
明けまして、おめでとうございます。
2026年も、とことん本質追求コラムを通じて、表層的なノウハウや流行に流されることなく、「なぜそれが起きているのか」「本当に向き合うべき課題は何か」を丁寧に掘り下げていきたいと考えています。
市場環境や技術は加速度的に変化していますが、現場で起きている課題の多くは、旧来の慣行が、新しい環境に適合しなくなっていることに起因しています。
かつては、経験や勘によって、多少の曖昧さを抱えたままでも仕事が回っていました。
しかし今の時代は、デジタルやAIの普及によって、顧客の選択肢は、劇的に変わりつつあります。
言い換えれば、需要の質がシビアに変化し続けるので、供給は、顧客の現状を的確に捉え、スピーディーに顧客にマッチした商品・技術・サービスを企画開発する必要性が高まっています。
本日のコラムは、迅速かつ的確に、そして成果を上げることにフォーカスした『体制のあり方』について、書き綴っていきたいと思います。
正月休みに、甥っ子と彼の友人A君と会食する機会がありました。
A君は、3年前に旧帝国大学を卒業し、売上高数兆円規模の大企業に就職したエリートです。
今年は人事異動があるらしいのですが、希望に沿わなければ退職も視野に入れているとのことでした。
話を聞くと、A君は「商品企画」に携わりたいと言います。
「おっ、マーケティング部門に行きたいんだね!」と尋ねると、「いえ、違います。商品部です」と答えが返ってきました。
違和感があったので、さらに尋ねました。
「“マーケティング部門”のなかに“商品部”があるのですか?」と。
すると彼は、こう説明してくれました。
「当社では、商品部が商品企画を担当し、マーケティング部門は、その商品を“どの市場に、どのように売っていくか”を決めています。それぞれ独立した部署で、担当役員も別々に置かれています」
ん?
それは、マーケティングというよりも、販売戦略ではないだろうか。
そう問い返すと、A君は一瞬ハッとした表情を浮かべ、少し考え込んだあと、こう口にしました。
「確かに…。よく考えてみると、“マーケティング”という言葉は、社内で共通の理解や判断基準がないまま使われている気がします。」と。
この光景は、決して珍しいものではありません。
「マーケティング」という言葉だけが独り歩きし、役割や責任範囲が曖昧なまま組織が組み立てられているケースは、意外にも多いのが実情です。
役割と責任が曖昧な部門が存在すると、意思決定の過程に必ずノイズが入り込みます。
誰が何を決めるのかが不明確なままでは、判断は遅れ、議論は発散し、結果として精度もスピードも低下していきます。これこそが、現場の足を引っ張る大きな要因です。
本来、ビジネスの成果を最大化するためには、戦略の精度と、競合を寄せ付けないスピード感の両立が欠かせません。
これは、立場や職種を問わず、多くのビジネスパーソンが共有している認識のはずです。
企業が成果に真摯に向き合うのであれば、組織と意思決定のあり方は非常に大切です。
本来、マーケティングの役割は、「価値をつくること」と「その価値を伝えること」の両方にあります。
しかし実務の現場では、「価値をつくること」は商品企画部門が担い、「価値を伝えること」は販促や営業部門が担う―このように機能ごとに分断されているケースが一般的です。
役割を表面的に切り分けてしまうと、マーケティング部門は、どの領域にどこまで関与すべきなのかが曖昧になります。
次にマーケティングの責任について、考察してみたいと思います。
マーケティングの責任は、企業と顧客を結びつけることにとどまらず、競争環境のなかで優位性を維持・強化していくことにあります。
平たく言えば、利益率が高く、市場規模が大きく、なおかつ売りやすい商材に、限られたリソースをどう配分するか――言い換えれば、最小限の投入で最大の収益を生み出す構造を設計することこそが、マーケティング部門に求められる責任範囲です。
この判断基準を自社なりに明確に定義できれば、マーケティング、企画、営業それぞれの責任と役割も、自然と整理されていきます。
たとえば、
商品部は「その企画が、狙うべき顧客と本当にマッチしているのか」を判断する基準を持つ。
販促部は「需要を喚起するために、どの媒体・手段を選ぶべきか」という選定基準を明確にする。
営業部は「商談をどのように管理し、受注確度を高めていくか」というマネジメントの仕組みを担う。
そしてマーケティング部は、これら各部門の判断軸がブレていないかを監修し、全体最適の視点から統合していく役割を担う、という形になります。
実際、ここ2〜3年ほど前から、先進的な大企業のなかでは、取締役会の直下にマーケティング部門を配置し、商品企画・販促・営業といった各機能を横断的に統括する組織図へと再設計する動きが見られるようになってきています。
断続的かつ激しく変化する市場環境に対応するため、組織全体を最適化する必要性が高まっているからにほかなりません。
2026年、御社でも「成果を上げること」を本気で見据えた組織体制、そして意思決定基準の明確化を、真摯に検討してみませんか?
