とことん「本質追求」コラム第129話 売れる「買い手言葉」と売れない「売り手言葉」

「こちらの商品の方が売れてますでしょ?」

先日、あるカフェに入ったときに、レジ横で売っていた商品に思わず目を奪われてしまいました。

まったく同じ商品なのに、2種類のパッケージが陳列されていたのです。

一つは「濃縮コーヒー」という商品名に、サブコピーとして小さく「カフェオレの素」と書かれていました。

もう一つは、「カフェオレの素」という商品名に、サブコピーとして小さく「濃縮コーヒー」と書かれていたのです。

 

どちらが売れるでしょうか?
とでも言いたげな挑戦に見え、むくむくと妄想癖が頭をもたげ始めたのです。

これは間違いなく「カフェオレの素」の方を手に取るだろう…と想像を膨らませながら、店員さんを掴まえて、聞いてみました。
「こっち商品の方を手に取る人の方が多くないですか?」と。

すると、想定とおり「カフェオレの素」の方が売れていると教えてくれたのです。
どういう意図で2種のパッケージをつくったのかは、店員さんには分からなかったのですが……

テストをしているのか、または「濃縮コーヒー」が思うように売れずに悩んでいたときに、「カフェオレの素」に変えてみよう!と思い立ったかのいずれかだと思われます。

 

これは、シンプルな「購買心理」ですが、ものすごく分かりやすい事例なので、今日のコラムのテーマにしました。
なぜ「濃縮コーヒー」が目立つパッケージよりも「カフェオレの素」が売れるのでしょうか?

 

これは一言で言うと、濃縮コーヒーは「売り手目線の言葉」であり、カフェオレの素は「買い手目線の言葉」であるためです。

利用場面がすぐにイメージでき、“私にとっての効用”が瞬間的に理解できるメッセージなので、買い手の心にダイレクトに響いているのです。

 

実際に、このパッケージをみた時に私も「コレは便利だ!」と思いました。

まだ私が新婚当初だったころの出来事ですが、インスタントコーヒーを極小量のお湯で溶き、牛乳をたっぷり入れて妻にカフェオレを作ったことがありました。

すると「コレすごく美味しい!」と感動し、以来17年間このつくり方にハマっていて今でも毎朝このカフェオレを飲んでいます。

この生活習慣を間近で見ているので、この「カフェオレの素を妻に買って行ったら喜ぶだろうなー」と、瞬間的にイメージが出来たので「買ってかえろうか」と思えたのです。(仕事中のため荷物になるので買いませんでしたが…)
忙しい朝は出来るだけ手間を省きたいものです。
カフェオレの素があれば、コップに注ぎ牛乳を入れるだけです。それに、パッケージがお洒落だったので、インスタントコーヒーをお湯で溶く作業よりも、カッコいいではないですか。
これなら来客時も出せますし。

と、様々な「効用」が目に浮かぶのが「カフェオレの素」という言葉なのです。
それに対して「濃縮コーヒー」は、どんな利用場面で、どのような飲み方をすれば良いのかイメージしにくい…。

たしかに「カフェオレの素」と小さく書かれてはいるのですが、濃縮コーヒーという言葉のインパクトから様々な想起が始まっているので、「効用」を理解するまでに時間が掛かってしまいます。


時間が掛かれば、自然と「購買決定率」は下がります。
他の雑念が入り込み、購買心理プロセスが中断されてしまうためです。

 

私が20代前半に勤めていた新商品開発専門のマーケティング・コンサルティング会社では、「ターゲットの明確化」と「ターゲットにとっての効用」そして「利用場面のクリア化」の3つは、商品コンセプトを創造する上で欠かせないことだと教えていました。
3年間お世話になり、全回セミナーの運営スタッフとして受講できたので、計算上では432時間このロジックが頭に叩き込まれました。
さらに、理論を実践の場に移すプロジェクト…日立製作所や明星食品、中外製薬など色々な業界の新商品開発プロジェクト会議に参加させてもらったので、商品を見ただけでいろんな想像を張り巡らせるのが、習慣になっていますが…

 売れている商品は、やはり「ターゲット」「効用」「利用場面」がクリアになっていて、それが魅力的にコミュニケートされています。

その後、私はITベンチャーに転職し、泥臭い営業マンを経験しますが、営業の世界も一緒でした。
売れる営業マンは、「あなたにとっての効用をイメージさせ、様々な利用シーンなどを想起させる」コミュニケーション力に長けています。
 平たく言うと、言葉のすべてが「買い手目線」になっているのです。
逆に売れない営業マンは、効用ではなく商品そのものを売り込もうとしています。
 平たく言うと、言葉の全てが「売り手目線」になっているのです。

これは何も、営業マンだけではありません。
冒頭の商品のネーミングのケースもしかり…ですし、ホームページも、カタログも、チラシも……見込客の接点となる全ての媒体が「効用」を起点とした「買い手目線」になっていることが大切です。

御社は、見込客接点のすべてを「買い手目線」で整え、魅力的なメッセージを市場に発進していますでしょうか?

 

追伸

新商品開発のプロセスを体系的に習得したい方は、私が勤めていた会社のセミナーにご参加させることをオススメします。
国内の一部上場企業を中心に、日本を代表するメーカーのマーケッターの方がこぞって参加しています。1年に4回開催しているので、もう30年以上続いている定番セミナーです。

▼日本オリエンテーション主催第130回商品開発プログラムのたて方【36時間コース】▼
http://www.jorien.com/service/seminar/
▼参加企業一覧▼
http://www.jorien.com/service/seminar/36hrsprogram/list.html