。
その際のKPIとなる指標は、2つ。
一つ目が、売上総利益率(粗利益率)
二つ目は、新商品売上高比率です。
賃上げの原資は、言うまでもなく「売上総利益」です。
売上総利益は、売上から原材料費を引いた「粗利益」であり、人件費や家賃、広告費などの販売費・一般管理費の支払い原資となっています。
この確固たる現実を置き去りにして、いま世の中には「賃上げムード」が高まっています。
政府やマスコミがさかんに、賃上げをしろという空気を作り出しているからです。
コロナをきっかけにして、企業にも家庭にもじゃぶじゃぶお金を送り続けた結果、現在のインフレが起きているのは明らかです。
インフレが激しくなれば、生活費が圧迫されるので、給与をあげろという論調ですが、なぜ政府の意思決定の甘さを企業が賃上げでカバーしなければならないのか?
明らかに政府の責任転嫁のように見えますが…
どうやら、この政府の戦略(?)は、バッチリとハマったようです。
ことあるごとに経営者にヒアリングをしていますが「従業員から賃上げを要求されることが多くなった」と聞いているからです。
しかし、このムードに安易に乗るのは危険だと感じています。
社員として働く方も同様です。
会社の財務や成長性が損なわれれば、自分たちの給与の原資も損なわれるからです。
賃上げの前に社内で議論すべきは、どうやって付加価値(粗利益)を高めるかという施策でなければなりません。
さらに言うなれば、商品には寿命があります。
寿命が来なくても、新商品が売れ始めると競争相手が出現してきます。
結果、価格競争になり、粗利益が減っていきます。
この構造に着眼すれば、新商品を生み出し続ける経営努力も同時に必要であることがわかってきます。
この経営努力を数値化したものが、新商品売上高比率です。
新商品売上比率とは、過去数年間に発売した新商品の売上高が全売上高に占める割合を示す数値です。
一般的には、過去3年以内に、30%を目標とせよ!などと言われていますが、競争環境や業界によっても異なるので、一概に言うことはできません。
また、実務的に考えると、新商品だけでなく、既存商品の改良も含めるべきだと考えます。 なぜなら、既存商品の改良によって競争力が向上し、高い粗利益を獲得できるためです。
この経営努力の結果、持続的な賃金の原資が生み出され、社員も会社に明るい未来を感じることができます。
粗利向上のご褒美として給与も上がり、明るい未来を見れば、優秀な社員も定着します。
優秀な社員が定着すれば、生産性も向上するので、営業利益も増加します。
と同時に、研究開発や設備投資の原資ができ、さらなる企業競争力が生まれ、成長を促してくれます。
これが好循環経営につながるロジックです。
ドラッカーが、利益とは未来の費用であり、事業を続けるための費用だ!と提言した通りです。
5ヶ月前に発表されたキーエンスの有価証券報告書を分析しても、この好循環経営がうまく回っていることが証明されています。
第56期の決算書によると、キーエンスの売上総利益率は82.96%でした。 昨年は81.82%でしたので、1.14%増加しています。
製造業の平均は22.3%ですから、3倍以上の収益力です。
その圧倒的な収益力により、平均年収2067万円という高給が支払われています。 製造業の平均年収374万円の5.5倍以上ですから、大盤振る舞いのように見えます。
しかし、実態は異なります。 労働分配率、つまり売上総利益から人件費にどれだけ分配したかを示す指標をみると、製造業の平均値よりもはるかに低い分配金額です。
だから、高い営業利益率を確保できているのです。
この高い営業利益も、従業員が納得できるような非常に合理的な使われ方がされています。
高い営業利益は、
✔︎将来の売上を生み出す研究開発体制
✔︎全世界、全商品当日出荷体制
に投資されています。
現場の声から生み出された競争力の高い高付加価値商品があるからこそ、自分たちの営業がやりやすくなっていることを認識しています。
さらに、即納品体制は営業マンにとって強力な援護射撃になります。
材料や機材が不足している顧客に即納できれば、感謝されるからです。
営業マンは、粗利80%を維持することが自分たちの高額な給与(年4回の成果配分)に繋がっていることを強く認識しています。
そして、高い営業利益率が次なる高付加価値商品の研究開発や全商品即納体制に繋がり、それが自分たちの「営業のやりやすさ」に繋がっていることも同じように強く認識しています。
会社と全従業員がWin-Winの関係にあることを周知徹底しているのです。
・高い売上総利益率(給与の源泉)
・高水準の新商品売上比率(成長力の源泉)
これら2つの指標が、優秀な社員を定着させ、次なる未来をつくる研究開発体制や設備投資、また営業支援体制の源泉となっているのです。
あなたも、高い売上総利益を生み出す仕組みや新商品売上比率を高める仕組みを学んでみませんか?
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